【応援!東京五輪】小牧太騎手の長男・加矢太さんのイチオシ! 佐藤英賢選手(障害馬術)のココがすごい

2021年07月24日(土) 18:01

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▲小牧太さんの長男で、全日本優勝経験を持つ小牧加矢太さん (撮影:桂伸也)

昨日23日(金)に開会式を迎えた東京オリンピック・パラリンピック。「netkeiba」では馬術競技に出場する4名の選手のインタビューをお届けしてきました。

最後に登場するのはJRAジョッキー・小牧太さんの長男で、全日本障害飛越選手権の優勝経験を持つ小牧加矢太さん。競技経験者の目線で、イチオシの佐藤英賢選手(障害馬術)のすごさを熱弁! さらに、JRAの障害ジョッキーを目指して奮闘中の、ご自身の近況も語ってくれました。

(取材・構成=不破由妃子)

3日間を戦い抜くだけでも至難の業

──馬場馬術は、「人馬による社交ダンス」ともたとえられる競技ですよね。

加矢太 社交ダンスだったり、あとはフィギュアスケートが引き合いに出されることも多いです。実際、フィギュアスケートと同じ採点競技ですしね。

──馬場馬術ですごいなと思うのが、馬が自らの意志で音楽に合わせてステップを踏んでいるように見えること。実際はそんなわけはないので、ものすごく繊細な動作で指示を出しているんだなと思って。

加矢太 そこも見どころのひとつですよね。ある意味、競馬とは真逆の競技で、競馬はムチを使って頑張らせて、どちらかというと発散させる競技だと思いますが、馬場馬術は終始溜めたなかで、いかにダイナミックかつ、滑らかな動きを作っていけるかという競技。馬場馬術の競技にはあまり出たことがないので、偉そうなことは言えないんですが。

──あ、出場されたことがあるんですね。

加矢太 ほんの数回ですけどね。出たときに思ったことは、競技者としてはすごくおもしろい競技だなと。ただ、観る側に立つと、優劣が見分けにくいというか、シンプルな障害馬術に比べると難易度が上がるかもしれません。

──点数の予測は難しいかもしれませんが、馬のリズミカルな動きを観るだけで感動するし、楽しいです。

加矢太 ダイナミックだなとか、動きが滑らかだなとか、感覚的な見方でいいと思います。競馬ファンの方のなかには、パドックで馬を判断される方もいますよね。歩様とか雰囲気を持っている馬を見極められる方は、馬場馬術の馬の動きを見ても、この馬いいなとかもうひとつだなとか見極められると思います。

──同じ馬術競技でありながら、障害馬術とはまったく違う競技ですよね。

加矢太 まるで違いますね。障害馬術はどんな格好で飛んでも点数には影響しませんが、馬場馬術は見た目の動き、馬の格好やバランスなど、芸術性が求められますから。自分からすると、馬場馬術の選手は本当にすごいなと思います。

──障害馬術と馬場馬術に加え、クロスカントリーもこなすのが総合馬術。3日間にわたって総合力を競うわけですが、加矢太さんも出場経験がありますか?

加矢太 障害と馬場で競う複合馬術には出たことがありますが、クロスカントリーは経験がないです。あれはすごいですよね。総合馬術に出る馬は、障害も馬場もクロスカントリーも全部できるわけですから。個々の競技でメダルを狙えるグレードではないにしても、平均的にこなせる馬じゃないと通用しないので。

──しかも、3日にわたる戦い。体力も精神力も問われる競技ですよね。

加矢太 馬場馬術→クロスカントリー→障害馬術の順で行われるんですけど、クロスカントリーが終わった時点で、最後の障害馬術に使えるかどうか、精密検査をするんです。馬場馬術で神経を使って、クロスカントリーで体力を消耗して、最後にどれだけ余力が残っているかの検査なんですけど、その検査を通るのもものすごく難しいらしくて。それだけハードということですよね。その検査をクリアした馬だけが、最後の障害に進めるんです。

──なるほど。3日間を戦い抜くだけでも至難の業。

加矢太 そうですね。人によるケアはもちろんですが、そもそも精神的にも肉体的にも強い馬でなければ向かない競技です。

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▲「精神的にも肉体的にも強い馬でなければ向かない競技」 (撮影:桂伸也)

──総合馬術の見どころというと、やはりクロスカントリーになりますか?

加矢太 そう思います。これだけ馬術をやってきた自分が見てもすごいなと思いますし、オリンピックともなれば、ビックリするような障害を作ってくると思うので。飛び込み水濠という水のなかに飛び込む障害もあります。

──着地点が水のなかということですか?

加矢太 そうです。競馬の障害レースの場合は水濠を越えますけど、総合馬術では池に飛び込む感じです。クロスカントリーはとにかくハードなので、そこでの人馬の頑張りに注目してほしいです。

ヨーロッパの選手に引けを取らないどころか、勝っている

──さて、最後に加矢太さんが注目されている選手を教えてください。

加矢太 障害馬術の佐藤英賢選手です。コロナ禍になる前、1カ月ほどオランダに修行に行ったことがあるんですけど、そのときに見に行った競技会に佐藤英賢さんが出ていらして。ヨーロッパの選手に引けを取らないどころか、むしろ勝っている部分が多く見えて、とても感銘を受けました。この人なら世界と戦えるなと思うほど、光り輝いて見えましたね。

──具体的に、どういった技術に惹かれたのですか?

加矢太 競馬のジョッキーといってもおかしくない体型の選手なんですけど、すごく大きな馬を、力ではなくて技術で御すというか。ヨーロッパには、星の数ほど技術のある選手がいますが、どちらかというと力で馬を御すタイプの人が多いなか、佐藤英賢さんは日本人ならではの繊細な感覚に富んでいるように感じたんです。

 難しい障害になると、コントロールを重視して慎重になりがちなんですけど、佐藤さんはすごく身軽でスピーディ。素直に、日本人でもヨーロッパで通用するんだな、手が届くんだなと思えました。

 競馬も力ごなしではなく、テクニックが重要じゃないですか。だから、競馬にも使える技術なんじゃないかと思って、今は英賢さんの技術には注目していますね。

──馬術選手からジョッキーに視点が移っていますね。

加矢太 もう完全に移っていますね(笑)。

──最後に加矢太さんご自身の挑戦について、今のお気持ちを聞かせてください。

加矢太 なにしろ前例がないことなので、自分でも斬新な挑戦だなと思いますが、「頑張ってできないことはない!」という気持ちで今は取り組んでいます。9月後半の試験に向けて、学科も実技もこれ以上はできないというくらい準備をしたい。先を見過ぎると足元をすくわれるので、今はとにかく試験に向けて全力投球です。

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▲「“頑張ってできないことはない!”という気持ちで取り組んでいます」 (撮影:桂伸也)

(了)

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