売れ行きが好調なキーンランド・セプテンバー・イヤリングセール

2021年09月22日(水) 12:00

来年の日本ではジャスティファイのブームが起きる可能性がありそう

 アメリカのケンタッキー州で行われている、キーンランド・セプテンバー・イヤリングセールの売れ行きが好調だ。

 13日・月曜日に始まったセールは現在も進行中(最終日は24日・金曜日)だが、19日・日曜日のブック3が終わった段階で、総売り上げが2億7888万3000ドルに到達。コロナウイルス感染拡大の真っ只中での開催となった2020年の総売り上げ2億3845万4300ドルを、開催を5日残した段階で既に上回っている。フォーマットが異なるので単純な比較はできないのだが、平常時であった2019年の数字と比較すると、6日目が終わった段階での総売り上げは3.2%のダウン。平均価格の23万8565ドルは13.8%のダウンで、中間価格の18万ドルは10%のダウンとなる。

 一方、19年は28.65%だった主取り率が、今年は27.53%と、わずかではあるが改善されている。2019年のマーケットが近年にない大盛況であったこと、人の移動制限が緩和されつつあるとはいえ、制約が残っていることを鑑みると、反転している一般景気同様に、馬産業における景気も回復しつつあるとの見方が広がっている。

 主催するキーンランド社は、購買者の層が非常に分厚いことが、好況を支える主な要因と分析している。

 最高価格馬は、ブック2の初日(15日)に上場番号612として上場された、新種牡馬シティオブライトを父に持つ牡馬だった。G1トリプルベンドS(d7F)、G1ペガサスワールドC(d9F)など、7Fから9Fで4つのG1を制した後、19年にレーンズエンドファームで種牡馬入りしたのが、シティオブライトだ。

 同じ年に種牡馬入りしたのが18年の北米3冠馬ジャスティファイで、同馬の種付け料が15万ドルだったのに対し、シティオブライトの初年度の種付け料は、17年の2歳牡馬チャンピオン・グッドマジック、G1BCジュヴェナイルターフ(芝8F)やG2UAEダービー(d1900m)を制したメンデルスゾーン、17年の3歳牡馬チャンピオン・ウエストコーストらと横並びで、北米におけるこの年の新種牡馬の中では横並びで2番目の高値となる3万5千ドルだった。

 612番の牡馬は、母アンカレッジがオークストライアルの1つであるLRブッシャーS(d8.5F)の2着馬。上場馬の半兄に、G3ベンアリS(d9F)S2着馬チップリーダーがいる。決して悪い血統ではないが、極上というほどの牝系を背景に持つわけではなく、つまりは、馬の良さと、新種牡馬である父への期待が、価格を沸騰させたと見てよさそうだ。購買したのは、ウッドフォード・レーシング、タラ・レーシング、ウェスト・ポイント・サラブレッズの3社が手を組んだパートナーシップだった。

 前述したように、依然として渡航制限の残る中、複数の日本人関係者が現地に飛び、活発な購買を見せている。確認できている、日本人と見られる購買は、ブック3が終わった段階で29頭にのぼっている。日本人購買馬の中で最も高額なのは、上場番号161番の母ステイクラッシーサンディエゴの牡馬(父ジャスティファイ)で、95万ドルだった。本馬の3/4姉に、G2メイトロンS(d6F)など3重賞を制した他、G1デルマーデビュータント(d7F)で2着となったプリティーエヌクールがいて、叔父にG1アルフレッドGヴァンダービルトハンデキャップ(d6F)勝ち馬ショーンアヴェリーがいるという、活気ある牝系の出身だ。

 前述したように、上場番号161番の父ジャスティファイもまた、今年の1歳が初年度産駒の新種牡馬である。18年に無敗の3歳3冠を達成したジャスティファイの初年度産駒は、昨年北米で開催された当歳市場でも、9頭が平均価格42万1738ドルで購入され、マーケットでも高い評価を受けていた。

 さらに北海道のセレクトセールでも、昨年の当歳セッションで母ノットナウキャロラインの牝馬が8000万円で、今年の1歳セッションで母ジペッサの牡馬が2億円で、そして今年の当歳セッションで母カレドニアロードの牡馬が1億3500万円で購買されておりと、ジャスティファイ産駒は日本でも極めて高い評価を受けている。

 そしてキーンランドでも、ブック3を終えた段階で確認された29頭の日本人購買馬のうち、上場番号161番を含めて、実に9頭がジャスティファイ産駒となっている。さらに言えば、このうち7頭は、キーンランド社が公表している購買者の欄には、Hideyuki Moriの名が記されている。Mr.Moriは地元紙のインタビューに答えて、「たくさんのジャスティファイ産駒を見ましたが、気に入る馬たちばかりでした。体の線が美しく、動きも良い。体形や動きから、日本の芝に向いているように思います」とコメントしている。来年は日本で、ジャスティファイのブームが起きる可能性がありそうだ。

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合田直弘

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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