「敷地外からの見学やめて」見学中止中のノーザンレイクでの出来事

2021年08月17日(火) 18:00

第二のストーリー

昨年7月、小さなパドックでの放牧から始まったノーザンレイク(提供:ノーザンレイク)

牧場見学の9箇条+α

 昨年7月半ばに北海道新冠町にオープンした引退馬が暮らす牧場・ノーザンレイク。JRAで厩務員経験のある川越靖幸が代表を務め、筆者も手伝いをしている。2人の愛馬であるキリシマノホシと芦毛ちゃん(事情があって馬名を出せない)の2頭から始まり、9月10日に預託馬タッチノネガイ(牝19)が仲間に入り、10月20日には認定NPO法人引退馬協会所有の元種牡馬のプリサイスエンド(セン23※当時)が加わった。

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扇風機にあたるタッチノネガイ(提供:ノーザンレイク)

 ところが今年3月18日、プリサイスエンドは病のために急逝。再び牝馬3頭に戻った。だが6月16日にプリサイスと同じ引退馬協会所有のメイショウドトウとタイキシャトルが移動してきて、7月1日にはタッチノネガイの娘で「笠松の鉄の女」と呼ばれた預託馬のタッチデュール(牝12・通算成績171戦17勝、地方重賞4勝)が、競走馬引退後しばらく過ごした滋賀県から馬運車に揺られて無事に到着。これで管理馬は6頭となり、一気に賑やかになった。

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「笠松の鉄の女」と呼ばれたタッチデュール(提供:ノーザンレイク)

 賑やかになったのは嬉しいことではあるが、メイショウドトウとタイキシャトルというGIホース2頭を預かるのは、緊張感がある。また2頭ともファンも多い。シャトルはウマ娘で実装されていて、そこからのファンもついてきている。ドトウも8月11日に実装されたばかりで、今後さらに新しいファンが増えそうだ。現在は新型コロナ感染拡大もあり、しばらく見学中止にしているが、見学再開した折にはどのようにしたらトラブルなくスムーズにできるだろうと、日々考えていた。

 そんな最中のお盆休みのある日、牧場の外に車が1台停まっているのに気付いた。ちょうどドトウとシャトルを放牧地から集牧しようとしていた時だった。多分2頭のファンだろうなと思いながら、とりあえず馬を馬房に戻した。ほどなくして車はいなくなった。

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のんびりと過ごすタイキシャトル(提供:ノーザンレイク)

 それ以前からも見慣れない車が通ることもあり、牧場入口近くにほんの少しの時間だけ停車して去るというのが何度かあったので気をつけてはいた。だが敷地内に無断で入ってくるわけでもないし、注意すべきケースなのかどうか正直迷いもあった。だが翌々日に起きたケースは、少し違っていた。この出来事は引退馬協会にも相談し、協会の方でもSNSで注意喚起することになり、当方でもまずはTwitterで顛末をかいつまんで説明して注意喚起を行った。すると一時リツイート数が全国13位、コメントや引用リツイート数も相当数にのぼり、かなり話題となってしまった。

 だが急いでTwitterに上げたために、書き忘れや思慮に欠けた部分も正直あり、付け足しや訂正をしたいと思いながらも、牧場作業や原稿など仕事が山積みで手が回らなかったため、ここで改めて説明をさせてもらいたい。

 あの日、家の中で原稿を書いていると、外で作業をしていた川越から、牧場の外に車がいるとLINEがあった。見に行くとその車はいなくなっていた。しばらくして写真を撮らせてほしいという人が来ていると、川越から連絡があった。ファン対応はもっぱら私がしていたので急いで牧場入口に向かい「1人特例を許すわけにはいかないので、見学再開したらいらしてください」といった内容を説明をしたら、「申し訳ありません」と戻っていった。車は牧場入口から離れた場所にあったのはわかったのだが、こちらは断ったわけだし、すぐに帰るだろうと思ってそのまま家に入った。

