【根岸S AI予想】今週も伏兵で勝負! AIの注目馬はレースの傾向からも面白い存在

2022年01月24日(月) 18:00

単勝オッズ7.8倍のキングオブコージがAJCCを制した(撮影:下野雄規)

netkeibaにある膨大な競走成績を人工知能によって機械学習するAiエスケープを開発したAIマスター・Mと、レースデータの分析を専門とする競馬評論家・伊吹雅也による今週末のメインレース展望。コンピュータの“脳”が導き出した注目馬の期待度を、人間の“脳”がさまざまな角度からチェックする。

(文・構成=伊吹雅也)

基本的には上位人気グループの馬が優勢

AIマスターM(以下、M) 先週はAJCCが行われ、単勝オッズ7.8倍(3番人気)のキングオブコージが優勝を果たしました。

伊吹 正直なところ、私自身は見立てを誤ってしまったのですが、レース自体は非常に味わい深く、見どころの多い展開になりましたね。キングオブコージは馬群の後方でレースを進めていたものの、勝負どころの3〜4コーナーで大外からポジションを押し上げ、先行勢が力尽きたゴール前の直線半ばで難なく抜け出す完勝。「鞍上の横山典弘騎手はこの流れを完璧に予見していたのかな……? 」と思ってしまうような、あまりにも鮮やかな勝ちっぷりで、人馬ともにお見事だったと言うほかありません。

M 単勝オッズ87.9倍(11番人気)のマイネルファンロンが2着に、単勝オッズ10.4倍(4番人気) のボッケリーニが3着に食い込み、3連単で72万760円の高額配当が飛び出しています。一方、単勝オッズ3.6倍(2番人気)のポタジェは5着に、単勝オッズ2.0倍(1番人気)のオーソクレースは6着に敗れてしまいました。

伊吹 人気を集めた2頭もそれなりに頑張っているのですが、ポタジェやオーソクレースと遜色ない能力を持っていた馬のうち、より上手く立ち回った4頭が先着を果たした――という印象です。キングオブコージは2020年の目黒記念を勝っていますし、2着のマイネルファンロン、3着のボッケリーニ、さらに言えば単勝オッズ18.8倍(7番人気)だった4着のアサマノイタズラにも、それぞれ芝2000〜2200mのJRA重賞を制した実績があります。結果論ではありますが、いま思えば4頭とも過小評価でしたね。

M キングオブコージはその2020年目黒記念に続きGII2勝目。ちなみに、2021年は2走しかできず、その2戦も9着・5着どまりでした。完全復活と見て良いのではないでしょうか。

伊吹 2020年の目黒記念を勝った当時は負担重量が54kgでしたし、そもそも能力面において半信半疑だった方も少なくなかったと思います。ただ、別定競走のGIIでもこれだけやれることを証明したわけですから、今後の古馬芝中長距離戦線ではこの馬の評価が明暗を分ける場面も多々ありそう。上手く付き合っていきたいですね。

M 今週の日曜東京メインレースは、フェブラリーSの前哨戦としておなじみの根岸S。昨年は単勝オッズ2.5倍(1番人気)のレッドルゼルが優勝を果たしました。

伊吹 ゴール前の直線半ばを過ぎてもまだ馬群の中にいて、さすがに抜け出してくるのは難しいかと思ったのですが、進路が開けてからグッと伸びましたね。更なる成長を感じさせる勝ちっぷりでしたし、実際にその後は国内外のビッグレースで活躍しています。飛躍のきっかけになった一戦と言って良いでしょう。

