2022年08月31日(水) 12:00
先週は、「真夏のダービー」と称される3歳馬限定のG1トラヴァーズS(d10F)で盛り上がった北米ダート中距離路線だが、今週土曜日(9月3日)には、古馬の大一番が東海岸と西海岸の双方で行われる。
中でも注目が高いのが、カリフォルニア州のデルマーで行われるG1パシフィッククラシック(d10F)だ。
というのも、現段階でG1BCクラシック(d10F)前売り1番人気の座にあるフライトライン(牡4、父タピット)が、デビュー以来ここで初めて10Fの距離に挑むのである。
G3エッジウッドS(芝8.5F)を制した他、G1スターレットS(d8.5F)2着、G1アメリカンオークス(芝10F)2着など、マルチな活躍を見せたフェザートの2番仔として生まれたのがフライトラインだ。
ファシグティプトン・サラトガ1歳セールにて100万ドル(当時のレートで約1億735万円)で購買され、15年の最優秀3歳牝馬ステラーウインドや、18年の最優秀ダート牡馬アクセラレイトらを育てたことで知られるジョン・サドラー調教師の管理下に入った。
初陣を果したのは3歳の4月で、したがって3歳3冠とは無縁だったが、サンタアニタのメイドン(d6F)を13.1/4馬身差で制するというド派手なデビューを飾ると、4カ月ほどの間を挟んで出走したデルマーの条件戦(d6F)も12.3/4馬身差で快勝。
そこから再び3カ月半の間隔をとって出走したのが、サンタアニタの冬春開催の開幕を飾るG1マリブS(d7F)で、ここも11.1/2馬身差で制して無敗の3連勝でG1初制覇を果たした。
当初は、3月5日のサンタアニタ開催に組まれていたG2サンカルロスS(d7F)が今季初戦になると言われていたが、2月に入ったところで右後肢の飛節に不安が出て、G2サンカルロスSを回避。
立て直しを図り、ようやく出走態勢が整ったフライトラインがファンの前に姿を現したのが、6月11日にベルモントパークで行われたメトロポリタンH(d8F)だった。
圧倒的なスピードを武器に楽勝を続けてきたこの馬が、メトロポリタンHではスタートダッシュに失敗。
2番手での競馬になった時には場内が騒然としたが、3〜4コーナー中間で先頭に立つと、その後は後続を突き放し、最後は2着以下に6馬身差をつけて4連勝を飾った。
この時2着に入ったハッピーセイバー(牡5、父スーパーセイバー)は次走、8月6日にサラトガで行われたG1ホイットニーS(d9F)に出走。
G1BCクラシックの前売りで2番人気に推されているライフイズグッド(牡4、父イントゥミスチフ)の2着となったが、ライフイズグッドとの着差は2馬身だった。
すなわち、ハッピーセイバーを物差しにすれば、フライトラインの方がライフイズグッドより4馬身前にいるという、極めてシンプルな机上論が成立する。
最新の世界ランキングでも、フライトラインのレイティングが127であるのに対し、ライフイズグッドは125と、フライトラインを2ポンド上にとっている。
前述した戦績をご覧になればおわかりのように、フライトラインがこれまで走った最長距離は8Fだ。
9Fの経験すらないフライトラインが、10Fでどのようなパフォーマンスを見せるかは、G1パシフィッククラシックにおける最大の見どころである。
相手馬と目されるのが、7月30日にデルマーで行われた、G1パシフィッククラシックへ向けた前哨戦のG2サンディエゴH(d8.5F)で、1.2着したロイヤルシップ(セン6、父ミッドシップマン)とカントリーグラマー(牡5、父トーナリスト)だ。
ブラジル産馬で、祖国で芝のG1エスタド・ド・リオデジャネイロ(芝1600m)を含む2重賞を制した後、4歳時から北米に在籍しているのがロイヤルシップである。
移籍当初は芝を中心に使われていたが、昨年4月にG2カリフォルニアンS(d9F)を制して北米重賞初制覇を果たすと、以降はダートの中距離路線に専念。
今季2戦目となったG1ハリウッドGC(d10F)で3着になって臨んだG2サンディエゴHを制し、北米における2度目の重賞制覇を果たした。
そのサンディエゴHで、オッズ3倍の1番人気に推されていたのがカントリーグラマーだ。
昨年のG1ハリウッドGC勝ち馬で、今年の春は中東に遠征し、G1サウジC(d1800m)2着、G1ドバイワールドC(d2000m)1着と、この2戦だけで1046万ドル(約14億4000万円)の荒稼ぎをしている。
サンディエゴHは、ドバイワールドC以来4カ月ぶりの出走で、パシフィッククラシックへ向けた足慣らしとしては上々の内容だった。
一方、同じ9月3日・土曜日にニューヨーク州のサラトガで行われるのがG1ジョッキークラブGC(d10F)で、7月9日にベルモントパークで行われたG2サバーバンH(d10F)の勝ち馬ダナミックワン(牡4、父ユニオンラッグス)、同競走2着のファーストキャプテン(牡4、父カーリン)、昨年のG1トラヴァーズSの4着馬で、11カ月ぶりの出走となったサラトガの一般戦(d9F)を白星で飾ったキープミーインマインド(牡4、父ラオバン)らが出走の構えを見せている。
今週末も、北米のダート戦にぜひご注目いただきたい。
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合田直弘
1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。
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