 しばらくして車を停車した場所が近隣の牧場の私有地であることに気付いた川越から電話がきた。先ほどなぜ車を停めていた場所をちゃんと確認しなかったのだろうと、自分を呪いながら慌てて外に出た。その場所は近隣の牧場の採草地で、つい1か月半ほど前に重機で草を刈り牧草ロールを作っていた。ただ放牧地ではないので柵は回しておらず、もしかすると野原だと勘違いしたのかなとも考えたが、草を刈った後で草丈は短く、整備されている感があり、やはりその辺の野原には見えづらい。車から写真を撮影しているかもしれないと思い、とりあえずドトウとシャトルを急いで厩舎に戻した。いざ注意をしに行こうとふと目をこらすと、既に近隣の牧場の軽トラックがその車のそばにいた。どうやらファンに注意をしているようだ。やがて車は去って行った。

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草を食むメイショウドトウ(提供:ノーザンレイク)

 私たちは完全に後手後手に回っていた。もっと早く私有地に停めていることに気付いていれば…、馬を入れるより先に注意をしていればこんなことにはならなかった…。後悔しても仕方ないので、近隣の牧場の方にひたすら謝った。その方によると、私有地に車が停まっていると別の牧場から連絡を受けたそうだ。近隣を巻き込んでしまった…。顔が青ざめた。「ドトウやシャトルを見られなかったからと、ウチの馬に触れても困る」とその方は心配していた。確かに道路際の柵のあたりまでその牧場の馬が来ていることがあるので、私も気にはなっていた。「放牧している馬を脅かさないよう徐行して走行すること、決して触らないこと(防疫上の問題もある)」牧場見学再開の前に、そのあたりも周知徹底しなければならない。

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右側の草地の奥に車が停められていた(提供:ノーザンレイク)

 ではなぜファンの方が私有地に車を停めてしまったのか。それはノーザンレイク周辺の道が、車2台行き交うのが難しいほど狭いからだと想像する。そこで1つお願いしたのは、見学を再開しても決して牧場の敷地外には車を停めないでほしいということだ。(奥にも牧場があり、重機やトラック等が行き来していて、通行の妨げにもなる)もし約束の時間より早く着きそうな場合は、他の場所(道の駅など)で時間調整をしていただければと思う。10分程度なら、牧場敷地内に入ってきてもらって構わない。

 ただこれはノーザンレイクだけの問題ではない。道路が広かろうが狭かろうが、敷地外に車が停車し、そこからこちらの写真を撮影されたとしたら、誰でも気持ちの良いものではないだろう。先週のこのコラムでも書いたが、牧場は観光施設ではない。特に生産牧場はそうだ。ノーザンレイクは観光牧場ではないが、有名馬も預かっており、平常時なら見学者も受け入れているから、微妙な立ち位置だ。だが個人の預託馬もいるので、先週のコラムで紹介した牧場見学の9箇条をしっかり守って見学をしていただきたい。(牧場見学の9箇条※外部サイトに移動します)

 あと1つ、思慮に欠けた部分があったので謝りたい。Twitterにハッシュタグで「ウマ娘」と記載したことだ。これはウマ娘ファンの方にも見学マナーについて知ってほしい、考えてほしいという思いでしたことだったが、敷地外に車を停めた方がウマ娘ファンだったと多くの方に勘違いさせてしまったのはこちらの大きなミスだ。(ウマ娘ファンか否かは、確認していないので不明)そういう捉え方をされてしまうということに想像が及ばなかった私が完全に悪い。本当に申し訳ない。今後はそういうことがないよう注意を払ってSNSを使用する所存だ。

 今回は見学者マナーの件に字数を割いたが、次回はメイショウドトウやタイキシャトルなど馬たちの近況について、お伝えする予定だ。

(つづく)


▽ 認定NPO法人引退馬協会

https://rha.or.jp/index.html

▽ ノーザンレイクTwitter

https://twitter.com/NLstaff

▽ 競走馬のふるさと案内所

https://uma-furusato.com/

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佐々木祥恵

北海道旭川市出身。少女マンガ「ロリィの青春」で乗馬に憧れ、テンポイント骨折のニュースを偶然目にして競馬の世界に引き込まれる。大学卒業後、流転の末に1998年優駿エッセイ賞で次席に入賞。これを機にライター業に転身。以来スポーツ紙、競馬雑誌、クラブ法人会報誌等で執筆。netkeiba.comでは、美浦トレセンニュース等を担当。念願叶って以前から関心があった引退馬の余生について、当コラムで連載中。

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