【古川奈穂騎手(3)】矢作調教師とアメリカのセリへ「すべてに感謝の気持ちを忘れない騎手でいたい」

2021年09月26日(日) 18:01

古川奈穂騎手

▲KEENELAND競馬場、日米の競馬文化の違いも体感 (提供:古川奈穂騎手)

藤田菜七子騎手以来のJRA女性騎手として、今年3月にデビューした古川奈穂騎手(栗東・矢作厩舎)。初勝利から4週連続勝利を挙げるなど、順調な騎手人生を歩み始めていた矢先、左肩の治療のために長期休養へ。5月に手術をし、リハビリとトレーニングを経て、10月9日(土)にレース復帰することが決まりました。

そんな古川騎手の復帰への道を追う短期連載。今回のテーマは師匠と共に参加した、アメリカの「KEENELAND SEPTEMBER YEARLING SALE」について。“馬の街”での体験が、古川騎手に与えた影響とは?

アメリカ滞在中に21歳になりました!

 こんにちは。古川奈穂です。

 1週間のアメリカ滞在を終え、無事に帰国しました! 今回は、ケンタッキー州のレキシントンで開催された「KEENELAND SEPTEMBER YEARLING SALE」に参加。雨が降った日が1日だけありましたが、その雨も午前中のみで、あとは晴れて暑い日が続きました。

 私事ですが、アメリカ滞在中に21歳の誕生日を迎えました。日本時間とアメリカ時間で二度もたくさんの方に祝っていただき、今までにない特別な誕生日になりました!

 レキシントンはまさに「馬の街!」という感じで、空港から至るところに馬の置物や馬の写真があり、車で走れば道路の両脇に広大な牧場が広がり、たくさんの馬たちが思い思いに過ごしていました。私はといえば、移動中は馬を探してずっとキョロキョロ(笑)。気づけば写真ばかり撮っていました。

 セールが始まる2日前から「馬見」を開始。1日100頭近い馬を見て、狙いの馬を絞っていきました。

古川奈穂騎手

▲師匠の矢作調教師と共に馬見 (提供:古川奈穂騎手)

古川奈穂騎手

▲セリ会場の熱気を肌で感じてきました (提供:古川奈穂騎手)

 暑かったこともあり、厩舎を移動しながらの馬見は想像以上に大変でしたが、馬見から参加させていただくことで、その大変さを痛感。馬たちが馬主さんの元に渡り、厩舎に入厩してくる前から、こんなにもたくさんの方々の想いが詰まっているのだと実感しました。

 セリの会場はKEENELAND競馬場に併設されていたので、競馬場の馬場や建物も見てきました!

 競馬場は一般開放されていて、コースを使用して行う朝の調教もスタンドから見ることができ、お子さん連れの方や朝の散歩途中に立ち寄る方など、さまざまな方が調教を見ながら話している光景は、レキシントンに住む人々にとって、そこに“競馬”があるのは当たり前の日常であることを顕著に表していると感じました。

 競馬場の馬場は“土”。触っても歩いても硬さを感じるまさに“土”で、日本のダートとはまったく違うものでした。JRAの競馬場とは違い、ダートコースの内側に芝コースがあり、日本とアメリカの競馬文化の違いも感じました。

 セリの後には種牡馬見学へ。広大な敷地のなかにお城のような造りの厩舎があり、各馬房に敷かれた寝藁はいかにもフカフカで、まるで最上級ベッドのよう(笑)。馬たちはそこでのんびりと生活していました。

 Gun RunnerやAuthenticなどの名馬も間近で見学させていただきました。引退して種牡馬となった今もなお、その馬体にはオーラがあり、迫力もありました。体つきこそ現役のころとは違いますが、強い馬の体の造りを学ぶいい経験になりました。

古川奈穂騎手

▲名馬Authentic、種牡馬となった今もなお“オーラ”が (提供:古川奈穂騎手)

 今回落札された馬たちは、この後日本に渡り、さまざまなトレーニングを受けたのち、トレーニングセンターの厩舎に入厩。ゲート試験を突破し、追い切りを重ね、晴れてデビューとなります。そのひとつひとつの過程にたくさんの方々が携わっていて、馬自身がすべてを乗り越えた先に競馬があり、そのおかげで騎手としてレースに騎乗させていただける。

 その長い道のりを思うと、頑張ってくれている馬たち、関係者の皆さま、すべてに感謝の気持ちを忘れない騎手でいたいと改めて思います。また、レースの瞬間だけではなく、牧場のことや引退後のことについても、競馬に携わるひとりの人間として、もっと考えていきたいなと思いました。

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古川奈穂

2000年9月13日、東京都生まれ。藤田菜七子騎手以来、5年ぶりのJRA女性騎手として今年3月にデビュー。 所属する矢作芳人厩舎の管理馬、バスラットレオンで3月に初勝利。その後、デビュー4週連続で勝利するなど順調な騎手人生を歩み始めたが、4月末に行われたレース後、左肩に違和感があったことから治療のために長期休養に入ることを発表。現在は、秋からの復帰に向けて準備を進めている。

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