『諦めなくてよかった』英国で106戦目にして初勝利を挙げた7歳牝馬

2021年08月11日(水) 12:00

近走の結果から期待をもって今回のレースに臨んだ

 8月6日(金曜日)に、イギリス中東部にあるヘイドックパーク競馬場で行われた開催の、第2競走に組まれた牝馬限定ハンデ戦(芝6F)の結果が、イギリスの競馬サークルで大きな話題となっている。

 クラス5という最下級条件のレース結果が、なぜ注目を集めているのか。

 実は、このレースを制したセレリティ(牝7、父カサメント)にとって、デビュー以来106戦目にして手にした初めての勝ち星だったのである。

 現役時代は48戦し、5F戦で2勝をあげた母シンコウダンサーに、G1レーシングポストトロフィー(芝8F)を含む3重賞を制した種牡馬カサメントが交配され、2014年3月16日にアイルランドで生まれたのがセレリティだ。

 ちなみに母シンコウダンサーの父は、日本で走りGI高松宮記念(芝1200m)を制したシンコウフォレストである。

 1歳秋にゴフス・スポーツマン1歳セールに上場されたセレリティは、1万6千ユーロ(当時のレートで約161万円)で、調教師ダレン・バニヤンに購買され、メイザホース・ビーウイズユー・シンジケートという名のパートナーシップの所有馬となった。

 バニヤン厩舎から2歳4月にデビューし、9月までに3戦を消化するも、いずれも7着以下の成績に終わると、セレリティは11月に開催されたゴフスの現役馬セールに上場され、馬主I.M.フォーキス夫人の代理人に800ユーロ(当時のレートで約9万円)で購買されている。

 同時に、ダレン・バニヤン厩舎からデヴィッド・エヴァンス厩舎に転厩したセレリティは、移籍後4週間後に出走したケンプトンのメイドン(AW6F)でも9着に敗れて、2歳シーズンを終えた。

 3歳になったセレリティは、8月までに実に20戦を消化。5戦目となったウルヴァーハンプトンのハンデ戦(AW5F21y)、続くニューキャッスルのハンデ戦(AW6F)で連続して2着に入り、もう少しで未勝利脱出のところまで行ったのだが、残念ながら勝利を手にするにはいたらなかった。

 この年の秋、セレリティは庭先売買によって、フォーキス夫人からヒースハウス・レーシングという名のパートナーシップに所有権が渡り、同時に、デヴィッド・エヴァンス厩舎からリサ・ウィリアムソン厩舎に転厩となっている。

 新たな馬主と管理調教師のもとで、もう2戦し、いずれも5着以下に終わって3歳シーズンを終了。4歳シーズンのセレリティはさらに精勤に励み、実に30戦を消化。勝ち馬に3/4馬身及ばなかったウェザビーのハンデ戦(芝5F110y)を含めて2着が2回、3着が3回あったものの、このシーズンも勝つことはできなかった。

 5歳シーズンを27戦0勝の成績で終えると、同馬はデビュー以来初めてとなる休養期間を与えられ、半年近く戦線を離脱。6歳シーズンの始動が6月になった後、この年は12戦して0勝。

 その後、5カ月半の休養を経て迎えたのが、今季だった。

 残念ながら7歳シーズンも連敗街道を歩んだセレリティは、今季8戦目となった、7月9日にチェスターで行われたハンデ戦(5F110y)で7着となった段階で、デビュー以来の連敗記録が103に到達。

 1990年から2001年にかけて、障害馬のキクソルクロセットが作った、イギリスとアイルランドにおける競走馬の歴代連敗最多記録に並んだのである。

 そして、続いて出走した、7月17日にヘイドックで行われたハンデ戦(芝5F)で、セレリティは3着に敗れ、ついに104連敗の新記録を樹立してしまったのである。

 続いて、7月23日にサースクで行われたハンデ戦(芝5F)でもセレリテイは3着に敗れ、連敗記録をさらに伸ばした。

 ただし、直近の2戦はいずれも3着と、セレリティはまずまずの成績を収めていたのである。

 こうして迎えたのが、8月6日にヘイドックで行われた7頭立てのハンデ戦(芝6F)で、ファンの評価はオッズ34倍の5番人気と低かったが、管理調教師のリサ・ウィリアムソンは、そこそこの期待をもって、このレースに臨んだという。

 ちなみに、普段は距離5Fのレースを中心に走っている同馬を、ここでは距離6Fのレースに使ったのは、馬主グループの一員であるリック・ヒース氏の示唆があったゆえであった。

 前走に続いて、女性騎手エリカ・パーキンソンが手綱をとったセレリティは、後続を5馬身近く引き離す思い切った逃げを敢行。ゴール前で、既に6勝を挙げているダンディーズゴールド(牝7、父ダンディーマン)に迫られたものの、これを1.1/4馬身しのいで逃げ切り勝ち、デビュー106戦目にして、遂に待望の初勝利を挙げることが出来た。

「感激で、言葉もありません」と語ったのは、ウィリアムソン調教師だ。

「諦めなくてよかった。おとぎ話が本当に起きたような気持ちです」。

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合田直弘

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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