4馬身半差の圧勝劇! フォルテが世代トップの実力を改めてアピール

2023年03月08日(水) 12:00

ケンタッキーダービー&オークス戦線 注目馬の動向は

 先週のこのコラムで予告させていただいたように、4日(土曜日)にフロリダ州のガルフストリームパークで行われたG2フォンテンオヴユースS(d8.5F)で、昨年の全米2歳牡馬チャンピオン・フォルテ(牡3、父ヴァイオレンス)が、今季初めてファンの前に姿を現した。

 オッズ1.5倍の1番人気に推された同馬は、道中5番手を追走した後、4コーナーから進出。直線残り1Fで先頭に立つと、そこから後続を4.1/2馬身突き放す快勝を見せた。

 4カ月の休み明けを全く感じさせないレース内容で、世代随一の実力の持ち主であることを改めてアピールした形となったフォルテ。次走は、4月1日に同じくガルフストリームパークで行われるG1フロリダダービー(d9F)になる模様だ。

 5月6日にチャーチルダウンズで行われるG1ケンタッキーダービー(d10F)へ向けた戦線の、中心にいるのがフォルテであることが明確になったわけだが、今年の米国3歳世代において、そのフォルテに匹敵する能力を持つと言われているのが、西海岸を拠点とするアラビアンナイト(牡3、父アンクルモー)である。

 OBS4月2歳市場に上場され、公開調教で1Fでは2位タイとなる9秒8をマークした後、セッション最高値の230万ドル(当時のレートで約2億9523万円)で購買されたのがアラビアンナイトだ。B.バファート厩舎から2歳11月にデビューし、キーンランドのメイドン(d7F)を7.1/4馬身差で制して緒戦勝ちを飾ると、バファート師が同馬の2戦めに選択したのが、1月28日にアーカンソー州のオークローンパークで行われたG3サウスウェストS(d8.5F)だった。

 当日のオークローンパークは、降り続いた雨の影響でSloppyという極悪馬場となり、キャリアの浅いアラビアンナイトには酷なレース設定となったが、スタートから先手をとった同馬の脚色は最後まで衰えず、G1ブリーダーズフューチュリティ(d8.5F)3着の実績があったレッドルートワン(牡3、父ガンランナー)に5.1/2馬身差をつけて逃げ切り勝ち。無敗の重賞制覇を果たした。

 そのG3サウスウェストSは、ケンタッキーダービーの出走権を巡るポイントが設定されていたレースだったが、そこを勝ったにもかかわらず、ダービーポイントのリーダーボードにアラビアンナイトの名前はない。ご存知のように、21年のケンタッキーダービー後、1着で入線したバファート厩舎のメディナスピリットから禁止薬物が見つかった件で、チャーチルダウンズ競馬場はバファート調教師に、2年間の出走停止処分を課している。のみならず、バファート厩舎所属馬が獲得したダービーポイントを「無効」とする処置を貫いているため、アラビアンナイトのダービーポイントも現段階では「ゼロ」となっている。

 このままではケンタッキーダービーに出走出来ないため、アラビアンナイトは前走後、かつてバファート調教師の下でアシスタントを務めていたティム・ヤクテイーン調教師のもとに転厩。4月1日にオークローンパークで行われるG1アーカンンソーダービー(d9F)か、4月8日にサンタアニタで行われるG1サンタアニタダービー(d9F)に出走し、ダービーポイント獲得を目指すことになっている。

 これら2頭の、最終プレップにおける結果とレース内容によって、フォルテとアラビアンナイトのどちらが本命馬としてケンタッキーダービーに向かうことになるかが、はっきりするはずだ。

 一方、米国ではケンタッキーオークスを目指す3歳牝馬戦線も動きを見せている。

 3月5日にサンタアニタで行われたG3サンタイザベルS(d8.5F)は、オッズ1.8倍の1番人気に推されたファイザ(牝3、父ガーヴィン)が、道中2番手から抜け出す危なげない内容で快勝。デビューから継続している無敗の連勝を”4”に伸ばしている。

 もともとは2月25日に開催が予定されていたのがG3サンタイザベルSだったが、悪天候のため開催が中止になり、3月5日に順延されての施行となった。

 祖母がG2ギャラントブルームH(d6.5F)など3重賞を制した他、G1テストS(d7F)で2着となったポメロイズピストルという血統背景を持ち、ファシグティプトンミッドランティック2歳市場にて72万5千ドル(当時のレートで約9337万円)で購買されたのがファイザだ。

 B.バファート厩舎に入厩し、11月12日にデルマーで行われたメイドン(d6F)を3.1/2馬身差で制してデビュー勝ち。次走は、1万ドルの追加登録料を払ってG1スターレットS(d8.5F)に出走し、ここを勝ってデビュー2戦目にしてG1制覇を達成。今季初戦となった、1月28日にサンタアニタで行われたG3ラスヴァージネスS(d8F)も勝って臨んだのが、5日のG3サンタイザベルSだった。

 アラビアンナイト同様、ファイザもバファート厩舎所属のままでは、5月5日のG1ケンタッキーオークス(d9F)に出走することは出来ない。同馬の次走は4月8日のG2サンタアニタオークス(d8.5F)の予定だが、それまでに転厩の手続きがとられるかどうか、動向が注目されている。

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合田直弘

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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