日本馬が出走予定のブリーダーズカップ展望その2

2021年10月13日(水) 12:00

今週はBCフィリー&メアターフ、BCターフ、BCマイルの見どころをご紹介

 先週に引き続き、今年はカリフォルニア州のデルマーを舞台に11月5日と6日の両日にわたって開催されるブリーダーズCから、日本調教馬が出走する可能性があるレースの、現時点での情勢分析をお届けしたい。

 4月のG1クイーンエリザベス2世C(芝2000m)に続く、海外G1・2勝目を狙うラヴズオンリーユー(牝5、父ディープインパクト)は、いぜんとしてG1・BCフィリー&メアターフ(芝11F)とG1・BCターフ(芝12F)の両睨みと聞いている。

 牝馬限定のG1・BCフィリー&メアターフで、地元北米勢の代表格と目されているのが、ビル・モット厩舎のウォーライクゴッデス(牝4、父イングリッシュチャネル)だ。

 小柄で成長が遅かったため、デビューが3歳秋にズレ込んだ同馬。2戦2勝の成績で3歳時を終えると、今季初戦となったガルフストリームパークのG3ザヴェリワンS(芝9.5F)で5着に敗れて連勝が止まったものの、同じくガルフストリームパークを舞台とした次走のG3オーキッドS(芝11F)を制し、重賞初制覇。そこから、この馬の快進撃が始まった。

 続くキーンランドのG3ビーウイッチS(芝12F)を3.3/4馬身差で制して重賞連勝を飾ると、サラトガのG2グレンズフォールスS(芝12F)も3.1/4馬身差で快勝。さらに、9月4日に同じくサラトガで行われたG1フラワーボウルS(芝11F)では、末脚が武器のこの馬が道中3〜4番手という好位で競馬をし、危なげのないレースぶりで2.1/4馬身差の快勝。重賞4連勝を飾るとともにG1初制覇を果たし、北米牝馬芝中距離路線の最前線に立つことになった。

 この馬、1歳秋にキーンランド9月1歳市場に上場されるも、わずか千ドル(約11万円)でも買い手がつかずに主取りになった経歴を持つ。その後、2歳6月にOBS2歳市場に上場され、ここで3万ドル(約330万円)で購買されているが、エリートたちとははっきりと一線を画す雑草育ちで、こういう出自の馬がブリーダーズCで有力馬の一角に浮上したことを含めて、話題となっている1頭である。

 芝11Fという競走条件ゆえ、ブックメーカーの前売り上位には、今年G1・3勝のスノーフォール(牝3、父ディープインパクト)、通算G1・5勝のラブ(牝4、父ガリレオ)といった欧州調教馬たちが名を連ねている。だが、スノーフォールもラブも、今週土曜日にアスコットで行われる主要競走にも登録を残しており、出否は流動的だ。

 ラヴズオンリーユーがもう1つの標的であるG1・BCターフに廻った場合、倒さなくてはならない最大の敵になるのが、このレース連覇を狙う愛国調教馬タルナワ(牝5、父シャマーダル)だ。昨年同様、今季も7月までお休みし、8月に始動。レパーズタウンのG3バリーローンS(芝12F)を楽勝して前年からの連勝を5に伸ばすと、次走は同じレパーズタウンのG1愛チャンピオンS(芝10F)に参戦。直線で終始外に押圧される不利を受けながら、10F路線の最強馬の1頭であるセントマークスバシリカ(牡3、父シユーニ)の3/4馬身差の2着に健闘した。

 前走のG1凱旋門賞(芝2400m)でも、勝ち馬トルカータータッソ(牡4、父アドラーフルーク)から3/4馬身差の2着に好走。現在の欧州中距離路線では、牡馬も含めてトップクラスにある実力を誇る同馬を、ブックメーカー各社はオッズ3.0〜3.5倍の前売り1番人気に推している。

 これに続く2番人気(3.5〜5.0倍)が、英国調教馬のミシュリフ(牡4、父メイクビリーヴ)だ。8月のG1インターナショナルS(芝10F56y)を6馬身差で快勝。そのパフォーマンスでレイティング127を獲得し、世界ランキング首位タイに並ぶ同馬も、今週土曜日(16日)のG1チャンピオンS(芝9F212y)に出走予定で、ブリーダーズCの出否は現段階では未定である。

 G1・BCターフを目指す北米勢の代表格が、チャド・ブラウン厩舎のドメスティックスペンディング(セン4、父キングマン)だ。

 英国産馬で、タタソールズ10月1歳市場にて30万ギニー(当時のレートで約4811万円)で米国人馬主に購買された同馬。3歳8月に、グーフォを2着に退けてサラトガダービー(芝9.5F)を制し、特別初制覇を果すと、続くG1ハリウッドダービー(芝9F)を制しG1初制覇を達成。

 今年に入って快進撃は加速し、5月にチャーチルダウンズで行われたG1ターフクラシックS(芝9F)、6月にベルモントパークで行われたG1マンハッタンS(芝10F)をいずれも快勝し、北米芝路線の最前線に立つことになった。

 同馬の前走は、8月15日にアーリントンパークで行われたG1ミスターディーS(=旧アーリントンミリオン、芝10F)で、ここではスローで逃げたトゥーエミーズ(セン5、父イングリッシュチャネル)をクビだけ捉えることが出来ずに2着となり、1年1カ月ぶりの敗戦を喫した。戦績をご覧になってもお分かりのように、10Fまでしか距離経験がなく、BCターフでは12Fへの対応もポイントになりそうだ。

 今年のブリーダーズCに参戦する可能性のあるもう1頭の日本調教馬が、3月にメイダンで行われたG1ドバイターフ(芝1800m)で2着に健闘したヴァンドギャルド(牡5)だ。目標となるのは、G1・BCマイル(芝8F)で、ここも前売り上位人気にはヨーロッパ調教馬の名が並んでいる。具体的には、8月にドーヴィルで行われたG1ジャックルマロワ賞(芝1600m)を制し、5度目のG1制覇を果たしたパレスピーア(牡4、父キングマン)や、9月にパリロンシャンで行われたG1ムーランドロンシャン賞(芝1600m)を制し、デビューから無敗の5連勝でG1初制覇を果たしたバーイード(牡3、父シーザスターズ)らに、3.5倍から5.0倍のオッズが提示されているのだが、両馬ともに16日にアスコットで行われるG1クイーンエリザベス2世S(芝8F)に登録がある。

 中でもパレスピーアは、ブリティッシュ・チャンピオンズ・デイが現役最後の1戦と言われており、現段階ではBC回避の公算大である。この路線の北米勢で、筆頭格と見られているのが、ピーター・ミラー厩舎のモーフォルツァ(牡5、父アンクルモー)だ。

 19年のG1ハリウッドダービー(芝9F)勝ち馬で、20年・21年と、デルマーのG2デルマーマイル(芝8F)、サンタアニタのG2シティオヴホープマイル(芝8F)を、いずれも連覇している。8月にサラトガで行われたG1フォースターデイヴH(芝8F)を制し、3度目のG1制覇を果たしたゴットストーミー(牝6、父ゲットストーミー)、ブラジルからの移籍馬で、10月9日にキーンランドで行われたG1キーンランドターフマイル(芝8F)を制しG1初制覇を果たしたインラヴ(セン5、父アグネスゴールド)らも、差のない実力の持ち主たちだ。

 今週のコラムでご紹介した、BCフィリー&メアターフ、BCターフ、BCマイルはいずれも、海外馬券発売対象競走となっており、詳細が決まった暁には、改めて何らかの形で展望をお届けしたいと思う。

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合田直弘

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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