ロードカナロア産駒が高松宮記念3勝目 サトノレーヴの配合が大成功といえるワケ

2025年03月31日(月) 18:00 9

血統で振り返る高松宮記念

【Pick Up】サトノレーヴ:1着

 ロードカナロア産駒はダノンスマッシュ、ファストフォースに次いで高松宮記念3勝目。中京が新コースになった2012年以降では種牡馬別の単独トップです。ロードカナロア自身も2013年に勝っています。

「ロードカナロア×サクラバクシンオー」というスプリントチャンピオン同士の配合は大成功しており、サトノレーヴのほかにファストフォース、テイエムトッキュウ、キルロード、サンキューユウガなど、コンスタントに活躍馬が誕生しています。連対率35.4%、1走あたりの賞金額505万円、という数字は、総出走回数が300回に達しようとする配合としては異例の好成績。ロードカナロア産駒全体は連対率19.6%、1走あたり236万円なので、この配合の優秀さがお分かりいただけると思います。中京芝1200mに限ると[5-5-4-9]。勝率21.7%、連対率43.5%、複勝率60.9%と驚異的。高松宮記念でも好成績を挙げており、ファストフォース1着、キルロード3着という成績があります。前者は12番人気、後者は17番人気ですから、好走して当然の馬が好走したわけでもありません。

 サトノレーヴの半兄ハクサンムーンは当レースに4回出走し、勝てはしなかったものの2着、3着と好走経験があります。母チリエージェはセントウルS(GIII)5着馬で、繁殖牝馬として優れた能力を発揮しました。

 サトノレーヴは日高町の白井牧場の生産馬。同牧場の社長だった白井岳さんは、残念ながら昨年4月に47歳の若さでお亡くなりになりました。19歳でオリンピック代表となった障害飛越のエキスパートで、分け隔てなく人に優しい紳士でもありました。サトノレーヴの晴れ姿をご覧いただけなかったのが残念です。

血統で振り返る毎日杯

【Pick Up】ファンダム:1着

 父サートゥルナーリアにとって初の重賞勝ち馬となります。JRAの重賞勝ち馬を出した新種牡馬は、タワーオブロンドン(パンジャタワー)、アドマイヤマーズ(エンブロイダリー)、モズアスコット(ファウストラーゼン)に次いでこの世代4頭目です。

 サートゥルナーリアは現役時代に皐月賞、ホープフルSなどを勝ちました。兄のエピファネイア、リオンディーズがすでに種牡馬として結果を出しているので、産駒がデビューする前から生産界での評価も高かったのですが、期待にたがわぬ活躍ぶりを見せています。この世代の種牡馬別獲得賞金は、キズナ、エピファネイアに次いで第3位です。

 母ファナティックは1勝馬。2代母グレイトフィーヴァーはフランスからの輸入馬で、ヴェローナシチー、シャルール、シュペルミエール、モンドデラモーレ、カニキュル、アーデントといった活躍馬が出ています。重賞を勝ったのはファンダムが初めて。「母の父ジャスタウェイ」はこれまで目立った活躍がなく、芝よりもダートの成績が良かったのですが、ファンダムという芝向きの大物が現れました。評価が変わっていきそうです。

 サートゥルナーリアの父ロードカナロアと、ジャスタウェイの父ハーツクライはニックスの関係にあり、直接の組み合わせでは国内外で7頭の重賞勝ち馬が出ています。サートゥルナーリア産駒の牝馬の代表格であるコートアリシアンは母の父がハーツクライ。ファンダムと同じくこのニックスを踏襲しています。

知っておきたい! 血統表でよく見る名馬

【カルドゥン】

 フランス産馬。同国で走り、重賞は勝てなかったものの、エドモンブラン賞(G3・芝1600m)やパレロワイヤル賞(G3・芝1400m)で2着となりました。

 種牡馬になると、このレベルの競走馬としては稀な成功を収め、メルカル(仏G1カドラン賞)、シーユースーン(米G1ラモナH)、ラクーミア(米G1ゲイムリーH)をはじめ多くの重賞勝ち馬を出しました。

 ちなみに、アメリカへ渡って活躍したシーユースーンが勝ったラモナHはステークスレコード、ラクーミアのゲイムリーHはトラックレコード。ヨーロッパ血統ながら時計の速いアメリカの芝競馬でも強さを見せました。2歳戦でも強さを発揮したように、仕上がりの早さも特長のひとつでした。カルドゥンは、その父カロのスピードや切れ味に加え、日本でも供用されたヴェンチアを母方に持つことで、レリック4×4というインブリードを持っています。レリックはアメリカでハイレベルなスピードを伝えた名血です。

 日本で供用されたチチカステナンゴは、カルドゥンの直系の孫。前出のメルカルは繁殖牝馬として秋華賞馬ファビラスラフインを産みました。輸入繁殖牝馬グレイトフィーヴァー、ヴィアンローズにもカルドゥンは含まれています。毎日杯を勝ったファンダムは前者の孫です。

血統に関する疑問にズバリ回答!

「ヨーロッパとアメリカの双方でチャンピオンサイアーとなった種牡馬はいますか?」

 イギリスとアイルランドは種牡馬統計を合算しています。イギリス・アイルランドと、アメリカの双方で首位に立った種牡馬は過去3頭存在します。

 プライアム(Priam/1827年生)

 ナスルーラ(Nasrullah/1940年生)

 ノーザンダンサー(Northern Dancer/1961年生)

 最初に達成したプライアムは19世紀前半の馬。1830年に英ダービーを制覇するなど通算19戦17勝の成績を挙げ、イギリスで種牡馬入りしたあと1837年にアメリカへ。イギリス・アイルランドで1839、40年に、アメリカで1842、44~46年にチャンピオンサイアーとなっています。イギリスで12戦全勝の成績を残した女傑クルシフィックスが代表産駒です。

 ナスルーラ(英愛1951年、米55、56、59、60、62年)とノーザンダンサー(英愛1970、77、83、84、米71年)は、言わずと知れた歴史的な大種牡馬。いずれも巨大なサイアーラインを形成して世界を席巻しました。後者はカナダとアメリカで種牡馬生活を送り、ヨーロッパに渡ることなくイギリス・アイルランドの首位種牡馬となり、その直系子孫は現代の主流ラインとなっています。

 ちなみに、フランスとアメリカの双方で首位に立った馬にはリファール(Lyphard/1969年生)がいます。フランスで1978、79年に、アメリカで86年にチャンピオンサイアーとなりました。同馬はノーザンダンサーの息子です。

バックナンバーを見る

このコラムをお気に入り登録する

このコラムをお気に入り登録する

お気に入り登録済み

栗山求

netkeibaでもおなじみの血統評論家・栗山求氏が血統の面白さを初心者にもわかりやすくレクチャー。前週の振り返りや、週末行われるレースの血統的推し馬、豆知識などを通して解説していきます。 関連サイト:栗山求の血統BLOG

関連情報

新着コラム

コラムを探す