九州大賞典3連覇とブリーダーズC

2021年11月09日(火) 18:00

3連覇したのは川田騎手の父・川田孝好厩舎のグレイトパール

 11月7日に佐賀競馬場で行われた九州大賞典。勝ったのはグレイトパールで、佐賀では年に一度しか使われない最長距離2500mの重賞3連覇となった。

 グレイトパールは、1番人気のコンカラーをぴたりとマークする3番手を追走。4番手から勝負どころで進出したタイセイレオーネとコンカラーが3コーナーで馬体を併せて先頭に立ったが、グレイトパールは直線を向くと競り合う2頭をあっという間に突き放し、2馬身半差をつけるという勝ち方も“あっぱれ”だった。

2500mの九州大賞典3連覇を達成したグレイトパール(写真:佐賀県競馬組合)

 中央で芝の新馬戦を勝ったグレイトパールは4戦目からダートに転向。500万条件(1勝クラス)から休みを挟みながら、平安S、アンタレスSまで、ダートでは圧倒的な強さで6連勝。その後、3戦連続で負けが続いた2018年秋に佐賀に移籍した。

 3戦連続で負けたとはいえまだ5歳と若く、中央のオープンクラスでもまだ十分に勝負できると思われるレースぶりで、そんなレベルの馬が佐賀に移籍ということで、当時は話題となった。

 中央での馬主だったカタールのファハド殿下が「十分に走ってくれたので売りたい」と譲渡先を探していたところ、グレイトパールの重賞2勝時など鞍上をつとめた川田将雅騎手のアドバイスで、父である佐賀の川田孝好厩舎へ移籍してきたとのことだった。

 5歳12月の移籍初戦(1400m)を7馬身差で楽勝。その後は連戦連勝とはいかなかったものの、6歳時は9戦して重賞3勝を含め4勝。中央相手の佐賀記念は4着だったが地方馬最先着。重賞3勝の中には、名古屋に遠征した東海菊花賞のタイトルもあった。

 しかし2020年の7歳時は地元馬相手でも掲示板外の敗戦もあり、勝ったのは九州大賞典での1勝のみ。それ以来、1年ぶりの勝利となったのが、今回の九州大賞典だった。

 2500mのレースを勝てるなら、同じようにゆったり流れる2000mでも勝てそうなものだが、なぜ年に一度2500mの九州大賞典だけ強い勝ち方ができるのか、川田調教師にうかがった。

「年を重ねてズブさが出てきたということはあります。ただ、(4コーナーポケットの同じ位置からスタートする)1400mと2500mのスタートだと、なぜか序盤から反応がいいんです。2000mだともたつくところがあって噛み合わない。1800mだとレースが忙しくなります」

 というわけで、移籍初戦だった1400m戦と、九州大賞典の3回。4コーナーポケットからのスタートでは、たしかに4戦4勝となっている。

「今年も佐賀記念は、7着でしたが2分9秒4というタイムで走っていますから、状態は悪くなかったんです。今年も夏は休養して、ここ(九州大賞典)を目標に来ました。ただ夏が暑かったので、戻ってくるのが遅れて、本番は連続開催(中1週)ということになりました。今回もスタートをよく出て、人気馬(コンカラー)の直後3番手につけましたから、あの位置で集中力さえ保てれば勝てると思って見ていました」

 グレイトパールはデビュー時が530kgという大型馬で、中央時代から馬体重の変動は大きかったが、佐賀移籍後その振れ幅はさらに大きくなった。たとえば最初に九州大賞典を勝ったときが569kgで、その次走、東海菊花賞は、名古屋への輸送があったとはいえ、マイナス32kgの537kgで勝ったのには驚かされた。

 さらに昨年、秋の復帰初戦はデビュー以来最高体重の584kgで6着。そして臨んだ2度目の九州大賞典は、マイナス16kgの568kgときっちり絞ってレコード勝ち。今年の秋初戦は571kgで、本番の九州大賞典は当然絞って出てくるかと思われたが、変動なしの571kgでも強い勝ち方を見せた。

「体重のことは考えなくても、力は出せるんじゃないかと思って使いました」とのこと。必ずしも絞れば状態がよくなるということでもなさそうで、グレイトパールに体重の変動はあまり関係ないようだ。

 次の目標は、年末の中島記念とのこと。一昨年は2着だが、勝ったウノピアットブリオに6馬身差をつけられる完敗で、昨年は7着。さて、1800mという距離がどうか。中央時代にはアンタレスSを勝ち、佐賀での重賞初勝利となった佐賀スプリングカップも1800mだったが、たしかに年を重ねてズブくなっているのか、昨年以降1800mでは4戦して5着が最高となっている。

 そして、グレイトパールでの九州大賞典3連覇となった日の早朝に達成された、川田将雅騎手によるラヴズオンリーユーでのブリーダーズCフィリー&メアターフ制覇の快挙についてもうかがった。

「朝5時半から、グリーンチャンネルで見ていましたよ。カテゴリーごとの世界一を決めるレースですから、乗せていただいた関係者と馬に感謝です。日本の馬がまたひとつ、世界で通用することが証明されたと思います。(本人からは)月曜日の帰国後に電話がありました。とても満足した様子でした」

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斎藤修

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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