【インスタ生取材】写真撮影は命がけ!? 安田翔伍調教師が明かすオメガパフュームの素顔

2021年07月02日(金) 18:02

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昨年末の東京大賞典で史上初の3連覇を果たしたオメガパフューム (撮影:高橋正和)

上半期を締めくくる大レース・帝王賞(JpnI、大井ダート2000m)に出走したオメガパフューム。昨年末の東京大賞典では史上初の3連覇を果たすなど、JRA所属でありながら大井コースは大得意の舞台です。

そこでnetkeibaでは、帝王賞に挑むオメガパフュームを管理する安田翔伍調教師に、前夜からの“リモート密着取材”を敢行。帝王賞前夜のインスタライブ公開生取材から、残念ながら5着に敗れた帝王賞の敗因分析まで、安田翔調教師が分かりやすく解説をしてくださいました。再び輝くその日に向けて、オメガパフュームのことが丸っと分かるはず!?

(取材・構成:大恵陽子)

最終追い切りで岩田望来騎手を乗せた理由/前夜の公開取材

――帝王賞を明日に控えた中、インスタライブでの公開生取材、ありがとうございます。すでに東京ですか?

安田翔伍調教師(以下、安田翔) いまは栗東です。明日、追い切りもあるので、調教に乗ってから大井競馬場に向かいます。

――火曜日は翌日の追い切りに向けて安田翔調教師ご自身も体をつくっているそうですね?

安田翔 馬にそこまで影響はないと思うんですけど、体重を落とすことで容赦なく調教してやろう、という感じです。割り切るために助手の頃からずっとやっているルーティンみたいなもので、食事をちょっと制限したり、この時期でも調教で長袖を着たり、お風呂で汗をかいたりしています。追い切りは馬にも負担がかかるので、調教をするという敬意を込めています。

――ストイック! さて、「大井と言えばオメガパフューム」というくらい、7戦4勝、2着3回と連対率100%。大井でさらに強さに磨きがかかる理由は何なのでしょうか?

安田翔 京都や阪神でも重賞を勝っているんですけど、やっぱり帝王賞や東京大賞典は能力を発揮できる距離ということもありますし、コース形態も合っているんでしょうね。直線が長いので、そのぶん追い出しも我慢できるなど、あの馬にとって有利に働くところはあると思います。

――今年は川崎記念から始動しました。例年は平安Sから帝王賞というローテーションでしたが、初コースとなる川崎を選んだ理由というのは?

安田翔 去年の暮れの東京大賞典後、思った以上に消耗がなかったので、フェブラリーSか川崎記念を考え、距離を優先して川崎記念に行きました。調教でも左回りに苦手意識はないので、あわよくば左回りのレースを勝ってキャリアを加えてあげたいなという思いもあったんですけど、カジノフォンテンが強かったですね。

 平安Sについては今年は中京で開催されることになり、オメガパフュームの「ポジションを取らない競馬」で中京となると、コーナーで外々を回されてしまいますし、59kgを背負うので、避けたいなという考えもありました。

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川崎記念を振り返り「カジノフォンテンが強かったですね」 (撮影:高橋正和)

――川崎記念で2着の後、宮城県の山元トレーニングセンターに放牧に出て5月下旬に帰厩。6月20日には安田翔調教師が坂路で跨っていましたが、感触はどうでしたか?

安田翔 パフュームって、どちらかというと調教はあまり動かないので、調教の動きでコンディションを判断することはしないんです。馬が競馬に感付いてくるとイライラする時期があって、そこを通り越して集中力が高まる、という彼なりのルーティンがあるので、そこを見極めて「まだもうちょっと負荷をかけた方がいいかな」とか、そういう判断材料にしています。

――「そろそろレースだ」と気づいて、雰囲気が変わってくるんですね。

安田翔 競馬にまだ感付いていない時は、悪意なく噛みついてきたりすごくジャレてくるんですけど、競馬に感付くと、馬房からあんまり顔を出さなくなって、自分の時間を過ごすようになります。その時間がどれだけ多いか、普段の雰囲気を見て決めています。

――レースまでまだ時間がある時はジャレてくるなんて可愛いですね。オメガパフュームと仲良くしている写真をよく見る気がします。

安田翔 結構命がけで撮っています! パフューム自身はジャレて遊んでいるつもりで噛んでいるんでしょうけど、程度をあんまり理解していない子で、アザが多いです(苦笑)。「いまのうちに早く撮ってください!」って(笑)。

――そんな撮影秘話があったとは。今回は競馬に感付いて馬房から顔を出さなくなった時期はどうでしたか?

安田翔 ちょっと遅かったです。以前だと牝馬みたいなところがあって、入厩して1回の追い切りですぐ体が減ったりするんですが、今回は1〜2回の追い切りでもそんなにガタっと減らなかったんですよね。年齢を重ねたことでの変化だとは思うんですが、競馬のモードに入ってきたのが先週末の前くらいですかね。普段よりちょっと遅かったです。

――オメガパフュームの追い切りにはほぼ安田翔調教師が乗っていますが、最終追い切りでは岩田望来騎手が乗ったというのは、その辺りの意図があってですか?

