白毛のファミリーの活躍と熊本産馬のJRA重賞初制覇

2021年08月23日(月) 18:00

先週の血統ピックアップ

・8/22 札幌記念(GII・札幌・芝2000m)

 3コーナーで先頭に立ったソダシが後続の追撃を寄せ付けずそのまま押し切りました。ブラストワンピースが向正面でマクって上昇したとき、2番手追走のソダシは呑み込まれまいと抵抗し、ペースが一気に上昇しました。並の馬であればゴールまでもたないところですが、垂れずに先頭を譲らなかったのは、この馬らしい心肺機能の高さと闘争心ゆえでしょう。

 スパっと切れる脚はありませんが、先へ行っての粘り強さは格別です。このあたりは父クロフネ、母の父キングカメハメハの強みといえます。母ブチコはユニコーンS5着馬。近親にメイケイエール(チューリップ賞、ファンタジーS、小倉2歳S)、ハヤヤッコ(レパードS)、ユキチャン(関東オークスなど重賞3勝)などがいます。シラユキヒメにさかのぼる白毛のファミリーはこのところ目覚ましい活躍ぶりです。古馬トップクラスを相手に2000m戦を勝ったので、秋華賞は好走必至でしょう。

・8/22 北九州記念(GIII・小倉・芝1200m)
 好位の外を追走したヨカヨカが直線で力強く伸び、初の重賞タイトルを獲得しました。「スクワートルスクワート×デインヒルダンサー」という組み合わせの九州産馬で、熊本県の本田土寿さんの生産馬です。熊本産馬のJRA重賞制覇は初めてです。

 父スクワートルスクワートは現役時代にアメリカのスプリント路線で活躍し、ブリーダーズCスプリントなどを勝って米最優秀スプリンターに選出されました。芝・ダート兼用のスピードタイプで、芝は1000〜1200mがベスト。ジェイケイセラヴィ(キーンランドC-2着、アイビスSD-2着)、シャウトライン(バーデンバーデンC)などを出していますが、JRA重賞制覇はこれが初めてです。

 母の父デインヒルダンサーは英愛リーディングサイアーとなった経験を持つマイラー型種牡馬で、母の父としてはテルツェット(ダービー卿CT、クイーンS)が代表格です。スクワートルスクワート産駒はアメリカ血統にしては成長力があるので、今後も楽しみです

今週の血統注目馬は?

・8/28 ルスツ特別(1勝クラス・札幌・芝2600m)

 札幌芝2600mと相性のいい種牡馬はディープインパクト。連対率31.3%と素晴らしい成績を挙げています。2011年以降、当コースで産駒が10走以上した23頭の種牡馬のなかで第1位。当レースにはタイミングハートが登録しています。タッチングスピーチ、サトノルークス、ムーヴザワールドの兄弟にあたる良血で、母の父がサドラーズウェルズだけにスタミナ面の信頼性があります。

今週の血統Tips

 2020年の九州各県の血統登録頭数は以下のとおりです。

・鹿児島県……25頭

・熊本県………24頭

・宮崎県………7頭

 その昔、九州で誕生した活躍馬の多くは鹿児島県産でした。最近は鹿児島県と熊本県の血統登録頭数が拮抗するようになっています。その流れのなかでヨカヨカが誕生したという見方ができるでしょう。同い年にはルクシオンという熊本県産馬(父エイシンフラッシュ/ストームファームコーポレーション生産)がおり、昨年秋の福島2歳Sを勝ちました。しかし、残念ながら事故死してしまいました。

 九州産馬の血統を見ると、一般的な日高の生産馬とほとんど見分けがつかないレベルにまで上昇しています。九州繋養の種牡馬だけでなく、北海道繋養の種牡馬にも多数交配しています。北海道産馬に比べて九州産馬の生産頭数は100分の1に満たないので、そのあたりの不利はもちろんありますが、血統レベルが遜色ないものになれば、育成は温暖な地域のほうがアドバンテージがあるので、一過性の現象にとどまらず、今後も継続して九州から活躍馬が出てくるのではないかと思います。

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栗山求

netkeibaでもおなじみの血統評論家・栗山求氏が血統の面白さを初心者にもわかりやすくレクチャー。前週の振り返りや、週末行われるレースの血統的推し馬、豆知識などを通して解説していきます。 関連サイト:栗山求の血統BLOG

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