【札幌記念AI予想】脚質と実績がカギ!? AIが推す伏兵は波乱を演出できるか

2021年08月16日(月) 18:00

初の重賞タイトルを獲得したロータスランド(撮影:武田明彦)

netkeibaにある膨大な競走成績を人工知能によって機械学習するAiエスケープを開発したAIマスター・Mと、レースデータの分析を専門とする競馬評論家・伊吹雅也による今週末のメインレース展望。コンピュータの“脳”が導き出した注目馬の期待度を、人間の“脳”がさまざまな角度からチェックする。

(文・構成=伊吹雅也)

9年連続で単勝1番人気馬が敗れている

AIマスターM(以下、M) 先週はサマーマイルシリーズ第3戦の関屋記念が行われ、単勝オッズ9.7倍(4番人気)のロータスランドが優勝を果たしました。

伊吹 本当に力をつけていますね。格上挑戦の身で米子Sを快勝したのには驚きましたが、今回はもともと十分にチャンスがあると思っていました。

M これでサマーマイルシリーズの獲得ポイントは20となりました。2位のアンドラステが11、3位タイのカテドラルとカラテが5ですから、アンドラステが京成杯AHを勝たないと逆転できません。

伊吹 仮にロータスランドが京成杯AHを使ったら、完走するだけで逆転の目はなくなりますね。シリーズチャンピオンはほぼ確定と言って良いでしょう。

M ロータスランドは4歳馬ですが、3歳時に1走しかできなかったこともあり、まだキャリア10戦。今後が楽しみですね。

伊吹 まだまだ伸びしろはあると思います。父のPoint of Entryはロベルト系種牡馬で、Dynaformerの産駒。日本に輸入される馬がそれほど多くない血統で、将来性を読みづらい点も逆に魅力的です。

M 今週の日曜札幌メインレースは、真夏の大一番として親しまれている古馬GIIの札幌記念です。昨年は単勝オッズ3.7倍(2番人気)のノームコアが優勝を果たしました。

伊吹 2019年のヴィクトリアMを勝った後はずっと1マイル以下のレースに出走していて、2000mのレースを使うのは久々だったのですが、危なげなく差し切りましたね。

M 昨年末には香港Cを勝って、有終の美を飾りました。

伊吹 今年も中長距離戦線のトップホースが参戦予定ですし、楽しみにしていた方が多いのではないかと思います。

M GIIの定量競走ですし、やはり基本的には堅く収まると見ておいた方が良いのでしょうか。

伊吹 過去10年の単勝人気順別成績を見ると、単勝1番人気馬は3着内率こそ80.0%に達していたものの、わずか1勝にとどまっていました。

M 思ったよりも勝ち切れていませんね。

伊吹 単勝1番人気の支持に応えて優勝を果たしたのは、2011年のトーセンジョーダンが最後。つまり“9連敗中”という言い方もできるわけです。

M とはいえ、超人気薄が上位に食い込んだ例はそれほど多くありません。

伊吹 単勝7番人気以下の馬は優勝例なしで、3着内率も6.0%にとどまっています。ちなみに、単勝9番人気以下の馬は2011年以降[0-1-1-61](3着内率3.2%)でした。

M 高額配当を狙うのは難しいが、妙味ある配当で決着する可能性は十分にある――といったところでしょうか。

伊吹 その通りですね。

M そんな札幌記念でAiエスケープが指名した特別登録時点の注目馬は、トーラスジェミニです。

伊吹 おおっ、ちょうど手頃な伏兵を挙げてきましたね。

M 前走の七夕賞を快勝していて、ある程度は注目を集めそうですが、ソダシやラヴズオンリーユーなど、何頭かの実績馬にはこの馬より多くの支持が集まると思います。

伊吹 ただ、先行力の高い馬ですし、展開に恵まれそうという理由で狙っている方も多いんじゃないでしょうか。

M 札幌芝2000mはゴール前の直線が短いコース。やはり、先行有利と思っておいた方が良いですか?

