【手塚貴久調教師】「勝ち負けする以上のものを持っている」マイルCSに挑むシュネルマイスターの素質

2021年11月15日(月) 18:02

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▲現在関東リーディングトップの手塚貴久調教師 (C)netkeiba.com

デビューから前走の毎日王冠まで、3着内を外したことのない安定した成績を誇るシュネルマイスター。春シーズンはNHKマイルCを制して、古馬と初対戦の安田記念で3着と好走し、存在感を示した。

秋初戦の毎日王冠では安田記念の覇者ダノンキングリーを退ける勝利で、マイルCSの有力候補の1頭に名乗りを挙げた。そのシュネルマイスターを管理する手塚調教師に、同馬について、そしてレースへの手応えを聞いた。

(取材・文=佐々木祥恵)

牧場時代から、動きの良い馬だった

「ある程度、いい線までいってくれるのは間違いないだろうと思っていました(以下、手塚師)」

 デビューは札幌の芝1500mの新馬戦。父がヨーロッパ血統のキングマンということもあり、洋芝の札幌競馬場をデビューの舞台に選んだ。

「思っていた以上に調教も動けていました。その時点で完成度はまだ高くはなかったですけど、新馬戦あたりでは勝ち負けする以上のものを持っていると感じていました」

 結果は1番人気に応えての1着。

「横山(武)君も辛口でしたし、案外辛勝だったなと思いました」

 だが久々となった2戦目のひいらぎ賞では、あっさり連勝を飾り、評価は上がった。

「新馬勝ち後、もう少し早く使いたかったのですが、熱発が長引いてしまいました。ただこのレースに間に合ったのは大きかったですね」

 ここで2勝目を挙げておけば、年明けからも余裕を持ってレース選択ができる。

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▲昨年のひいらぎ賞を制したシュネルマイスター (撮影:下野雄規)

 3歳初戦は、2000mの弥生賞ディープインパクト記念だった。

「ひいらぎ賞の勝ち方が良かったので、クラシックに使えたらという気持ちもありました。距離がどのくらい持つのか、皐月賞で好勝負ができるかを見極めるために出走させました」

 のちの菊花賞馬となるタイトルホルダーの2着に入り、皐月賞優先出走権を獲得したものの、陣営が思っていたほど伸びがなかったこともあり、より1着の可能性が高いと感じたNHKマイルCを選択。それが功を奏し、見事優勝してGIホースの仲間入りを果たした。

 続く安田記念では、古馬と初めて対戦した。

「春3戦目と馬のダメージも少なかったですし、胸を借りるつもりで挑戦しました。しっかり勝ちに行く競馬で3着でしたし、斤量差があるにせよ、マイルの一線級と五分に戦えたことで、この馬のポテンシャルの高さを認識できました」

 夏を越えて秋シーズンに、さらなる飛躍が約束されたようなレースだった。

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▲NHKマイルCで優勝しGIホースの仲間入りを果たした (写真左、撮影:下野雄規)

夏を越したシュネルマイスターの成長

 秋は毎日王冠から始動したが、春と比べて格段に良くなったという印象はなかったという。

「牧場で順調に乗り込んでからこちらに来ましたので、決して悪いわけではありませんでした。ただ夏を越したらもっとごつくなってマイラー体型になるのかと思ったのですが、筋肉はつきつつも、胴が伸びてスラッとした体型になり、サラブレッドっぽくなった感じがしました」

 夏を越したシュネルマイスターは、手塚師が想像していたマイラー色の強い体型とはまた違う成長を遂げたようだった。

 レースでは後方の位置取りでレースを進め、直線で末脚を伸ばしてゴール前にダノンキングリーをアタマ差捉えて勝利を掴んだ。

「1800mなのでもっと楽についていけるのかと考えていたのですが、案外そうでもなくて、あのような競馬の形になるとは思いませんでした」

 だが1度競馬を走ったことで、馬自身に気合いも入るだろうし、本番ではもう少し前の位置が取れるのではないかと、手塚師はみている。

「今回は横山(武)騎手に乗り替わりになりますけど、毎日王冠のレース後、ルメール騎手はマイルCSでは1600mの乗り方をすればいいだけだからと話をしていました。ですから1800mで前に行けなかったから、果たしてマイルはどうなのだろう? ということではないと思いますね」

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▲ダノンキングリーをアタマ差捉え勝利した毎日王冠 (撮影:橋本健)

 状態面も上昇している。

「動きや雰囲気は良くなっていますね」

 と手塚師の言葉通り、横山(武)騎手が手綱を取った1週前追い切りからも好調振りが伝わってきている。初めての阪神競馬場も「外回りですし問題ないでしょう」と、特に心配はしていない。

 ただ気性的にレース前に、テンションが高くなる面があるという。

「返し馬やゲート裏でテンションが上がるんですよ。それが解消すればもっと良いのかなとも思いますけど、レース自体は冷静に走ってくれますし、他の馬もそういう面はありますから、あまり気にしても仕方ないと思っています」

 とこちらもさほどウイークポイントにはならなそうだ。

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▲レース前にテンションが高くなる面があるも「レース自体は冷静」と手塚師 (撮影:下野雄規)

 毎日王冠のシュネルマイスターはじめ、秋シーズンに入ってセントライト記念のアサマノイタズラ、オールカマーのウインマリリンなど手塚厩舎の馬たちが大活躍している。

「夏頃から秋シーズンには重賞路線に進む馬が多くなると思っていましたが、その馬たちがわりと良い状態で戻ってきて、それぞれが良い状態で順調に調整ができましたし、レースでは枠順や馬場状態、展開など、すべてうまく噛み合って勝てたレースも多かったですね。巡り合わせが良かったのではないかと思います」

「これまでと特に変わったことはしていない」という手塚師だが、重賞勝ちもさることながら、現在のところ関東リーディングトップと厩舎自体が今年は波に乗っている。巡り合わせが良かったと師は謙遜するが、その姿勢が好調の波や運を引き寄せているのではないだろうか。

 最後に強敵揃いのマイルCSに向けての手応えを尋ねると、

「勝つつもりで仕上げていますからね」

 と力みの感じられない口調で締めくくった。

(文中敬称略)

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