【スプリンターズS AI予想】連軸としては妙味あり!? AIが指名した実績馬の信頼度をチェック

2022年09月26日(月) 18:00

単勝オッズ19.5倍(5番人気)のジェラルディーナが優勝(c)netkeiba.com、撮影:下野雄規

netkeibaにある膨大な競走成績を人工知能によって機械学習するAiエスケープを開発したAIマスター・Mと、レースデータの分析を専門とする競馬評論家・伊吹雅也による今週末のメインレース展望。コンピュータの“脳”が導き出した注目馬の期待度を、人間の“脳”がさまざまな角度からチェックする。

(文・構成=伊吹雅也)

4〜8番人気の馬があまり好走できていない点をどう見るか

AIマスターM(以下、M) 先週はオールカマーが行われ、単勝オッズ19.5倍(5番人気)のジェラルディーナが優勝を果たしました。

伊吹 横山武史騎手の手綱捌きも、それに応えたジェラルディーナも、お見事と言うほかありません。道中は枠なりに最内を進んで、先行集団が射程圏内に入る絶好のポジションを確保。4コーナーから直線入り口にかけても内ラチ沿いから離れず、ウインキートス(3着)らをインからかわし、坂を上がり切ってからゴールまでの間で後続に決定的な差をつけています。

 上位入線馬はそれぞれベストに近い競馬をしていたと思うのですが、その中でもこの馬の能力やコース取りが一枚上だったということでしょう。

M 2着のロバートソンキーを含め、結果的に1〜3着馬はいずれも馬番が1〜3番だった馬。一方、馬群の中団外めでレースを進めたデアリングタクト(6着)やヴェルトライゼンデ(7着)は人気を裏切る形となってしまいました。

伊吹 4コーナー8番手のポジションから追い込んだロバートソンキーも道中はずっと内ラチ沿いにいましたし、外を回った各馬にとって不利な馬場や展開であったことは間違いありません。デアリングタクトやヴェルトライゼンデ、さらにはテーオーロイヤル(5着)あたりも、大きく評価を下げる必要はないはずです。ただ、ジェラルディーナと横山武史騎手はそんな馬場や展開をしっかりと活かし切ったわけですから、こちらはこちらで高く評価すべきだと思います。

M ジェラルディーナはデビュー15戦目で念願の重賞初制覇。母にGI7勝馬のジェンティルドンナを持つ良血馬がようやくタイトルを獲得しました。

伊吹 母のジェンティルドンナはPOGで指名していたこともあり、個人的にも思い入れが強い馬。陣営や出資している会員の皆さんにとっても感慨深い勝利だったのではないでしょうか。まだまだ上を目指すことができる器だと思いますし、今後が楽しみで仕方ありません。選ぶレースにもよりますが、大舞台でも積極的に狙っていきたいです。

M 今週の日曜中山メインレースは、下半期の短距離チャンピオン決定戦と位置付けられているスプリンターズS。昨年は単勝オッズ5.3倍(3番人気)のピクシーナイトが優勝を果たしました。近年は堅めの決着が続いているものの、伏兵が上位に食い込む年も少なくないように思います。

伊吹 過去10年の単勝人気順別成績を見ると、3着以内馬延べ30頭のうち11頭は単勝7番人気以下。人気薄の一発を警戒しておくべきレースと言えるでしょう。ただし、上位人気馬もそれなりに優秀な好走率をマークしている点は見逃せません。

M これは面白い。上位人気馬も下位人気馬も健闘している一方で、その中間にあたる単勝4〜6番人気の馬は苦戦しているんですね。

伊吹 より詳しく見ていくと、単勝4〜8番人気の馬は2012年以降[0-1-2-47](3着内率6.0%)、単勝9〜13番人気の馬は2012年以降[1-2-6-41](3着内率18.0%)、単勝14番人気以下の馬は2012年以降[0-0-1-30](3着内率3.2%)でした。いわゆる“穴人気”の馬を狙うくらいなら、単勝二桁人気クラスの伏兵に注目した方が良いのではないかと思います。

