2021年06月05日(土) 12:00
きちんと季節は動き、いつも通り次から次へと花は咲いていく。平穏な日ばかりではなくとも、自然の摂理には逆らえない。春のクラシックが終わったら、もう2歳戦が始まるのに似ている。来春をにらんだ戦いがスタートするのだ。競馬のサイクルは、ここから動き出していく。デビューする若駒たちの当面の目標は、一年先のオークスでありダービーだ。早く新馬戦を勝って幸先の良いスタートを切ることで、その後の戦いをリードしたいと、その機をうかがって出走してくる。この時期にデビュー勝ちした馬から、たまにタイトルを取る馬が出てくるので、とにかく注意は怠れない。そうした馬たちが、2戦目、3戦目と走るうち、少しずつその馬の将来像を描いていき、その重要な要素に距離適性がある。
今週の安田記念は、そうした中で、ベストマイラーのタイトルレースとして君臨してきた。そこに至るまでに、いくつもあるマイルの重賞で好走していたもの、例え勝てなくとも存在を示していた馬たちが、タイトル馬になってきた。勝ち馬の戦績を遡っていくと、NHKマイルCだの朝日杯FSだの、牝馬なら桜花賞の成績が目にとび込んでくる。そして古馬ならそれらに加えて、京王杯SCやマイラーズCなどの前哨戦がある。また、可能性を探る意味で高松宮記念や大阪杯といった直近のGI戦を走ったものも出走している。
今年は、マイルのGI戦を4勝していて連覇のかかるグランアレグリアの存在が、あまりにも大きい。前走のヴィクトリアMを好タイム、最速の上がりで4馬身差もつける完璧な勝利で飾っているが、この牝馬はデビュー時から馬体重を40キロも増やしていて、桜花賞馬でもあり、めざましい進化を遂げた牝馬といっていい。問題は、昨年の女王アーモンドアイと同じく中2週でのレースという点だけ。最強マイラーで絶対女王の座を守れるかどうかだ。
ただ、前走のダメージは少なく、開催中止のドバイから帰国してヴィクトリアMを走ったアーモンドアイとは状況が異なるとみるのが妥当だろう。圏内には、芝のマイル戦で朝日杯FS1着など4戦3勝のダービー2着馬サリオスの復活、一昨年の勝ちで昨年は落鉄があって3着に終わったインディチャンプの巻き返しを。
東京のマイル戦は、時計が速く上がりの最速馬がいいので、3歳馬10年ぶりの優勝を狙うシュネルマイスターにも注目したい。前走のNHKマイルCのタイムと54キロの斤量が魅力だ。伏兵には、10年前に3歳馬で勝っていたリアルインパクトの産駒で、昨年のNHKマイルCの優勝馬ラウダシオンが、前走それ以来の勝利をつかんでいて相性のいい東京でどこまでやれるか注目してみたい。そしてもう一頭、過去にNHKマイルC2着があるケイデンスコールを。父子制覇がかかっている。
「マイルなら 絶対王者 これからも」
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長岡一也
ラジオたんぱアナウンサー時代は、日本ダービーの実況を16年間担当。また、プロ野球実況中継などスポーツアナとして従事。熱狂的な阪神タイガースファンとしても知られる。
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