ここで止まるような馬ではない超良血馬のアカイトリノムスメ

2021年10月18日(月) 18:00

先週の血統ピックアップ

・10/17 秋華賞(GI・阪神・芝2000m)

 残り100mで先頭に立ったアカイトリノムスメがファインルージュの追撃を抑え、初のGIタイトルを獲得しました。父ディープインパクトは2005年の三冠馬。母アパパネは2010年の牝馬三冠馬。古今東西、両親が三冠馬で仔がビッグレースを制した例は寡聞にして知りません。

 米三冠馬セクレタリアトと、ニューヨーク牝馬三冠馬クリスエヴァートとの間に誕生した牝馬シックスクラウンズ(「六冠」の意)が、繁殖牝馬として米GIを8勝したチーフズクラウンを産んだ例はあります。

 アカイトリノムスメはジナンボー(新潟記念-2着)、ラインベック(東京スポーツ杯2歳S-3着)の全妹で、「ディープ×キンカメ」の組み合わせはワグネリアン(日本ダービー)、デニムアンドルビー(フローラS、ローズS)などの重賞勝ち馬が出ており成功しています。母アパパネはデビューから引退までに50kg近く馬体重が増え、4歳春にはブエナビスタを破ってヴィクトリアマイルを勝っています。ここで止まるような馬ではないでしょう。古馬になってからも楽しみです。

・10/16 府中牝馬S(GII・東京・芝1800m)
 後方を追走したシャドウディーヴァが直線で外から伸び、内で粘るアンドラステをクビ差とらえました。これまでに重賞では2着が3回、3着が2回ありましたが、5歳秋にして初めて勝ちました。

 母ダイヤモンドディーバはイギリスで生まれたあとアメリカへ移動し、芝8ハロンの芝重賞を2勝しました。そのうちのひとつは勝ち時計が1分33秒21という高速決着。そうした点も評価されての導入だったと思われます。母の父Dansiliはハービンジャーの父として知られ、ヨーロッパ血統のなかでは硬い芝に向くタイプと評価されています。

 その父デインヒルを持つハーツクライ産駒はニックスで、サリオス、アドマイヤミヤビ、カテドラルなど6頭が重賞を勝っています。このパターンの配合は1600〜2000mがベスト。長い距離に向くハーツクライ産駒にしては少しスピードタイプに出る傾向があります。東京芝では[2-5-2-3]と好成績。府中牝馬Sは昨年も2着となっているので、相性のいいレースなのは間違いありません。

今週の血統注目馬は?

・10/24 元町S(3勝クラス・阪神・芝1600m)

 阪神芝1600mと相性のいい種牡馬はエピファネイア。これまでに[8-7-5-38]、連対率25.9%という好成績を挙げています。2011年以降、当コースで産駒が20走以上している81頭の種牡馬のなかで第2位です。当レースには同産駒ノルカソルカが登録しています。3月以来の実戦で仕上がり具合がカギとなりますが、昇級初戦の前走、今回と同コースで行われた武庫川Sはクビ差2着と好走。凡走の少ないタイプなので楽しみです。

今週の血統Tips

 初期のディープインパクト産駒は3000m以上のGIをなかなか勝てませんでした。血統面に不安はないにもかかわらず、2011年の菊花賞から2016年の天皇賞・春まで連敗を重ねました。しかし、同年の菊花賞をサトノダイヤモンドが勝つと潮目が変わり、現在までにのべ7頭が優勝しています。

 近年、長距離で抜群の強さを発揮したステイゴールド産駒は、3000m以上のGIを6勝し、2着は3回。ディープインパクト産駒は7勝、2着5回ですから、すでに実績面で上回っています。菊花賞は現在3連覇中。しかし、今年はダービー馬シャフリヤールがジャパンCに回り、ダービー4着馬グレートマジシャンは故障(毎日王冠が目標だったので無事でも菊花賞は出なかった可能性は高いのですが)と、大駒が菊花賞戦線から離脱して4連覇に黄信号が灯っています。

 神戸新聞杯2着馬レッドジェネシスが頼みの綱です。もう1頭、注目すべき種牡馬を挙げるとすればエピファネイア。まだ3000m以上のGIを勝った産駒はいませんが、芝2500m以上で連対率31.4%と、目を瞠る好成績を挙げています。

 2011年以降、芝2500m以上で産駒が20走以上している69頭の種牡馬のなかで第2位です。昨年のこのレースではアリストテレスが2着と健闘しました。非凡な長距離適性を伝えているので今年も注意したいところです。オーソクレース、ディヴァインラヴ、ワールドリバイバルの3頭が登録しています。

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栗山求

netkeibaでもおなじみの血統評論家・栗山求氏が血統の面白さを初心者にもわかりやすくレクチャー。前週の振り返りや、週末行われるレースの血統的推し馬、豆知識などを通して解説していきます。 関連サイト:栗山求の血統BLOG

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