過去最高額を記録した「セレクトセール」当歳セッション

2021年07月21日(水) 18:00

億超えが続出する中、最も気になっていたキティの2021

 12日1歳セッションはあいにくの霧雨に祟られて肌寒いくらいの気温で経過したが、翌日の当歳セッションは、幸いにも前日とはうってかわり、やや曇りがちながら朝から晴天に恵まれた。

 午前8時より10時までが比較展示の時間帯である。セール会場横の展示会場にはこの日上場される230頭の当歳馬(中には早々に離乳して本馬のみという例も散見された)が、母馬とともに一堂に会し、番号順に並べられている中を多くの購買関係者が名簿片手に巡回するのだ。いつもながらのこの光景は、言葉が出なくなるほど圧巻の風景だ。

生産地便り

晴天に恵まれた当歳展示風景

 当歳セッションは230頭中213頭が落札され、売却率は92.6%、売り上げ総額は税込み120億1530万円という過去最高額を記録したが、この親子揃った展示馬全体では、繁殖牝馬の分も合算すると、いったいどれくらいの価格になることかと考えないでもなかった。

 この日も、億超えの落札馬が続出した。最高価格馬は、428番セルキスの2021。父キズナの牡黒鹿毛馬で4億5100万円(落札価格4億1000万円)。落札者は小笹芳央氏。販売者はノーザンファーム。

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セルキスの2021

 当歳の次点は398番ヤンキーローズの2021。父ロードカナロアの牡黒鹿毛で、4億700万円(落札価格3億7000万円)。落札者は(株ダノックス)、販売者は(有)ノーザンレーシング。三番目は361番ラヴズオンリーミーの2021。父ハーツクライの牡鹿毛で、3億800万円(落札価格2億8000万円)。落札者は三木正浩氏、販売者はノーザンファーム。

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ヤンキーローズの2021

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ラヴズオンリーミーの2021

 総じて、価格上位馬はノーザンファーム生産馬が圧倒的多数を占めており、日高を中心とした中小牧場からの上場馬は価格下位のグループにより多く分布している、という構図だが、しかし、個々に見て行くと、グランド牧場、千代田牧場などのように、存在感を示す牧場もあった。グランド牧場は344番カレドニアロードの2021(父Justify、牡鹿毛)を1億4850万円(落札価格1億3500万円)で、また392番クイーンマンボの2021(父ロードカナロア、牡鹿毛)を7920万円(落札価格7200万円)でそれぞれ落札されていた。また、千代田牧場も、353番タニノアーバンシーの2021(父リアルスティール、牝鹿毛)の9900万円(落札価格9000万円)を筆頭に、412番ホエールキャプチャの2021(父キズナ、牡鹿毛)の6600万円(落札価格6000万円)、434番ミリオンドリームズの2021(父キズナ、牡黒鹿毛)の4730万円(落価格4300万円)というように、名門牧場らしい実績を残していた。

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カレドニアロードの2021

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タニノアーバンシーの2021

 そんな中、個人的に私が最も気になっていたのは、413番キティの2021である。周知の通り、フェブラリーステークスの優勝馬インティの半弟で、父はデクラレーションオブウォー。牡鹿毛で3月15日生まれ。販売者は(同)中神牧場。

 母馬のキティは、私の友人である山下恭茂が生産し、繁殖牝馬として繋養していた馬だが、2018年9月に病のため彼は急遽入院生活を送ることになり、その年に生まれていた当歳とともに、ここ中神牧場に移動していた。

 その後、翌2019年にはインティと同じくケイムホームを交配すべく、はるか遠くのJBBA九州種馬場まで輸送して種付けしたものの残念ながら不受胎。その翌年、2020年にデクラレーションオブウォーを交配して受胎に漕ぎつけ、今年3月15日に無事牡馬を出産したという経過である。

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キティの2021

 価格は3960万円(落札価格3600万円)。名血揃いの上場馬の中にあっても、やはりGI馬の半弟という血統背景と、馬の出来の良さでこの価格まで上昇した。落札者は岡浩二氏。

 全体の中ではもちろん価格は高額と言い難いが、それでも日高の中小牧場からの上場馬としては上位に属する。3000万円台に到達できたらベストと個人的には予想していたので、落札価格3600万円は非常に嬉しい数字であった。

 友は今も車いす生活を送る。だがテレビの競馬中継を見て、自身の生産馬の応援を欠かすことはないというし、たとえ生産者名が変わったとしても、この当歳馬にも熱い視線を送ることになるだろう。早くても2年後の6月まで待たねばならないが、後は無事に育成され、デビューしてくれることを願うばかりである。

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当歳展示風景

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田中哲実

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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