早くも注目の高知優駿

2021年06月01日(火) 18:00

賞金アップでさらにレベルの高い争いに期待

 今年は5月25日の石川ダービー(金沢)から始まった地方競馬の『ダービーシリーズ』。その石川ダービーを勝ったアイバンホー、そして30日に行われた九州ダービー栄城賞(佐賀)を勝ったトゥルスウィー、ともにそれぞれの競馬場で二冠制覇となった。

 石川ダービーは今年で第5回で、一冠目の北日本新聞杯からの二冠制覇は初めて。佐賀ではさまざまに三冠が変遷してきたが、“九州三冠”として連携していた荒尾競馬廃止(2011年)後、佐賀単独の三冠となって以降では、2012年エスワンプリンス、19年スーパージンガが三冠馬となっており、トゥルスウィーはそれらに続く二冠制覇となった(なお佐賀三冠の一冠目は、17年までが飛燕賞、18年以降は佐賀皐月賞)。

 そして金沢のアイバンホー、佐賀のトゥルスウィー、ともに次走の目標として6月20日の高知優駿(高知)を挙げたように、近年、高知優駿の注目度が高まっている。

 高知競馬では売上が落ち込んだ時期には、高知優駿の1着賞金が27万円で行われていたことがあった(07〜12年)。しかし売上の回復とともにその賞金も徐々に上昇し、16年には100万円、そして地方全国交流となった17年には一気に500万円となった。さらに昨年は700万円、そして今年はついに1000万円となる。

 高知優駿が全国から注目されるようになった要因としては、賞金が上がったことに加え、6月後半という実施時期にもある。

 地方競馬では、06年から『ダービーウイーク』として各地の“ダービー”を5月下旬から6月上旬のおおむね1週間に集中して実施するようになった。しかし高知優駿はダービーウイークには組み入れられず(賞金的に加われない事情もあった)、おおむね6月後半に行われてきた。

 その後、ダービーウイークは17年から『ダービーシリーズ』としてリニューアル。実施時期が4週間近くに拡大され、前述のとおり1着賞金を500万円とした高知優駿もダービーシリーズに加わることになった。賞金アップに加えて全国交流になったことで、17年の高知優駿には笠松、愛知、佐賀から計4頭の遠征があった。

 18年には南関東の大井からも遠征があり、そのほか金沢、佐賀など計4頭が遠征。佐賀のスーパージェットが制し、地元の九州ダービー栄城賞と“ダービー・ダブル”を達成。2着にも大井のコスモバレットが入った。

 19年には兵庫、佐賀から各2頭ずつ計4頭が遠征。昨年は大井、兵庫、佐賀から3頭の遠征があった。

 高知優駿ですごいと思うのは、全国交流になった17年以降の4回で、他地区からそれなりの実績馬が遠征してきているにもかかわらず、遠征馬の勝利を18年の一度しか許していないということ。高知競馬は賞金の上昇とともに、それだけ3歳馬のレベルもアップしている。

 一方で、高知がダービーウイークに加わっていない時代の14年には、高知のオールラウンドが佐賀の九州ダービー栄城賞を制したこともあった。また佐賀三冠目のロータスクラウン賞では、14年にクロスオーバー、20年マイネルヘルツアスと、やはり高知所属馬が勝利している。

 1着賞金が1000万円となった高知優駿は、これまで以上に他地区からの出走希望が増えそうで、他地区出走枠の4頭はかなり狭き門となりそう。賞金アップとともに、さらにレベルの高い争いが期待できそうだ。

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斎藤修

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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