安田翔 もうちょっと負荷はかけてもいいのかな、という感触はあったんですが、帝王賞に去年と一昨年、出走している中で、暮れの東京大賞典と比較したら発送時刻が遅くて、彼の集中力の持つ限度を帝王賞はちょっと超えちゃうんですよ。東京大賞典がだいたい14時くらいから装鞍所に向けての準備を始めるのに対して、帝王賞は18時くらいから。去年や一昨年から考えると、馬房でイレ込みに近い表現も見せるかもしれないんですが、調教の負荷はかけたかったので、(岩田)望来に協力してもらいました。

 僕が乗って時計を出すとなると、体重のこともありますし、ある程度アクションを起こさないといけないので、それによって気負いすぎるのも嫌だなと思ったんです。体重の軽いジョッキーが乗って、そんなに大きな刺激を与えず、でも時計では負荷をかけたい、という意図でした。

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「どちらかというと調教はあまり動かない」というオメガパフューム (撮影:井内利彰)

――最近、レースでは以前よりも前の方のポジションで運べることが多くなりましたね。

安田翔 去年の平安Sに北村友一が乗った時にリクエストとして「まずはリズム優先で」という話をしていたんですけど、出たなりで結構いい位置(6番手)を取れたんですよ。で、その次の帝王賞でミルコ(・デムーロ)とも「もちろんリズム前提だけど、あわよくばクリソベリルの近くにいたい」という話をした時に、そんなに意識せずにそこにつけれるようになったと言うので、ゲートが開いてからのストライドが、そういうポジションに行けるようになってきたのかなと思っています。

――さぁ、明日はいよいよ帝王賞です。川崎記念を勝った地方馬・カジノフォンテンとの再戦にもなります。意気込みを聞かせてください。

安田翔 さっき「無事に到着しました」と連絡がありました。今回の帝王賞はカジノフォンテンも含めて、他にも海外で実績を積んできた馬や、年齢を重ねて勢いをつけている馬も多く出ていて、僕も第三者ならすごく興味を持つレースにはなると思います。

 でも、そのメンバーを意識して調教をしているわけではないので、さっき言った「帝王賞のイレ込みをどれだけなくすか」とか、今はどういう過程といいコンディションで馬場に送り出せるかということに集中しています。その結果、パフュームが持っている能力を発揮してくれたらいいなと思います。

早めに大井入りして確認したかったこと/レース当日に見えた課題

 迎えた帝王賞当日。事前抽選ながらファンの入場が再開され、東京トゥインクルファンファーレによる生ファンファーレが奏でられると、スタンドからは拍手が起こりました。

 1番人気に支持されたオメガパフュームは中団やや後方からレースを運び、勝負所から進出して少しずつ先頭との差を詰めたものの、5着でゴール。

 早朝5時から栗東で調教に乗った後、ある理由から早めに大井競馬場入りしたという安田翔調教師ですが、残念ながら不安が的中することとなってしまいました。

――最後まで伸びてはきていましたが、残念な結果になってしまいました……。

安田翔 やっぱり懸念していた大人しさ、ですね。過去2年と違ってエキサイトせず、大人しいのがどっちに出るのかな?と思っていました。

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“大人しさ”を懸念していた安田翔伍調教師 (撮影:高橋正和)

――帝王賞はレースの時間が遅いため、馬房でイレ込みに近い表現をする可能性もあると話していましたが、実際はどうでしたか?

安田翔 ちょうどテンションが上がり始める怪しい時間帯に馬房での雰囲気を去年と比較したかったので、僕も早めの4時過ぎくらいに大井競馬場に来たのですが、全然そういうのは見せませんでした。

――パドックでは常歩でゆったり歩いていましたが、デムーロ騎手が騎乗しようとするとテンションが昂る場面も見られました。

安田翔 いや、あんなもんじゃないんです。これまでだと、近づくのも危険なくらいなんです。本馬場入場も普段はやんちゃな面があるんですけど、今までにないくらい歩いて馬場に入りました。ゲート裏ではピリッとしていたらしんですけど、やっぱりスタートしても大人しかったようです。

――近走のようにスタートから進んでいく感じがなかったような…。

安田翔 コンディションが悪いとかそういうのじゃないんですけど、気持ちの面ですかね。行儀良くなってきたのが、この馬のリズムとしてはあまり競馬に直結しないのかな、と感じます。

――行儀良くなるというのはいいことのように感じますが、レースでは必ずしもいい方向に出るわけではないんですね。

安田翔 行儀良くなってすごく調整もしやすいんですけど、これまでのような1週前にナーバスになって、それをなだめていく調整ができる雰囲気の方がいいのかな、と思います。今回、「まだ(馬が)怒らないな」と感じていて、これ以上怒らせるわけにはいかない時期に入ったので、追い切りを岩田望来に頼みました。うーん、ちょっと秋はローテーションを考えるか、道具を考えるか、馬の状態を確認した上で相談して悩んでいきます。

(文中敬称略)

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