ダービーグランプリへ

2021年09月07日(火) 18:00

世代レベル高い今年は菅原勲厩舎の2枚看板に期待

 5日に盛岡競馬場で行われた岩手三冠の最終戦、不来方賞。単勝4倍以下、3連複170円という人気が集中した3頭の決着ではあったが、3番人気マツリダスティールが大差の圧勝となった。

 逃げ馬不在というメンバーで、2番枠のマツリダスティールが先頭に立ち、直後にゴールデンヒーラー、リュウノシンゲンがつけ、人気3頭が前を固める展開。3コーナーからマツリダスティールが手応え十分のまま、ライバル2頭との差を広げにかかると、鞍上の村上忍騎手は直線でもうしろを確認しながら軽く追っただけ。4コーナーまで2馬身ほどの差で抵抗していたゴールデンヒーラーに2秒6の大差をつけて楽勝。昨年12月以降重賞5連勝で岩手三冠のかかったリュウノシンゲンは3コーナーから追い通しとなり、ゴールデンヒーラーから5馬身差の3着だった。

 残念ながら三冠とはならなかったリュウノシンゲンの敗因はいくつか考えられる。二冠目の東北優駿から約3か月ぶりの実戦で、馬体重マイナス11kg。盛岡コースは昨年11月以来で、厩舎のある水沢から久々の輸送競馬だったことなど。手応え一杯でも4着馬には4馬身差をつけており、これが実力ではない。ダービーグランプリへ向けて巻き返しを期待したいところ。

 今回、着差が開く結果になったとはいえ、この3強は、ここ何年かの岩手では世代レベルがかなり高い印象だ。

 その伏線は2歳時からあった。リュウノシンゲンの2歳時は、年明け1月2日の金杯まで含めると9戦7勝。負けたのは、芝の若鮎賞での3着と、北海道の2頭に先着された南部駒賞だけ。

 ゴールデンヒーラーは、北海道と交流の知床賞を勝ち、グランダム・ジャパン2歳シーズンの一戦で全国交流のプリンセスカップも勝った。知床賞は、重賞に格上げとなった2012年以降昨年まで8年連続で北海道からの遠征馬が制していた岩手劣勢という状況での勝利。プリンセスカップも地元馬が勝ったのは4年ぶりだった。

 そして2歳8月の芝重賞、若鮎賞を勝ったのがマツリダスティールで、このとき2着がゴールデンヒーラー、3着がリュウノシンゲンだった。マツリダスティールは、その後、芝の全国交流重賞ジュニアグランプリも勝利。このレースは9月という時期的に北海道の馬が強く、地元馬の勝利は、やはり4年ぶりのこと。マツリダスティールの2歳時は、盛岡の芝に限れば4戦4勝。その後、中央の芝にも2度挑戦した(京王杯2歳S・10着、白百合S・7着)。

 3歳になって、リュウノシンゲンは地元馬相手のダートでは無敗のまま二冠を制覇。ゴールデンヒーラーは岩手版オークスのひまわり賞で10馬身差の圧勝劇を見せた。

 一方、マツリダスティールは3歳になっても芝を中心に使われたが勝ちきれないレースが続いていた。3歳初勝利となったのが8月、盛岡ダートのイーハトーブマイルで、直線後続を突き放し7馬身差の圧勝。ダートでこの強さには陣営も驚きだったようだ。マツリダスティールには、9月28日のOROカップであらためて芝を目指す選択肢もあったが、イーハトーブマイルから中1週で臨んだ不来方賞が、冒頭のとおりの大差圧勝となった。

 三冠を阻んだマツリダスティールも、阻まれたリュウノシンゲンも、ともに菅原勲厩舎の所属。マツリダスティールの進む道は、これでダートとなったようで、目標は10月3日のダービーグランプリ。リュウノシンゲンも立て直してダービーグランプリへ向かうと思われる。

 ダービーグランプリが『3歳秋のチャンピオンシップ』のファイナルとなった2017年以降の過去4年、岩手所属馬は2018年にチャイヤプーン、2020年にフレッチャビアンカが制している。今年のダービーグランプリでは菅原勲厩舎の2枚看板の活躍が期待できそうだ。

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斎藤修

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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