ジビエが食べられる競馬場

2021年11月16日(火) 18:00

クギづけになったラム! エゾ鹿! だがエゾ鹿めっ、逃げやがって…

 11月13・14日、久しぶりに訪れた、ばんえい帯広競馬場は、コロナ以前と変わらないのではと思うほど賑わっていた。帯広市はここ1カ月ほどコロナの感染者が出ていないという。それで観光バスも一気に動き出したとのこと。

 帯広競馬場を訪れるのは、必ずしも競馬ファンばかりではない。帯広で観光バスの案内などを見ると、半日〜1日程度で十勝の観光スポットを巡るバスツアーがいくつもあり、その中にばんえい競馬観戦が組み込まれているツアーも少なくないのだ。

 帯広競馬場には『とかちむら』という道の駅のような施設があり、ばんえい競馬観戦とセットで、観光バスツアーの人気スポットになっているというわけだ。

 ばんえい競馬開催中の帯広競馬場を訪れたのは、記憶を辿るとおそらく2020年3月21日のばんえい記念以来。コロナの感染拡大が始まったころで、新型コロナウイルスと言われるものが何者なのか、どう対処すればいいのか、感染するとどんなことになるのか、まだ多くの人が理解してなかった時期。志村けんさんが亡くなられたのはその直後、3月29日のこと。それで多くの人が「感染すると死んじゃうんだ」と本気で恐れるようになったのではなかったか。

 さすがに1年半以上も行ってないと、競馬場のあちこちが様変わりしていた。そういうわけで、久しぶりに競馬場に行って、このコラムで取り上げるのは……そう、ご期待にこたえて競馬場グルメでしょう。

 帯広競馬場の入場門を入ってまっすぐ歩いたところ、スタンド入口の手前には、以前から焼鳥やチキンレッグ(十勝地方では単にレッグまたはレックと言うらしい)を焼いている繁盛店があった。が、コロナの前からだったのか、コロナ以降なのか、そのお店が変わって、しかし引き続き売られているのは串物。で、『やきとり』の赤ちょうちんがぶら下げられてはいるものの、メニューは鳥ばかりではない。

 話はやや横道にそれる。函館競馬場を訪れたことがある競馬ファンならご存知かもしれない。地元函館の人ならおそらく知らない人はいないであろう、ハセガワストアの『やきとり弁当』は、鶏肉ではなく豚肉の串焼き。北海道の一部地方では肉を串に刺して焼いたものは、鶏肉ではなくても「やきとり」と呼ぶ文化があるらしい。

 そういうわけで帯広競馬場のスタンド入口にあるそのお店『ばかうまや本店』に掛かっているメニューを見ると、

・鳥串 1本150円
・豚串 1本150円
・美唄もつ串 1本200円

 とある。が、しかし。目がクギづけになったのは、その次……

・ジャンボラム串 1本600円
・ジャンボエゾ鹿串 1本800円

 競馬場で、ラム! 競馬場で、エゾ鹿! ですよ!

 これは食わねばなるまい、と思ったのだが。なにせ久しぶりの帯広競馬場なので、ほかを見てからあらためて……としたのが痛恨となった。

 いざ、羊とエゾ鹿と戦うゼ、と思い、あらためて『ばかうまや本店』に行ったところ、ショック!

 なんと! ジャンボエゾ鹿の札が「売切」となっているではないですか、か、か。

 くそっ! エゾ鹿めっ、逃げやがって。しかたなく注文したのが、エゾ鹿の代わりに豚、そしてもちろんジャンボラム。それがコレ。

▲帯広競馬場・ばかうまや本店の豚串とジャンボラム串

 小さい方の豚は、普通の焼鳥程度の大きさ。なので、ラムはジャンボだ。味付けは“塩”なので、肉の味はしっかりわかる。噛めば噛むほど肉が味わえる。そして、ラムは、たしかにラムだ。ラムラムしたラムだ。

 帯広といえば街なかにもジンギスカンの店がたくさんあって、帯広競馬場でもコロナ以前であれば夏の時期を中心に炭火で焼いてジンギスカンを食べることができた。しかし串焼きのラムは、ジンギスカンとはまた違ったラムが味わえる。

 欲しくなるのは、ビールでもいいけど、ワインですね。ラムも鹿も、ワインで食べることが多いジビエ(野生鳥獣肉)だし。

 競馬場で、ラムやエゾ鹿が食べられるのは帯広だけ。いや、フランスのロンシャン競馬場や、ドバイのメイダン競馬場の数万円以上もする食事付きの席なら出てくるかもしれない。が、気軽に数百円で食べられるのは帯広だけでしょう。

 食うぜ! 次は、800円のジャンボエゾ鹿。

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斎藤修

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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