【有馬記念】去る者、明日を担う者

2021年12月25日(土) 12:00

牝馬の時代が海外にも飛び火した一年

 ここ数年、日本馬の海外での活躍が目立ってきたと思う方が多いのではないか。この一年もそうだったが、その中でも牝馬が頑張っている印象だ。牝馬の時代が海外にも飛び火しているかのようにもみえた。

 2019年にドバイターフを勝っていたアーモンドアイが、翌20年のジャパンCで有終の美を飾ったときに、正直、これで牝馬の時代に区切りがつくのかと思ったが、そうではなかった。2019年の桜花賞馬グランアレグリアがこの秋、牝馬初のマイルCS連覇でラストランを飾ったり、やはり19年のオークス馬ラヴズオンリーユーは、今年に入ってクイーンエリザベスII世C、ブリーダーズCフィリー&メアターフ、そして香港Cと海外のG1を3勝して引退の花道を飾っている。

 そして有馬記念では、2019年の秋華賞馬クロノジェネシスがグランプリレース3連勝を引き下げ、ここを引退レースにとのぞんでいる。よくぞここまで続いたものだと思う。

 そして、今年こそ、こうした牝馬の流れにひと区切りがつくのではないか、そんな風に考えなくもないのだ。

 一方の牡馬陣は、三冠馬コントレイルが秋のジャパンC優勝で引退の花道を飾り、次なる世代にバトンタッチしている。それを受けるのが3歳陣で、その中で皐月賞馬エフフォーリアが、ハナ差で敗れたダービーのうっぷんを秋に晴らし、天皇賞で古馬を倒して有馬記念で年度代表馬を狙うところまできている。

 ファン投票1位は、3歳ではあのウオッカ以来14年ぶり。17年デビューの横山武史騎手ともども新たな顔が、人馬ともに出現する可能性は大いにありそうだ。

 去る者、明日を担う者というテーマをかかげる有馬記念だが、今年はいろんな意味でそれが大きい。そしてもうひとつつけ加えておきたいことが。この有馬記念は今年で66回目になるが、これを全て実況放送してきたのが私の古巣、ラジオ日経(旧ラジオたんぱ)だということ。

 そのうち第6回からその放送現場にいたが、数々の名シーンを担当させてもらった中でこれが1番と思うのが、トウショウボーイ、テンポイントの2年にわたる名勝負だ。特に2年目の1977年は両雄のマッチレースに終始し、これ以上のレースはその後体験したことがない。

 ついでながらこのラジオ日経で正月2日に競馬特別番組があり、先日、競馬放送創世記の先輩アナウンサーにインタビューをさせてもらった。どんな思いで日本初のラジオ競馬中継番組に取り組んでいたのか。

 早坂、小坂両アナウンサーの言葉に、改めて身の引き締まる思いだった。

 目の前のレースをどう伝えてきたか、放送の歴史を振り返ることでレース実況の神髄に触れることができる。さて有馬記念の大一番を放送がどう伝えるか、見守りたい。

「去る馬と 明日に担す 馬たちと」

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長岡一也

ラジオたんぱアナウンサー時代は、日本ダービーの実況を16年間担当。また、プロ野球実況中継などスポーツアナとして従事。熱狂的な阪神タイガースファンとしても知られる。

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