【アルゼンチン共和国杯AI予想】人気次第では狙い目かも!? AIは新興勢力を注目馬に指名

2021年11月01日(月) 18:00

単勝オッズ3.4倍(3番人気)のエフフォーリアが優勝(C)netkeiba.com、撮影:橋本健

netkeibaにある膨大な競走成績を人工知能によって機械学習するAiエスケープを開発したAIマスター・Mと、レースデータの分析を専門とする競馬評論家・伊吹雅也による今週末のメインレース展望。コンピュータの“脳”が導き出した注目馬の期待度を、人間の“脳”がさまざまな角度からチェックする。

(文・構成=伊吹雅也)

波乱が起きた年は思いのほか少ない

AIマスターM(以下、M) 先週は天皇賞(秋)が行われ、単勝オッズ3.4倍(3番人気)のエフフォーリアが優勝を果たしました。

伊吹 いわゆる“三強”がそれぞれ力を出し切った、見応えのあるレースでしたね。勝ったエフフォーリアはもちろん、最内枠から大外まで持ち出して追い込んだコントレイルも、これまでとは異なる積極的な競馬でしぶとく粘り込んだグランアレグリアも、チャンピオンの称号に相応しい走りだったと思います。

M エフフォーリアはGI2勝目です。

伊吹 2021年のJRAGIは、先週まですべて異なる馬が勝っていたのですよね。今年初の年間GI2勝馬となったわけですし、年度代表馬争いも一歩リードと見て良いんじゃないでしょうか。

M 前走の日本ダービーはシャフリヤールにハナ差だけ及ばなかったものの、これで通算成績は6戦5勝。まだまだ底が見えません。

伊吹 夏を越えてさらに凄みが増しましたね。もともと先行力が高いうえ、上がり3ハロンタイムはこれまでのところすべて出走メンバー中3位以内。コースの形態が大きく異なる東京と中山でGIを制したわけですし、今後も競馬場替わりが敗因となる可能性は低いと思います。

M あとは距離への対応がどうかですね。ちなみに、次走は有馬記念を予定しているようです。

伊吹 距離が長くなる分には問題なく対応できると思いますよ。少なくとも、中山芝2500m内が合わないということはないでしょう。グランアレグリアやコントレイルをねじ伏せただけでも大したものですが、他にもチャンピオンクラスの馬は何頭かいますし、そうそう楽な競馬はさせてくれないはず。今から楽しみで仕方ありません。

M 今週の日曜東京メインレースは、名物ハンデキャップ競走として親しまれてきたアルゼンチン共和国杯。昨年は単勝オッズ5.3倍(3番人気)のオーソリティが優勝を果たしました。

伊吹 休養明けということもあって不安視する向きもありましたが、好走馬の傾向からは強調できる馬だったので、私は素直に◎を打ちました。道中3番手のポジションから直線で抜け出し、そのまま後続の追撃を封じる強い競馬。完勝だったと言って良いでしょう。

M その2020年は2着に単勝オッズ22.9倍(6番人気)のラストドラフトが、3着に単勝オッズ26.3倍(9番人気)のサンアップルトンが3着に食い込み、3連単20万2520円の高額配当決着となりました。ハンデ戦ですし、やはり積極的に人気薄を狙った方が良いのでしょうか?

伊吹 ……うーん、何とも言えませんね。昨年は波乱の決着となりましたが、基本的には上位人気馬が強いレースなんです。

M 単勝1番人気馬の好走率は微妙なところですが、単勝2〜3番人気馬が優秀な成績を収めていますね。

伊吹 ちなみに、単勝4番人気の馬も2011年以降[0-4-0-6](3着内率40.0%)とまずまず健闘していました。単勝4番人気以内の馬が2011年以降[9-7-6-18](3着内率55.0%)なのに対し、単勝5番人気以下の馬は2011年以降[1-3-4-113](3着内率6.6%)です。

M 伏兵の台頭はあまり期待できない、と。

伊吹 もちろん、ハンデキャップ競走なので「人気の盲点になっている馬を探そう」という姿勢は大切だと思います。ただ、いたずらに上位人気馬を嫌うような買い方は避けるべきでしょう。

