【安田記念予想】NHKマイルとヴィクトリアM、安田記念の比較から見えてくる事実と、それを逆手に取る論法/岡村信将

2021年06月04日(金) 18:00

史上初のNHKマイルと安田記念の連勝が期待されるシュネルマイスター(c)netkeiba.com

 NHKマイルカップからヴィクトリアマイルを経て、安田記念へと続く東京芝マイルのGI・3連戦。今年はNHKマイルの勝ち馬シュネルマイスターとヴィクトリアマイル勝ち馬グランアレグリアが安田記念への参戦を表明しているのですが、その両レースの勝ち馬がそろって出走するのは安田記念史上初めてのことになります。

 過去にNHKマイルと安田記念を連勝した馬はおらず、ヴィクトリアマイルと安田記念を連勝した馬も2009年のウオッカ1頭だけ。同じ東京芝1600mのGIではあるのですが、これらのレースの連勝は見た目ほど簡単ではないのかも知れません。そこでこれら3レースの過去の流れ、タイムを一覧にして比較してみましょう。

■NHKマイルカップ
2003年 ウインクリューガー 58秒3-35秒9
2004年 キングカメハメハ  58秒5-34秒0
2005年 ラインクラフト   60秒0-33秒6
2006年 ロジック      58秒2-35秒0
2007年 ピンクカメオ    59秒4-34秒9
2008年 ディープスカイ   60秒3-33秒9
2009年 ジョーカプチーノ  57秒7-34秒7
2010年 ダノンシャンティ  57秒9-33秒5
2011年 グランプリボス   58秒2-34秒0
2012年 カレンブラックヒル 59秒9-34秒6
2013年 マイネルホウオウ  59秒0-33秒7
2014年 ミッキーアイル   58秒4-34秒8
2015年 クラリティスカイ  59秒6-33秒9
2016年 メジャーエンブレム 57秒7-35秒1
2017年 アエロリット    58秒0-34秒3
2018年 ケイアイノーテック 59秒1-33秒7
2019年 アドマイヤマーズ  58秒5-33秒9
2020年 ラウダシオン    58秒1-34秒4
2021年 シュネルマイスター 57秒6-34秒0

■ヴィクトリアマイル
2006年 ダンスインザムード 60秒2-33秒8
2007年 コイウタ      59秒1-33秒4
2008年 エイジアンウインズ 60秒3-33秒4
2009年 ウオッカ      59秒0-33秒4
2010年 ブエナビスタ    58秒9-33秒5
2011年 アパパネ      57秒6-34秒3
2012年 ホエールキャプチャ 58秒6-33秒8
2013年 ヴィルシーナ    58秒4-34秒0
2014年 ヴィルシーナ    58秒0-34秒3
2015年 ストレイトガール  58秒9-33秒0
2016年 ストレイトガール  58秒1-33秒4
2017年 アドマイヤリード  60秒5-33秒4
2018年 ジュールポレール  59秒0-33秒3
2019年 ノームコア     57秒3-33秒2
2020年 アーモンドアイ   57秒7-32秒9
2021年 グランアレグリア  58秒4-32秒6

■安田記念
2003年 アグネスデジタル  58秒4-33秒7
2004年 ツルマルボーイ   58秒6-34秒0
2005年 アサクサデンエン  58秒0-34秒3
2006年 ブリッシュラック  58秒8-33秒8
2007年 ダイワメジャー   57秒9-34秒4
2008年 ウオッカ      58秒7-34秒0
2009年 ウオッカ      57秒8-35秒7
2010年 ショウワモダン   57秒1-34秒6
2011年 リアルインパクト  57秒5-34秒5
2012年 ストロングリターン 57秒5-33秒8
2013年 ロードカナロア   58秒2-33秒3
2014年 ジャスタウェイ   59秒7-37秒1
2015年 モーリス      57秒5-34秒5
2016年 ロゴタイプ     59秒1-33秒9
2017年 サトノアラジン   58秒0-33秒5
2018年 モズアスコット   58秒0-33秒3
2019年 インディチャンプ  58秒0-32秒9
2020年 グランアレグリア  57秒9-33秒7

 それぞれの平均を出してみると下記のようになります。
NHKマイルカップ      58秒6-34秒3
ヴィクトリアマイル     58秒8-33秒5
安田記念          58秒2-34秒2
※安田記念は極端な不良馬場施行の2014年を除くと「58秒1-34秒0」

 NHKマイルカップを基準にすると、ヴィクトリアマイルは極端に上がり(ラスト600m)が速く、安田記念は前半も後半も厳しい流れであることが分かります。年によってタイムの出やすい馬場、出にくい馬場はあると思いますが、こうした比較も平均値とすれば無意味ではないはず。

 ちなみにNHKマイルカップ勝ち馬の平均的な勝ちタイムは、安田記念8〜9着馬のタイムに相当。現時点での3歳馬と古馬には、同斤量ならまず通用しないと言えるだけの差があると言えるでしょう。

 しかし今年のNHKマイルカップ勝ち馬・シュネルマイスターの勝ちタイムは、同レース史上最速にも近い1分31秒6。古馬勢最強と目されるグランアレグリアの前走・ヴィクトリアマイル勝ち時計が1分31秒0で、

シュネルマイスターは斤量が57kg→54kgの3kg減
グランアレグリアは 斤量が55kg→56kgの1kg増

 都合4kgの差となります。それを踏まえてタイム的には0.6秒。競馬には“1kg=0.2秒”という俗説もあり、1分31秒6のNHKマイル勝ち馬は54kgの安田記念なら1分30秒8に相当、持ち時計1位インディチャンプの1分30秒9をも超えてくることになるのです。

 あくまでシュネルマイスターが前走と同様に走れる場合の“机上の計算”であり、“1kg=0.2秒”の俗説を信じるならという前提ではありますが、ウマい馬券では、ここから更に踏み込んで安田記念を解析していきます。印ではなく『着眼点の提案』と『面倒な集計の代行』を職責と掲げる、岡村信将の最終結論にぜひご注目ください。

■プロフィール
岡村信将(おかむらのぶゆき)
 山口県出身、フリーランス競馬ライター。関東サンケイスポーツに1997年から週末予想を連載中。自身も1994年以降ほぼすべての重賞予想をネット上に掲載している。1995年、サンデーサイレンス産駒の活躍を受け、スローペースからの瞬発力という概念を提唱。そこからラップタイムの解析を開始し、『ラップギア』と『瞬発指数』を構築し、発表。2008年、単行本 『タイム理論の新革命・ラップギア』 の発刊に至る。能力と適性の数値化、できるだけ分かりやすい形での表現を現在も模索している。

 1995年以降、ラップタイムの増減に着目。1998年、それを基準とした指数を作成し(瞬発指数)、さらにラップタイムから適性を判断(ラップギア)、過去概念を一蹴する形式の競馬理論に発展した。『ラップギア』は全体時計を一切無視し、誰にも注目されなかった上がり3ハロンの“ラップの増減”のみに注目。▼7や△2などの簡単な記号を用い、すべての馬とコースを「瞬発型」「平坦型」「消耗型」の3タイプに分類することから始まる。瞬発型のコースでは瞬発型の馬が有利であり、平坦型のコースでは平坦型に有利な流れとなりやすい。シンプルかつ有用な馬券術である。

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ウマい予想家

高回収率をたたき出す馬券のプロたちは、どのような視点で重賞レースにアプローチをしているのか。ときに冷静に、ときに大胆に直球勝負で攻める予想家たちの熱き見解は必見。 関連サイト:ウマい馬券

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