M そんなスプリンターズSでAiエスケープが指名した特別登録時点の注目馬は、シュネルマイスターです。

伊吹 ちょっと意外なところを挙げてきましたね。1番人気ということはないと思いますが、上位人気グループを形成する一頭になりそう。

M シュネルマイスターは4歳馬。デビュー4戦目のNHKマイルCでGI初制覇を果たし、2021年のマイルCSや2022年の安田記念でも2着に食い込んでいます。1200mのレースを使うのは初めてですが、それなりの支持は集まるでしょう。

伊吹 断然の人気を集めそうなメイケイエールに次ぐ、2〜3番手くらいのポジションに落ち着きそうですね。単勝3番人気以内の馬はまずまず信頼できるレースですし、Aiエスケープが高く評価していることを踏まえつつ、私はレースの傾向から、連軸候補としての信頼度を見積もっていきたいと思います。

M 最大のポイントはどのあたりでしょうか?

伊吹 前走好走馬が強い点ですね。過去10年の3着以内馬延べ30頭中24頭は、前走の着順が5着以内でした。

M 一方、前走で6着以下に敗れていた馬は3着内率が9.1%どまり。大敗直後の馬は思い切って評価を下げた方が良いかもしれませんね。

伊吹 前走の着順が6着以下だった馬は、2016年以降の過去6年に限ると[0-1-0-39] (3着内率2.5%)、2018年以降の過去4年に限ると[0-0-0-27](3着内率0.0%)です。近年の流れを考えても、やはりまずは直近のパフォーマンスを素直に評価するべきだと思います。

M シュネルマイスターは前走の安田記念で2着に健闘。強調できる要素のひとつと見て良いでしょう。

伊吹 臨戦過程に関して言うと、前走が東京のレースだった点も強調材料と言えそう。過去7年の3着以内馬延べ21頭中15頭は、前走で中央場所か中京のレースを使っていました。

M 勝ち馬7頭すべて、さらに連対馬14頭のうち13頭が該当している点も見逃せませんね。

伊吹 おっしゃる通り。今年も、北九州記念やキーンランドCから直行してきた馬は割り引きが必要です。

M これだけの実績馬で、臨戦過程にも問題を抱えていないとなると、無理に逆らう必要はなさそう。逆に、何か不安要素はありますか?

伊吹 強いて挙げるならば、今年に入ってから勝ち切れていない点でしょうか。過去10年の3着以内馬延べ30頭中22頭は、同年に中央場所か中京の重賞を勝っていました。

M 年明け以降の重賞、それも中央場所や中京で施行されるようなレースを勝ち切っている馬でないと、上位に食い込むのは難しいようですね。

伊吹 サマースプリントシリーズ対象レースの多くは中京を除くローカル場で施行されるわけですし、このあたりの実績を正しく評価できるか否かが予想のポイントになってくるかと思います。

M シュネルマイスターは今年初戦のドバイターフで8着に、2戦目の安田記念で2着に敗れました。ただし、前走の安田記念は勝ったソングラインとクビ差。これでも評価を下げるべきなのでしょうか。

伊吹 難しいところですよね。私自身も勝ちに等しい内容だったと思っていますから、この一点だけを理由に軽視するつもりはありません。Aiエスケープが注目馬に挙げてきたのであれば、なおさらしっかりとマークしておいた方が良さそう。より不安要素が少ない馬との組み合わせを本線に、何とか妙味ある買い目を構築したいと思います。

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伊吹雅也

競馬評論家。JRAの公式ホームページ内「今週の注目レース」にて“データ分析”のコーナーを、TCK(東京シティ競馬)の公式ホームページ内「分析レポート」にて重賞競走のデータ分析を担当しているほか、グリーンチャンネル、JRAのレーシングプログラム、『週刊アサヒ芸能』、『競馬王』などさまざまなメディアを舞台に活動している。主な著作に『WIN5攻略全書 回収率150%超!“ミスターWIN5”のマインドセット』、『コース別 本当に儲かる騎手大全』シリーズ、『コース別 本当に儲かる血統大全』シリーズ、『ウルトラ回収率』シリーズ(いずれもガイドワークス)など。

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