アルカナ・ドーヴィル・オーガスト・イヤリング結果報告

2007年08月28日(火) 23:50

 フランスにおけるセール主催会社の再編があり、「アルカナ」という名の新会社の発足が発表されたのが、ちょうど1年前の「ドーヴィル・オーガスト・イヤリングセール」の直前だった。その後1年が経過し、新会社「アルカナ」による運営が完全に軌道に乗ったことと、ドーヴィルの市場が再び活性期に突入したことがはっきりと確認されたのが、8月17日から4日間にわたって行われた、今年の「ドーヴィル・オーガスト・イヤリングセール」だった。

 総売り上げが3744万ユーロ(前年比25.8%アップ),平均価格が9万8031ユーロ(前年比20.5%アップ)、中間価格が6万ユーロ(前年比5.3%アップ)、バイバックレートが21.4%(前年22.9%)と、全てのの指標が上を向く盛況に終わったのである。世界のブラッドストック・マーケットは、昨年の1歳馬市場が高騰しすぎた反動から、今年は調整局面に入ると言われており、実際にここまでアメリカで開催された主要なセールは、いずれも10%を越える縮小傾向にあった。なおかつ、アメリカに端を発した世界同時株安という逆風が吹く中、この数字は関係者もびっくりするほどの活況だったと言えよう。

 好調の原因は、1に上場馬の品質向上、2にポスピタリティーの充実が挙げられよう。

 1については、カタログが出来上がった段階から、ここ数年に比べれば数段上という評価を受けていたが、実馬の出来も同様に良く、プレミア市場におけるメジャーなバイヤーたちの目にもかなう水準であったと思う。

 2については、例えば海外から足を運んだバイヤーには、シャルルドゴール空港に出迎えの車を差し向けるなど、これまでに見られなかったサービスが行われていた。小さな企業努力だが、こうした細かな心使いの積み重ねが、大きな売り上げの増加に繋がったようだ。

 最高価格馬は、初日に登場した父ガリレオ・母クララボウの牡馬。G1ジャンプラ賞の勝ち馬で、セールの5日前に行われたG1ジャックルマロワ賞でも3着にきたタートルボウルの弟にあたる馬である。購買したのは、クールモアの代理人デミ・オバーン氏だった。

 さて、今年に入って外国産馬の購買が極端に減っている日本人バイヤーだが、ここ3年ほど日本人購買が無かったこの市場に今年は2グループが足を運び、このうちの1グループが1頭の牡馬を購買した。

 この秋にも日本へ渡ることになったのは、父ストリートクライ・母セレスティックの牡馬。姉にニューマーケットの2歳重賞チェリーヒントンS入着馬ホープエヌチャリティーが居て、祖母フィデリアがフランスで重賞2勝。いとこに欧州でG1・2勝のアグネスワールド、同じくいとこにスプリンターズS勝ち馬ヒシアケボノがいるという牝系である。父は御存知のように、今年のケンタッキーダービー馬ストリートセンスを出し、今最もファッショナブルと言われる種牡馬の1頭だ。

 この馬、実を言えば馬体の良さが、早くから厩舎村で評判になっていた馬であった。

 上場者はイギリスの牧場で、ドーヴィルにはセールの2日前にドーヴァー海峡を渡って輸送されてきたのだが、ここで肝を冷やしたのが主催者のアルカナだった。この夏のヨーロッパは天候不順で、ドーヴィルセール当該週も天候は大荒れ。ドーヴァー海峡を渡る船舶や小型航空機の運行に支障が出ていたほどであった。万一、悪天候で海路や空路が遮断されたら、目玉商品の1頭がせり場に来られなくなると、アルカナの担当者がおおいに気を揉むという一幕があったのである。

 血統的にアメリカ色が強かったことから、価格は9万ユーロというお手頃なものに落ち着いたが、それぐらい評判の高かった馬であることを、POGファンの皆さんは来年の春までぜひ記憶にとどめておいていただきたいと思う。

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合田直弘

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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