競馬場で名店を味わう

2021年07月27日(火) 18:00

麺が見えないほど具沢山でボリューミーな田舎そば

 緊急事態宣言の東京では大井競馬場が再び無観客での開催となってしまったが、そういう状況だけに有観客の競馬場では、普段以上にファンの盛り上がりが感じられる。とはいえ大声での声援は禁止という状況ゆえ、拍手での応援が定着してきた。中央競馬のGIなどではテレビを通しても拍手が聞こえてくることがあるし、GIでなくとも印象的な場面などでは、アナウンサーの実況によってそのような状況が伝えられることがある。

 地方競馬ではこれまでレースのときに拍手が起こることはほとんどなかったように思うのだが、現地に取材に行ける機会がそう多くないなかで、そういう場面を何度か経験した。

 6月20日の高知優駿では、ゲートインのファンファーレで拍手が起こったことは、6月22日付けの本コラムでもお伝えしたとおり。

 さらに、王冠賞が行われた7月22日の門別競馬場は、4連休初日ということもあり、今シーズン最多となる994名のファンで賑わった。994名というと少ないと思われるかもしれないが、ゴールデンウィーク中の5月4日、462名というのが、門別競馬場の今シーズンこれまでの最多。王冠賞当日は、その倍以上の入場だった。

 王冠賞では、断然人気に支持されたラッキードリームに、ホッカイドウ競馬史上6頭目の三冠馬の期待がかかっていた。直線を向いて先頭は、ここまでの二冠でともに2着だったリーチ。ぴたりと直後でマークしていたラッキードリームが直線半ばでこれをとらえると、拍手が起こった。二冠目の北海優駿は無観客開催だっただけに、多くのファンに祝福された三冠達成は感動的なものとなった。

 さて、前置きが長くなったが、ここからが本題。ファンを迎えての開催となれば、楽しみは競馬場グルメ。無観客の開催では取材に行っても当然売店などはやっていない。ホッカイドウ競馬は、昨シーズン有観客となったのは最後の3日間だけだったので、門別競馬場で場内のグルメが味わえるのは、個人的にはコロナ以前の一昨年以来のこと。

 迷うことなく、いただいたのは、いずみそば。ご存知の方も多いと思うが、本店『いずみ食堂』は競馬場から車で10分ほど、国道235号線にあり、競馬関係者の間では有名なそば屋さん。セリの時期ともなれば競馬関係者がひっきりなしに訪れる。

 そのいずみ食堂が門別競馬場に出した店舗が『いずみそば』。今シーズンからメニューが少し変わって、本店に準じたものになったことは聞いていた。本店のメニューはご飯物なども豊富でラインナップはかなり多く、競馬場のメニューは当然その一部だが、競馬場だけのメニューというのも残っている。

 本店でよく食べる、かしわ天ぷらそば(鶏肉と海老天のそば)を食べようと思っていたのだが、しかし。前述したような多くのファンで賑わっていたので、そばのネタがいくつも売り切れていた。で、少なくなった選択肢の中からいただいたのが、鴨きのこそば。

鴨きのこそば。太麺に具沢山でボリュームたっぷり

 1300円也。競馬場の食べ物としては安くはないが、本店と同じ味で、それなりの価値は十分にある。

 写真のとおりの具沢山で、特徴的なのは、そば。提供された状態では、具に覆われていて、そばは見えないので、上に出してみた。いかにもという手打ちの太麺田舎そば。ねじれたり凸凹があるので、出汁がよくからんでくる。

 それでこの出汁の美味しさにあらためて気づいた。とろとろに煮込まれている長ネギの甘みが、濃口の醤油とあいまって、それが太麺のそばにも負けることなく、なんともいえない旨味となっているのだ。

 ちなみに、19時ごろにはそばも売り切れ、店じまいとなっていた。

 まだまだ自由に遠出ができる状況にはないが、今年でなくても来年でも、機会があればぜひ、門別競馬場のいずみそばへ。

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斎藤修

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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