【関屋記念 AI予想】正解はどっち!? 人間の見立てと真っ向から対立するAIの注目馬

2021年08月09日(月) 18:00

人気にこたえてメイショウムラクモが優勝(C)netkeiba.com、撮影:橋本健

netkeibaにある膨大な競走成績を人工知能によって機械学習するAiエスケープを開発したAIマスター・Mと、レースデータの分析を専門とする競馬評論家・伊吹雅也による今週末のメインレース展望。コンピュータの“脳”が導き出した注目馬の期待度を、人間の“脳”がさまざまな角度からチェックする。

(文・構成=伊吹雅也)

どちらかと言えば堅く収まりがちな一戦

AIマスターM(以下、M) 先週は3歳馬によるダート重賞のレパードSが行われました。

伊吹 強かったですね、メイショウムラクモ。

M 道中は2〜3番手でレースを進め、ゴール前の直線に入るとあっさり抜け出し、2着のスウィープザボードに3馬身差をつけての勝利。まったく危なげのない競馬で単勝オッズ2.8倍(1番人気)の支持に応えました。

伊吹 今年は実績馬が例年より少なかったんですよね。ダートグレード競走やJRAのオープン特別で連対経験があったのはメイショウムラクモのみ。順当勝ちと言って良いでしょう。

M 昨年末の全日本2歳優駿をアランバローズが、先月のジャパンダートダービーをキャッスルトップが制すなど、現3歳世代のダート路線は地方勢の活躍が目立っています。ここからJRA勢が巻き返してくるとしたら、このメイショウムラクモあたりが主力となってくるのでしょうか。

伊吹 どうでしょうね。今回の相手関係を考えると、まだ何とも言えません。今年3月の伏竜Sでは、後にジャパンダートダービーで2着となるゴッドセレクションに完敗していましたし。

M ウェルドーン、スマッシャー、リプレーザといった、他のタイトルホルダーとも未対戦です。

伊吹 ただ、今回のパフォーマンスは相応に高く評価すべきだと思いますし、ここからさらに良くなってくる可能性もあります。次走が楽しみです。

M 今週の日曜新潟メインレースは、サマーマイルシリーズ第3戦の関屋記念です。昨年は単勝オッズ7.5倍(4番人気)のサトノアーサーが優勝を果たしました。

伊吹 2018年のエプソムC以来、およそ2年2か月ぶりの勝利でしたね。

M 道中はほぼ最後方を追走していましたが、ゴール前の直線だけで差し切りました。

伊吹 追い込み有利な流れではなかったと思いますが、この馬の持ち味はしっかりと活きましたし、鞍上や陣営にとっても会心の勝利だったんじゃないでしょうか。

M 近年に関して言うと、大きな波乱が立て続けに起きているようなイメージはありません。堅く収まりがちなレースという認識で合っていますかね?

伊吹 過去10年の単勝人気順別成績を見ると、上位人気馬の好走率は案外平凡なのですが、超人気薄の馬は苦戦していました。

M 6番人気くらいまでの馬が中心と言って良さそうですね。

伊吹 2015年に単勝オッズ23.6倍、単勝9番人気のヤングマンパワーが3着となったものの、単勝オッズ24倍以上だった76頭、単勝10番人気以下だった70頭は、すべて4着以下に敗れています。

M 単勝二桁人気クラスを狙うのは無理筋かもしれませんね。

伊吹 超人気薄だからと言う理由で狙っている馬の評価を下げる必要はありませんが、最初から大穴を狙う前提で予想に臨むのは得策でないと思います。

M そんな関屋記念でAiエスケープが指名した特別登録時点の注目馬は、ベストアクターです。

伊吹 これはまた面白い名前が挙がってきましたね。人気も読みづらいですし。

M 2020年の阪急杯で重賞初制覇を果たしましたが、1年ぶりの実戦となった今年の阪急杯は16着に大敗。1600mのレースにはこれといった実績がないので、超人気薄となる可能性もあります。

伊吹 場合によっては穴人気しそうな気もするんですけどね。まぁ、上位人気ということはないでしょうし、おそらく買いやすい水準のオッズに落ち着くでしょう。

M 大きく崩れた直後ですが、巻き返しを期待しても良いのでしょうか?

伊吹 レースの傾向を考えるとやや心配ですね。大敗直後の馬が好走したケースもあるとはいえ、どちらかと言えば前走好走馬が優勢です。

M 前走で6着以内に好走している馬が中心、と。

伊吹 ちなみに、2016年以降の過去5年に限ると、前走の着順が7着以下だった馬は[1-1-0-37](3着内率5.1%)でした。

M おおっ、近年はさらに好走率が下がっているんですね。ベストアクターにとっては歓迎できない傾向と言えます。

伊吹 ベストアクターは前走が丸1年の休養明けでしたから、順調に使いつつ結果を出せなかった馬と比べたら、変わってくる可能性は高いと思うんですけどね。やはり、ある程度は割り引きが必要です。

M 距離適性についてはどうでしょう。サマーマイルシリーズの対象レースですし、素直にマイラーを重視した方が良いような気もします。

伊吹 その通りですね。過去10年の関屋記念で3着以内となった馬の大半は、中央場所、かつ1マイルのレースに十分な実績があった馬です。

M こちらもハッキリと明暗が分かれていますね。

伊吹 “前年以降、かつ中央場所、かつ1600mのレース”において2着以内となった経験がなかったにもかかわらず3着以内となったのは、現在のところ2015年2着のマジェスティハーツが最後です。

M マジェスティハーツは中長距離のレースもこなせるタイプでしたから、ベストアクターとはだいぶイメージが異なります。

伊吹 一応、2013年1着のレッドスパーダは1600m未満のレースを主戦場としていた馬ですし、まったくチャンスがないとは思いませんけどね。ただ、さすがにこの傾向を見てしまうと高くは評価できません。

M なるほど……。他に何か、レースの傾向から強調できる部分はありませんか?

伊吹 ……難しいところですね。そもそも、近年の関屋記念って、1マイル未満のレースや重賞以外のレースを経由してきた馬がほとんど上位に食い込めていないんですよ。

M これもベストアクターにとっては気掛かりなデータです。

伊吹 いやぁ、私もここまで綺麗に見解が割れるとは思いませんでした。残念ながら、今回は「私とAiエスケープ、信じたい方を信じてください」というのが結論になります(笑)。これだけ見立てが食い違うと、逆にレースが楽しみです。

M 伊吹さんもAiエスケープも、レースデータを基に評価を下しているわけですからね。

伊吹 関屋記念の傾向からは強調できないと思うのですが、別の角度から見たら魅力ある存在なのでしょう。もともと脚質はこのコース向きですし、加齢などの影響で今ならこのくらいの距離が合っている可能性もありそう。私も、もう少し慎重に取捨を判断したいです。

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伊吹雅也

競馬評論家。JRAの公式ホームページ内「今週の注目レース」にて“データ分析”のコーナーを、TCK(東京シティ競馬)の公式ホームページ内「分析レポート」にて重賞競走のデータ分析を担当しているほか、グリーンチャンネル、JRAのレーシングプログラム、『週刊アサヒ芸能』、『競馬王』などさまざまなメディアを舞台に活動している。主な著作に『WIN5攻略全書 回収率150%超!“ミスターWIN5”のマインドセット』、『コース別 本当に儲かる騎手大全』シリーズ、『コース別 本当に儲かる血統大全』シリーズ、『ウルトラ回収率』シリーズ(いずれもガイドワークス)など。

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