【東京新聞杯AI予想】今週は見解が真っ二つ! AIが指名した伏兵の走りに注目

2022年01月31日(月) 18:00

単勝オッズ11.5倍(6番人気)のテイエムサウスダンが根岸Sを制する(撮影:下野雄規)

netkeibaにある膨大な競走成績を人工知能によって機械学習するAiエスケープを開発したAIマスター・Mと、レースデータの分析を専門とする競馬評論家・伊吹雅也による今週末のメインレース展望。コンピュータの“脳”が導き出した注目馬の期待度を、人間の“脳”がさまざまな角度からチェックする。

(文・構成=伊吹雅也)

上位人気に推された馬が信頼できない一戦

AIマスターM(以下、M) 先週は根岸Sが行われ、単勝オッズ11.5倍(6番人気)のテイエムサウスダンが優勝を果たしました。

伊吹 結果的に波乱を演出したものの、見方によっては“順当勝ち”と言えるのではないでしょうか。2021年は黒船賞・テレ玉杯オーバルスプリント・兵庫ゴールドトロフィーと、地方のダートグレード競走で3勝をマーク。しかも、この3レースはいずれもダ1400mのレースです。2021年の根岸Sで13着に敗れていた点や、先行不利・差し有利なレースという見立てが支配的だったことを加味しても、さすがに過小評価され過ぎでした。

M 単勝5番人気以内の支持を集めた馬のうち、JRAの重賞や地方のダートグレード競走で優勝経験があったのは、ソリストサンダー・エアアルマスの2頭だけ。しかも、この2頭はダ1400mの重賞に出走した経験がなかった馬です。

伊吹 まぁ、私自身も「展開が向く可能性は低いだろうな」「そもそも東京ダ1400mがベストというタイプではなさそう」と見ていたので、あまり偉そうなことは言えません。ただ、今回のような流れになると予見できていれば当然高く評価したはずですし、見立ての甘さを反省しています。

M テイエムサウスダンはフェブラリーSの優先出走権を獲得しました。出走してきた場合、どう評価する予定ですか?

伊吹 少なくとも、重いシルシを打つことはないでしょう。“東京ダ1600m・中京ダ1800m、かつ重賞のレース”において4着以内となった経験がない馬は、2012年以降[2-0-0-58](3着内率3.3%)と期待を裏切りがち。左回りはまったく問題なさそうですが、ダ1400m以下のレースを主戦場としてきた馬なので、あまり強調できません。もちろん、あまりにもその点が嫌われるようならば、激走を警戒しておくべきだと思いますが……。悩ましいところですね。

M 今週の日曜東京メインレースは、安田記念などと同じ舞台で施行される古馬重賞の東京新聞杯。昨年は単勝オッズ11.6倍(5番人気)のカラテが優勝を果たしました。

伊吹 当時は2連勝中でしたね。その2勝が中山芝1600m外、かつ条件クラスのレースだったこともあり、半信半疑に見ていた方も少なくなかったと思うのですが、実績馬との追い比べを制し見事に3連勝を達成。ゴール前の直線で進路を確保するのに手間取ったことを考えると、着差以上の完勝だったと言って良いのではないでしょうか。

M その昨年は3連単26万7610円の高額配当決着。たびたび波乱が起きている印象です。

伊吹 実際、上位人気に推された馬の好走率はそれほど高くありません。

M 単勝1番人気馬は過去10年でわずか1連対。単勝4〜6番人気あたりの中位人気馬が優秀な成績を収めていますね。

伊吹 単勝1番人気馬だけでなく、単勝2番人気の馬も2012年以降[1-0-1-8](3着内率20.0%)と苦戦していました。超人気薄の馬が上位に食い込んだ例はあまり多くないものの、人気の中心となっている馬の扱いには注意すべきだと思います。

M そんな東京新聞杯でAiエスケープが指名した特別登録時点の注目馬は、シュリです。

伊吹 今週も人気薄の馬を狙ってきましたね。ここ2戦はいずれも二桁着順に敗れてしまいましたが、3走前の谷川岳Sを快勝していますし、休養明け2戦目の今回は上積みがあるでしょう。

M 明け6歳とはいえまだキャリア12戦。伸びしろがありそうなあたりにも魅力を感じます。

伊吹 おそらく、Aiエスケープもその辺を高く評価しているのではないでしょうか。私はレースの傾向から、好走できる確率を見積もっていきたいと思います。

M 半年あまりの休み明けだったとはいえ、前走の京都金杯は10着どまりでした。やはりこの点は不安要素と見るべきでしょうか。

伊吹 その通りですね。2017年以降の過去5年に限ると、前走のコースが国内、かつ前走の着順が2着以下、かつ前走の1位入線馬とのタイム差が0.5秒以上だった馬は[1-2-3-39](3着内率13.3%)。その前走がGI以外だった馬はさらに苦戦しています。

M シュリの前走は1位入線馬とのタイム差が0.7秒でした。

伊吹 休養明けにしては悪くない内容だったと思いますが、前走好走馬やビッグレースからの直行組よりは低く評価せざるを得ません。

M 馬齢やキャリアに関してはいかがでしょう。

伊吹 難しいところですね。一応、2017年以降は6歳以上の馬がすべて4着以下に敗れています。

M ここまではっきり明暗が分かれているとは……。

伊吹 今年も高齢馬は過信禁物と見るべきでしょう。ただ、先程おっしゃっていた通り、シュリはまだキャリア12戦。例外として扱っても良さそうです。

M 他に何か注目しておくべきポイントはありますか?

伊吹 同じく2017年以降の過去5年に限ると、前走の出走頭数が今回より少なかった馬は比較的堅実でした。

M 今開催の東京芝はDコースを使用していますから、芝1600mの出走可能頭数は16頭。シュリの前走も16頭立てだったので、“フルゲート”の場合はこの条件に引っ掛かってしまいます。

伊吹 そういうことになりますね。まぁ、今回は前走で17頭立て以上のレースを使っていた馬がほとんどいませんし、どこまでこのファクターを重視すべきか微妙なところですけど。

M 今週は見解が割れました。

伊吹 こういう展開は久しぶりですね(笑)。ただ、明確な強調材料こそ見当たらないものの、好走馬の傾向からそう大きくは外れていない――というのが私の見立て。想定される人気やAiエスケープが高く評価していることを考えると、無理に嫌う必要はないと思います。

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伊吹雅也

競馬評論家。JRAの公式ホームページ内「今週の注目レース」にて“データ分析”のコーナーを、TCK(東京シティ競馬)の公式ホームページ内「分析レポート」にて重賞競走のデータ分析を担当しているほか、グリーンチャンネル、JRAのレーシングプログラム、『週刊アサヒ芸能』、『競馬王』などさまざまなメディアを舞台に活動している。主な著作に『WIN5攻略全書 回収率150%超!“ミスターWIN5”のマインドセット』、『コース別 本当に儲かる騎手大全』シリーズ、『コース別 本当に儲かる血統大全』シリーズ、『ウルトラ回収率』シリーズ(いずれもガイドワークス)など。

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