伊吹 そんなことはありません。過去10年、かつ札幌芝2000mで施行された年(2011〜2012年・2014〜2020年)に限ると、前走で先行していた馬は期待を裏切りがちです。

M むしろ差し有利と考えた方が良さそうですね。

伊吹 2020年も単勝オッズ1.9倍(1番人気)の支持を集めていたラッキーライラックが3着に敗れてしまいました。3着以内馬27頭のうち21頭は上がり3ハロンタイムも出走メンバー中3位以内でしたし、先行力の高さを活かしたいタイプは強調できません。

M レースの傾向を見る限りだと、トーラスジェミニの脚質はウィークポイントなんですね。

伊吹 もちろん、例年とはまったく様相の異なる、先行有利な展開になる可能性もあります。問題はその確率がどれくらいなのか。私はあまり高くないと思うのですが……。

M 実績についてはどうでしょう。前走で重賞ウイナーの仲間入りを果たしましたし、2走前の安田記念でも5着に健闘していますが。

伊吹 ……うーん。これもちょっと微妙なところですね。ここ3年の3着以内馬9頭は、いずれも“JRA、かつGIのレース”において3着以内となった経験があった馬。過去10年まで集計対象を広げても、ビッグレースで馬券に絡んだことのない馬はやや安定感を欠いています。

M さすがに好走率の差は大きいですね。

伊吹 特別登録を行った馬のうち“JRA、かつGIのレース”において3着以内となった経験がある馬は6頭。例年より実績馬が少ないわけでもない以上、私としては高く評価できません。

M なるほど。ちなみに、ビッグレースで馬券に絡んだことがない馬を比較する際は、どんな点に注目すべきだと考えていますか? 好走例はそれなりにあるので、オッズ次第では狙う手もあるかと思うのですが。

伊吹 “JRA、かつGIのレース”において3着以内となった経験がなかったにもかかわらず3着以内となった12頭のうち8頭は、前走が函館記念でした。なお、そのうち前走の上がり3ハロンタイム順位が5位以内だった馬は、実績馬に見劣りしないくらいの好成績を収めています。

M トーラスジェミニは前走が七夕賞。この傾向からも強調できないということですね。

伊吹 いや、そんなことはないと思いますよ。前走が七夕賞だった馬は過去10年で2頭しかいませんし、ついでに言うと前走が小倉記念だった馬も1頭だけ。「前走がサマー2000シリーズ対象レース、かつその前走で出走メンバー中上位の上がり3ハロンタイムをマークしていれば善戦は可能」と解釈するのも、決して無理筋ではありません。

M トーラスジェミニの七夕賞は上がり3ハロンタイム順位が5位タイでした。

伊吹 脚質や実績が強調できないとはいえ、ここ2戦が良い内容だったのは事実ですし、安易に切るべきではないと思います。

M 何と言っても、サマー2000シリーズの獲得ポイントランキングで首位に立っている馬ですからね。

伊吹 脚質に関しては展開次第ですし、Aiエスケープが注目馬に挙げてきたということは、実績馬との力関係もあまり心配しなくて良い可能性がありますね。重いシルシを打つつもりはまったくありませんが、結果を見るのが楽しみな一頭です。

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伊吹雅也

競馬評論家。JRAの公式ホームページ内「今週の注目レース」にて“データ分析”のコーナーを、TCK(東京シティ競馬)の公式ホームページ内「分析レポート」にて重賞競走のデータ分析を担当しているほか、グリーンチャンネル、JRAのレーシングプログラム、『週刊アサヒ芸能』、『競馬王』などさまざまなメディアを舞台に活動している。主な著作に『WIN5攻略全書 回収率150%超!“ミスターWIN5”のマインドセット』、『コース別 本当に儲かる騎手大全』シリーズ、『コース別 本当に儲かる血統大全』シリーズ、『ウルトラ回収率』シリーズ(いずれもガイドワークス)など。

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