2007年02月20日(火) 23:50
20日(火)午前11時より、安平町早来の社台スタリオンステーションにて、2007年度の種牡馬展示会が開催された。
これに先立ち14日にはディープインパクトの見学を希望する一般ファンのために、午前と午後の2回に分けてお披露目を実施しており、今回は改めて牧場関係者を対象に「完全招待制」の展示会となったのである。
午前10時半に社台スタリオンに到着すると、まず入口で係員から招待状の提示を求められた。あらかじめ各生産者などにあてて送付されているはがきを持参しなければ中には入れない? ことになっているのだ。駐車スペースにはまだ余裕があった。すでに場内には多くの人々が詰め掛けていたが、思ったほど多くない。むしろ予想をはるかに下回る少なさと感じたくらいだ。
軽食のサービスが始まっており、展示会を前に腹ごしらえをする人々で飲食ブースは賑わっているものの、それでも「以前ならばこんな程度では済まなかったはずだ」との印象の方が強い。少なくとも従来は、日高では見かけない顔の人々が大量に押し寄せるのが社台スタリオンの種牡馬展示会…だったのである。
関係者向けと一般向けに展示会を分割して開催するのは、結果的にはトラブルや混乱を避けるためにも有効な方法だったと思う。そうでなければ、収拾がつかないほどの大変な事態を招いたことだろう。むしろ今年は、いつもの年に比べ、かなりゆったりと展示を見学することができたくらいだ。
午前11時開門。ここでも再度「招待状(はがき)」の提示を求められる。それと引き換えにズック製のバッグ(展示会オリジナルタオル、ディープインパクトやハーツクライの写真を使用したオリジナル切手とポストカードが入っている)を手渡される。それを受け取り、種牡馬厩舎のある展示エリアに人々が移動して行く。
展示会が始まった。最初にディープインパクトが登場した。「朝、すでに“おつとめ”を済ませてきた」とのことだが、精神的に大人びているのか、拍子抜けするほど物静かな馬である。実は生のディープを見たのはこれが初めてなのだ。2002年のセレクトセールに上場され7000万円で売却されたことはよく知られた事実だが、その時におそらく目撃しているはずなのにまったく記憶がない。
「何だか元気ありませんね」と一緒に見ていた某ライターが思わず口走った。引き手の指示におとなしく従い、淡々と周回を重ねる。まるで従順な繁殖牝馬を引いて歩くがごとき光景。ついにディープは一度も反抗的な態度を見せることなく、展示時間を終えた。
続いてハーツクライが登場。この頃より、曇天の空から雪が落ちて来始め、次のリンカーンが登場した頃にはカメラのオートフォーカスが作動しないほどのひどい降り方になってしまった。そんな中、ここに繋養される30頭ほどの種牡馬が順に1頭ずつ引かれてきて、エリアを取り囲む関係者に紹介されるのを見ながら、あまりの豪華なラインナップにため息が出てしまうほどであった。
社台スタリオンは昨年、200頭以上の交配を行なった種牡馬が計8頭を数えたという。100頭以上200頭未満が12頭。合わせて4000頭以上の牝馬がここに集まった。日高からこの展示会に訪れた多くの生産者の胸中はいかなるものか。
なお、2月15日付けで届いたJ社の「ノミネーション情報」によれば、ディープの他すでにキングカメハメハ、ジャングルポケット、スペシャルウィーク、タニノギムレット、ネオユニヴァース、マンハッタンカフェが「満口」となっていた。展示会を待たずして、すでにこの状況である。
この後、27日には静内地区にて複数の種馬場で展示会が行なわれる予定で、いよいよ生産地は本格的な交配シーズンへと移って行く。
バックナンバーを見る
このコラムをお気に入り登録する
お気に入り登録済み
お気に入りコラム登録完了
田中哲実「生産地だより」をお気に入り登録しました。
戻る
※コラム公開をいち早くお知らせします。※マイページ、メール、プッシュに対応。
田中哲実
岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。