「エフフォ〜リアァ〜!」フジテレビ実況・青嶋達也アナウンサーはなぜ絶叫する?

2021年05月31日(月) 18:01

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▲フジテレビの競馬実況を担当する青嶋達也アナウンサー

フジテレビ系『みんなのKEIBA』で、実況を担当する青嶋達也アナウンサーに直撃取材! エキサイティングな描写に加え、その表現はまさに“絶叫”。ネットやSNSでも話題沸騰の存在です。

一方、“アナログ人間”を自称するご本人は、その反響ぶりを把握していないようで…? ベテランながら活力あふれる現在のスタイルに行き着いた経緯と、実況に臨むにあたってのスタンスに迫りました。

(取材=中山靖大)

――普段ネットはあまりご覧にならないと聞いたのですが、皐月賞の実況が話題になっているのは…。

青嶋 申し訳ありません。いま知りました(汗)。

――以前から、青嶋アナウンサーの熱く、スピード感のある実況は話題になることが多かったのですが、今回の「エフフォーリア」という声が、ファンの皆さんの心に強く残ったのか、掲示板に何度も青嶋さんの名前が登場しました。

青嶋 掲示板と聞くと、まず電光掲示板を思い出してしまうアナログ人間なのですが、ここに出てくる掲示板はネットの掲示板なのですね。話題にしていただくのは嬉しいですが、なんだか面映ゆいですね。

――競馬実況は私たち競馬ファンにとっては必要不可欠なものだと思います。

青嶋 どんなスポーツでもそうなのですが、主役は絶対に選手であり、競馬だと馬です。そこに騎手であったり、調教師や厩舎であったり、牧場であったり、そしてやっぱりファンの存在も必須。私の実況はおまけのおまけだと思っています。

――ちなみに今回、取材するにあたって「エフフォーリア」と私も口に出してみたのですが、叫びたくなるような気持ちよさを、なんとなく感じてしまいました(笑)。

青嶋 それは馬主さんも嬉しいのではないでしょうか。たしかに声に出しやすい名前だったというのも、あるかも知れませんね。あのレースは横山武史騎手が内で脚を溜めて、一気に後続を突き放した、見るも鮮やかな素晴らしいレースでした。でも、私は毎回叫んでいるわけではないのですよ。叫べない展開も競馬にはありますから。

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▲青嶋アナ「毎回叫んでいるわけではないのですよ。叫べない展開も競馬にはありますから」

――今も競馬場では入場者を大きく規制して開催されているわけですが、コロナ禍の競馬実況というのは普段とは大きく違うものでしょうか?

青嶋 すべての面でやり辛いわけではありませんが、気持ちを作るのは大変ですね。ファンの歓声にのせてもらったり教えていただいたりという部分も大きいので。

――例えば、人気馬が道中を捲り気味に上がっていくとか…

青嶋 そうですね。その歓声によって、“何かが起きた”と気が付いて視野を広げる事もあります。コントレイルが勝った昨年の皐月賞は完全に無観客で開催されていまして、今年以上に静かな環境でクラシックが行われました。そのときも実況を担当したのですが、サリオスと競った(半馬身差)ゴール前。私も高めて歌い上げたのですが、場内は無音ですから、私の声がスタンドかどこかの壁にでも当たってフジテレビの収音マイクに跳ね返ってきたんです。初めての経験で、一瞬戸惑ってしまいました。

――青嶋さんは競馬実況を目指されたキッカケのようなものはあったのでしょうか?

青嶋 もう30年以上も前の話にはなるのですが(笑)。私は最初ラジオ局も目指していて、アナウンサーになりたいという気持ちは当然ながら学生時代からありました。当時は東京競馬場で自主練というか、スタンドの隅でブツブツ実況をしていたこともありました。私からすると、あの広大な芝生の上を疾走する美しいサラブレッドを見ると、皆さんも実況してみたくなりません? と思うのですけれど(笑)。でも、取り立てて「競馬実況に」というこだわりはありませんでした。

――88年に入社されましたが、フジテレビの男性アナウンサーは皆さん競馬実況に挑戦されるのですか?

青嶋 いえいえ、そんなことはありません。あくまで希望に沿ってですね。私の中では何か手に職を付けたいという思いがありまして、せっかく縁あってフジテレビに入社できたのだから、競馬実況をやりたいと手を挙げました。ただ、3年先輩の三宅正治、1年先輩の塩原恒夫、と近い年次で競馬実況を担当するアナウンサーがいたので、ダメもとで手を挙げた記憶があります。

――そして青嶋アナウンサーの実況といえば、そのスピード感だと思います。ネットでも短距離戦といえば青嶋さんと書かれることが多いです。

青嶋 実際は、スプリントGIの実況は最近担当していないのですよ。私もあまり意識はしていないのですが、かつては年次の近い先輩アナウンサーが多かったので、たまたま私にスプリント戦の実況が回ってきていたのかも知れません。

――短時間で、状況を言葉にして表現するのは、最初に目指されたように手に職、特殊な技術だと感じます。

青嶋 隊列を追って、ゴールまでそれなりの形で話すのは1年もあればできます。ですが、問題はそこからの肉付けですよね。蓄積だったり経験だったり…家に帰ってレースを見直した時に、自分の実況に納得できたことは今まで一度もありません。

――そして今週は安田記念が東京競馬場で行われます。私の中で『青嶋アナウンサー×安田記念』というとウオッカのレースが思い出されます。

青嶋 あの時は“よくしゃべっていたな”と思います。上手くできたということではないのですが、全体が見えていたレースだとは思います。

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▲ウオッカが勝利した09年安田記念は青嶋アナの代表的な実況レース(撮影:下野雄規)

――直線半ばでも馬群の中に揉まれていたウオッカ。「ウオッカ大丈夫か」が「ウオッカ苦しい」に変わった直後、「来た!来た!来た!」「ウオッカ迫る」「ウオッカ勝った」ですから、競馬ファンはこの言葉を追うだけでも、当時の状況が映像として浮かぶと思います。

青嶋 あの時代を象徴する牝馬ですから、彼女が馬群に揉まれた時には皆さんも「どうした?」と思う瞬間はあったと思います。1番人気馬ばかりにフォーカスを当てすぎないよう心がけてはいるのですが、あのときは自然とウオッカという女王に吸い寄せられましたね。ただ「ウオッカ勝った」は改めて聞くと微妙ですね。もうちょっと何か言えたでしょう(笑)。

――でもファンも、あの状況から勝った驚きと、主役がしっかり勝ってくれた安心感が混じっていましたので、シンプルに「ウオッカ勝った!」という気持ちだったと思います。ネットに書き込むときは、「ウオッカ勝ったぁぁぁ」ですし、それが今回は、「エフフォーリアァァァァ」に。

青嶋 絶対にイジっているでしょ(笑)。フジテレビの競馬中継は、番組タイトルが『みんなのKEIBA』ですので、初めての方が見ても楽しめることが大事ですし、実況者としてもより幅広い視聴者に共感していただけるようにという気持ちでやっています。何度も言いますが、あくまで競馬実況は“おまけのおまけ”。それでも、いろんな視点から見ていただくのは有難いことですので、今後もお手柔らかにイジってください(笑)。

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