M そんなアルゼンチン共和国杯でAiエスケープが指名した特別登録時点の注目馬は、マイネルウィルトスです。

伊吹 なかなか面白い名前が挙がってきましたね。まだ重賞で3着以内に食い込んだことはありませんが、このメンバー構成なら穴党の注目を集めそう。単勝4番人気のラインに近付いてくる可能性もあります。

M とはいえ、人気の中心ということもないはず。配当的な妙味はそれなりにあるかと。

伊吹 その通りですね。Aiエスケープの高評価を尊重しつつ、レースの傾向からこの馬の扱いを検討していきましょう。

M マイネルウィルトスは今年の3月にオープン入りを果たしたばかりですが、その直後にオープン特別の福島民報杯を制しました。この辺の実績はどう評価すべきなのでしょうか。

伊吹 私は強調材料のひとつと見ていますよ。過去10年のアルゼンチン共和国杯で好走を果たした馬の大半は、年明け以降に勝ち鞍のある馬でした。

M しばらく勝ち切れていない馬は苦戦しているんですね。

伊吹 レースにもよりますが、実績に応じた負担重量を課される分、ハンデキャップ競走は勢いのある馬が優勢という傾向になりがち。アルゼンチン共和国杯はその典型例と言えます。前走好走馬が強いとまでは言えないものの、直近のパフォーマンスを素直に評価したいところです。

M なるほど。他に明暗を分けそうなポイントはありますか?

伊吹 やはりノーザンファーム生産馬との力関係ですね。生産者がノーザンファームの馬は2011年以降[6-6-2-27](3着内率34.1%)。出走してきたら高く評価せざるを得ません。

M マイネルウィルトスはビッグレッドファームの生産馬。ちなみに、特別登録を行った16頭のうち9頭がノーザンファーム生産馬です。

伊吹 ただ、この点についてはそれほど心配しなくて良いと思います。前走好走馬に限れば、非ノーザンファーム勢もそれなりに健闘していました。

M 昨年のラストドラフトとサンアップルトンはこの条件をクリアしていませんでしたが、過去10年のトータルで見ると好走率に大きな差がありますね。

伊吹 その通り。ノーザンファーム生産馬にばかり注目が集まるようなら、あえてマイネルウィルトスのような馬を狙うのもひとつの手でしょう。

M レースの傾向からも高く評価して良さそうに思えますが、何か不安要素はありますか?

伊吹 キャリアが豊富過ぎる点ですかね。昨年の1〜3着馬はそれぞれキャリア12戦以下。過去10年まで集計対象を広げても、キャリア15戦以下の馬は3着内率が52.9%に達しています。

M この数字を見てしまうと、キャリアの浅い馬には逆らいづらいですね。

伊吹 一応、出走数が16戦以上、かつ前走の上がり3ハロンタイム順位が4位以内だった馬は[2-4-3-31](3着内率22.5%)。マイネルウィルトスは前走の内容が良かったので、大きく評価を下げる必要はないでしょう。ただ、今回はキャリア15戦以下の馬がそれなりにいますから、オッズ次第では過信禁物と見た方が良いかも。Aiエスケープが高く評価している点、56kgという負担重量、さらには馬場や枠順なども加味したうえで、妙味があるか否かを判断したいと思います。

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伊吹雅也

競馬評論家。JRAの公式ホームページ内「今週の注目レース」にて“データ分析”のコーナーを、TCK(東京シティ競馬)の公式ホームページ内「分析レポート」にて重賞競走のデータ分析を担当しているほか、グリーンチャンネル、JRAのレーシングプログラム、『週刊アサヒ芸能』、『競馬王』などさまざまなメディアを舞台に活動している。主な著作に『WIN5攻略全書 回収率150%超!“ミスターWIN5”のマインドセット』、『コース別 本当に儲かる騎手大全』シリーズ、『コース別 本当に儲かる血統大全』シリーズ、『ウルトラ回収率』シリーズ(いずれもガイドワークス)など。

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