M その昨年は単勝オッズ45.7倍(10番人気)のワンダーリーデルが2着に食い込みました。伏兵の台頭はどれくらい警戒しておくべきなのでしょうか。

伊吹 もちろん警戒しておくに越したことはないのですが、超人気薄の馬が上位に食い込んだ例はそれほど多くありません。

M 単勝6番人気くらいまでの上位人気勢が好走馬の大半を占めていますね。

伊吹 単勝7番人気以下の馬は、2017年以降の過去5年に限ると[0-1-1-45](3着内率4.3%)。少なくとも、無理に捻る必要はないでしょう。

M そんな根岸SでAiエスケープが指名した特別登録時点の注目馬は、エアアルマスです。

伊吹 なかなか面白いところを挙げてきましたね。2020年の東海Sを勝っていますし、前走のりんくうSでも3着に健闘しましたが、大敗が続いた時期もあったので、上位人気に推されるかどうかは微妙なところです。

M 今回は他にも実績馬や勢いのある馬がいますし、少なくとも単勝6番人気以内の支持を集める可能性はそれほど高くないと思います。

伊吹 それでは、Aiエスケープが高く評価している点や、おそらく人気薄である点を踏まえたうえで、好走馬の傾向と照らし合わせていきましょう。

M 伊吹さんがもっとも重要なポイントと見ているのはどの部分ですか?

伊吹 コース適性ですね。2014年以降の過去8年に限ると、3着以内となった馬の大半は前年に東京競馬場の重賞やオープン特別で善戦していました。

M たとえ実績上位であっても、東京のレースを積極的に使ってこなかった馬は割り引きが必要ですね。

伊吹 おっしゃる通り。今年もこの条件に引っかかっている馬は意外と多いので、しっかりチェックしておきましょう。

M エアアルマスは昨年のフェブラリーSで5着に食い込んでいます。

伊吹 東京、かつダートのレースはまだ2回しか使っていませんが、最高峰の舞台であれだけの走りを見せたわけですし、適性はそれなりに高いと見て良さそうです。

M 差し有利なレースと言われていますが、脚質に関してはどう評価していますか?

伊吹 難しいところですね。一応、差し有利……と言うか、先行不利なのは事実。2012年以降の過去10年まで集計対象を広げても、前走の4コーナーを2番手以内で通過した馬は期待を裏切りがちでした。

M エアアルマスは前走の4コーナーを6番手で通過していますが……。

伊吹 2走前までは積極的な競馬が続いていましたよね。今回は前走よりも距離が延びますし、先行力の高さを活かすような形に戻る可能性が高そう。それが奏功する可能性もあるとはいえ、現時点では何とも言えません。

M ちなみに、前走のパフォーマンス自体は高く評価しても良いのでしょうか。

伊吹 実はこれも微妙なところ。前走の距離が1500m超だった馬を除くと、前走で勝ち馬に0.2秒以上の差をつけられていた馬は苦戦しています。

M エアアルマスの前走は勝ち馬から0.4秒差の3着。大きく評価を下げるほどではない気もしますが、少なくとも強調材料とは言えませんね。

伊吹 こういった事情もあり、私は「人気薄なら押さえようかな」くらいの評価にとどめていました。もっとも、昨年のフェブラリーSで5着に健闘している点は重く見るべきだと思いますし、積極的に嫌うメリットはほとんどなさそう。皆さんには、オッズやAiエスケープが注目馬に挙げてきた点も踏まえたうえで、最終的な評価を下していただければと思います。

バックナンバーを見る

このコラムをお気に入り登録する

このコラムをお気に入り登録する

お気に入り登録済み

伊吹雅也

競馬評論家。JRAの公式ホームページ内「今週の注目レース」にて“データ分析”のコーナーを、TCK(東京シティ競馬)の公式ホームページ内「分析レポート」にて重賞競走のデータ分析を担当しているほか、グリーンチャンネル、JRAのレーシングプログラム、『週刊アサヒ芸能』、『競馬王』などさまざまなメディアを舞台に活動している。主な著作に『WIN5攻略全書 回収率150%超!“ミスターWIN5”のマインドセット』、『コース別 本当に儲かる騎手大全』シリーズ、『コース別 本当に儲かる血統大全』シリーズ、『ウルトラ回収率』シリーズ(いずれもガイドワークス)など。

関連情報

新着コラム

コラムを探す