【クイーンS AI予想】人気次第では魅力十分! AIの本命候補を別角度から徹底考察

2021年07月26日(月) 18:00

netkeibaにある膨大な競走成績を人工知能によって機械学習するAiエスケープを開発したAIマスター・Mと、レースデータの分析を専門とする競馬評論家・伊吹雅也による今週末のメインレース展望。コンピュータの“脳”が導き出した注目馬の期待度を、人間の“脳”がさまざまな角度からチェックする。

(文・構成=伊吹雅也)

上位人気馬が強いというわけではない!?

AIマスターM(以下、M) 先週はサマースプリントシリーズ第3戦のアイビスSDが行われました。

伊吹 勝ったオールアットワンスは、特別登録時点で発表している予想週末の『1点で仕留める! WIN5攻略法』でも中心視していたように、レースの傾向からは特に不安要素が見当たらなかった馬。順当勝ちと言って良いでしょう。

M 先団でスムーズにレースを進め、ライオンボスとの競り合いを制しています。

伊吹 ライオンボスがスタートダッシュの差で外ラチ沿いのポジションを奪った分、オールアットワンスはやや内めを通ることになりましたが、それでも危なげなく押し切りました。もっと内寄りの枠だったとしても、問題なく上位に食い込んでいたはずです。

M 好枠に助けられたわけではない、と。

伊吹 少なくとも私はそう思っています。内ラチ沿いを進むという奇策に打って出たバカラクイーンの健闘を含め、非常に見応えのあるレースでした。

M 今週の日曜函館メインレースは、牝馬限定のクイーンSです。昨年は単勝オッズ43.7倍(11番人気)のレッドアネモスが優勝を果たしました。

伊吹 2019年の白百合S以来となる勝利でしたね。個人的にはこのレースが合いそうなタイプと見ていて、その見立て通りに復活してくれたわけですが、正直なところ勝ち切るとまでは思っていなかったんですよ。

M 直線では馬群の隙間をすり抜けるように伸びてきました。

伊吹 最内枠を活かし切った進路取りで、鞍上の吉田隼人騎手にとっても会心の勝利だったんじゃないでしょうか。

M 荒れやすいレースという印象はあまりないのですが……。

伊吹 過去10年のクイーンSにおける単勝人気順別成績を見ると、1番人気に支持された10頭のうち9頭は3着以内に好走しています。4着以下に敗れたのは、2017年6着のアドマイヤリードだけです。

M おお、ここまで崩れていないとは。1番人気馬には逆らわない方が良さそうですね。

伊吹 ただ、堅く収まりがちなレースとは言えません。過去10年の3着以内馬30頭中9頭は単勝7番人気以下でしたし、単勝2〜3番人気の馬は3着内率が25.0%にとどまっています。

M 2〜3番人気馬は連対例も2つしかありませんね。

伊吹 むしろ、1番人気馬が堅実なのはたまたまで、本質的には荒れやすいレースと見た方が良いんじゃないでしょうか。

M なるほど。さて、そんなクイーンSでAiエスケープが指名した特別登録時点の注目馬は、フェアリーポルカです。

伊吹 これはまた面白いところを狙ってきましたね。超人気薄ということはないでしょうが、上位人気グループからは外れそう。

M 重賞を2勝している実績馬ですが、ここ2戦は地方のダートグレード競走に挑戦していました。

伊吹 2走前のマリーンCも前走のスパーキングLCも、それぞれ4着どまりでしたね。3走前の中山牝馬Sで3着に健闘していて、当然ながら芝替わりは歓迎されると思いますが、今回は若い馬やキャリアの浅い馬がたくさんいるので、この馬を積極的に狙おうと考えている方は案外少ないと思います。

M 牝馬限定戦ですし、やはり若い世代を重視した方が良いのでしょうか。

伊吹 いや、過去10年の馬齢別成績を見るとわかりますが、そんなことはまったくありません。

M さすがに6歳以上の高齢馬は苦戦していますが、3歳、4歳、5歳の3着内率は同じくらいなんですね。

伊吹 4歳勢と5歳勢は3着以内馬の数も同じ12頭でしたから、評価に差をつける必要はないと思います。

M 馬齢が嫌われるようならば、むしろ狙い目かもしれませんね。

伊吹 その通りです。そもそもこのクイーンSは、実績馬が強いレースでもあります。2013年以降の過去8年に限ると、3着以内馬24頭はいずれも「“JRA、かつ1400〜1800m、かつオープンクラスのレース”において“着順が3着以内、かつ4コーナー通過順が2番手以下”となった経験のある馬」でした。

M これだけでもだいぶ絞り込めそうですね。

伊吹 簡単に言えば、1マイル前後のレースを得意としている実績馬が優勢で、逃げ馬を除けばより信頼できる――ということ。特別登録を確認しましたが、今年はこの条件をクリアしている馬が少ないんですよ。

M フェアリーポルカは2020年の中山牝馬Sを4角6番手のポジションから、同じく2020年の福島牝馬Sを4角9番手のポジションから、それぞれ差し切っています。

伊吹 今年と同じく函館芝1800mで施行された2013年を含めての傾向ですし、変則開催の影響もなさそうです。

M 逆に、伊吹さんから見た不安要素は何かありますか?

伊吹 強いて挙げるなら、ビッグレースで善戦したことがない点でしょうか。2013年以降の過去8年に限ると、3着以内馬24頭のうち22頭は「“JRA、かつGIのレース”において11着以内となった経験のある馬」でした。

M こちらも綺麗に明暗が分かれていますね。

伊吹 まだ大きな舞台に立ったことがない馬はもちろん、GIでは大敗続きという馬も苦戦しています。

M フェアリーポルカはこれまでにGIを2回使っていますが、2019年のオークスも2019年の秋華賞も、それぞれ16着どまりでした。

伊吹 これだけ重賞戦線で健闘してきた馬ですし、実績不足という言い方は適当でないと思いますが、「ビッグレース向きの底力がモノを言うレース」と解釈するならば、この傾向は不安要素のひとつと言えるでしょう。

M 確かにそうかもしれませんね。

伊吹 まぁ、Aiエスケープが注目馬に指名してきたくらいですし、コース替わりをはじめとする強調材料と思しきファクターは、素直に評価して良いのだと思います。

M 今回は休み明け2戦目でもありますからね。

伊吹 最終的なオッズ次第ではありますが、私も無理には逆らわず、しっかり押さえておくつもりです。

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伊吹雅也

競馬評論家。JRAの公式ホームページ内「今週の注目レース」にて“データ分析”のコーナーを、TCK(東京シティ競馬)の公式ホームページ内「分析レポート」にて重賞競走のデータ分析を担当しているほか、グリーンチャンネル、JRAのレーシングプログラム、『週刊アサヒ芸能』、『競馬王』などさまざまなメディアを舞台に活動している。主な著作に『WIN5攻略全書 回収率150%超!“ミスターWIN5”のマインドセット』、『コース別 本当に儲かる騎手大全』シリーズ、『コース別 本当に儲かる血統大全』シリーズ、『ウルトラ回収率』シリーズ(いずれもガイドワークス)など。

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