【阪神JF】“馬の目線”を大事に リズムを守り勝利に繋げたM.デムーロ騎手

2021年12月14日(火) 18:00

哲三の眼

阪神JFを制し2歳女王に輝いたサークルオブライフ (C)netkeiba.com

今年の阪神JFは3番人気のサークルオブライフが勝利!これで3連勝となり、2歳女王の座を手にしました。レースを振り返り「リズムの作り方がすごく巧い」と哲三氏。鞍上をつとめたミルコ騎手の得意な傾向や、直線の脚に繋がったレース運びについて解説します。

(構成=赤見千尋)

馬自身の目線を確保していると、馬は走りやすい

 阪神ジュベナイルフィリーズは3番人気サークルオブライフがゴール前の大接戦を制しました。鞍上のミルコ(・デムーロ騎手)は、今回のような馬場傾向が得意なイメージだなとレース前に頭をよぎったのですが、その通り実にスムーズなレース運びで勝ち切りました。

 ジョッキーには上手い下手とは別に、それぞれ合う合わないという傾向があって、僕は現役時代から自分はもちろん、他のジョッキーの傾向も研究していました。その中でミルコの得意な傾向の一つは、内を開けて通るような芝の状態で、真ん中辺りの枠に入った時。馬の力があるということも前提になりますが、今回もミルコは上手く乗ってくるだろうなと思いながらレースを見ていました。

 道中は入れ代わり立ち代わりの流れになりそうな場面があって、ミルコの馬の横や内から進出したそうな馬もいました。周りにいた馬たちがスピードに乗せたいような感じで進出したそうなそぶりを見せているところ、惑わされずしっかり自分の馬のリズムを守れたことが大きいと感じます。

哲三の眼

しっかり自分の馬のリズムを守れていた (C)netkeiba.com

 具体的に言うと3コーナー手前辺りからのところで、リズムの作り方がすごく巧いなと。先ほども言ったように、左右に居た馬たちは上下しているような流れになりましたが、その中で自分の馬の目線は1馬身半くらいしっかり確保出来ていたと思います。

 僕は馬の目線というところを大事に考えてきました。今回のように周りの馬たちに動きがあっても、馬自身の目線を確保していると、馬は走りやすいと思っていて。そういう進路取りが上手くいったので、4コーナーを回る時もいいリズムで追い出すことが出来て、直線の脚に繋がったのではないかと思います。

哲三の眼

サークルオブライフの口取りの様子 (C)netkeiba.com

 2着は8番人気のラブリイユアアイズが頑張りました。団野(大成)君は若手の中でも注目している騎手で、GIに手が届きそうで届かなかったという経験は、さらに今後に繋がっていくのではないでしょうか。引き続き向上心を持って頑張って欲しいです。

 1番人気だったナミュールは出遅れて4着となってしまいましたが、直線はすごい脚を見せました。内に入っていくのがヨーロッパのトップジョッキーらしいなというか、スタートの遅れをリカバリーするための選択だったと思います。ただ今の阪神の馬場傾向はすごく難しくて、内なのか外なのか、前に行った方がいいのか後ろからがいいのか、ペースによって変わってくるような掴みづらい馬場でした。結果論で言えばあのレースは外が伸びましたから、4着というのは残念でしたが、いい脚を見せてくれたのでまた来年狙ってみたいと思わせる走りでした。

(文中敬称略)

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佐藤哲三

1970年9月17日生まれ。1989年に騎手デビューを果たし、以降はJRA・地方問わずに活躍。2014年に引退し、競馬解説者に転身。通算勝利数は954勝、うちGI勝利は11勝(ともに地方含む)。

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