2025年03月31日(月) 18:00 10
単勝オッズ3.8倍(2番人気)のサトノレーヴが優勝(c)netkeiba
netkeibaにある膨大な競走成績を人工知能によって機械学習するAiエスケープを開発したAIマスター・Mと、レースデータの分析を専門とする競馬評論家・伊吹雅也による今週末のメインレース展望。コンピュータの“脳”が導き出した注目馬の期待度を、人間の“脳”がさまざまな角度からチェックする。
(文・構成=伊吹雅也)
AIマスターM(以下、M) 先週は高松宮記念が行われ、単勝オッズ3.8倍(2番人気)のサトノレーヴが優勝を果たしました。
伊吹 強かったですね。好スタートを決めて流れに乗り、行きたい馬を先に行かせる形で道中は中団を追走。先行勢のすぐ後ろでレースを進め、ゴール前の直線入り口で馬場の外めに持ち出しています。残り200m地点の手前でさらに外へと進路を切り替え、先に抜け出しかけていたママコチャ(3着)を猛追。並ぶ間もなくかわして先頭に立ち、後方から伸びてきたナムラクレア(2着)の追撃も凌ぎ切って入線しました。結果的に差し馬が上位を占めたものの、終始危なげのないレース運びでしたし、もう少し先行有利な流れだったとしても優勝争いに絡んでいたはず。完勝と言って良いでしょう。
M サトノレーヴはGI初制覇。オープンクラスのレースを勝ったのは昨年4月の春雷Sが初めてで、そこからまだ一年も経っていません。
伊吹 昨夏には函館スプリントSとキーンランドCを連勝し、サマースプリントシリーズチャンピオンのタイトルを獲得。前走の香港スプリントでも、勝ち馬カーインライジングから0.1秒差の3着に健闘しています。6歳馬ですが、休養を挟みながら使われてきたこともあり、今回の高松宮記念が通算12戦目。半兄ハクサンムーンも長く重賞戦線で活躍した名スプリンターですから、まだまだ伸びしろはあるはずです。
M ちなみに、単勝オッズ14.6倍(6番人気)の低評価を覆して3着となったママコチャは、前回の当コラムでAiエスケープが注目馬に指名していました。
伊吹 ちょうど本格的な春のGIシーズンに突入したところですし、上々の滑り出しと言えるのではないでしょうか。一昨年のスプリンターズSを制しているGIウイナーであり、前哨戦のオーシャンSでも優勝を果たしていたことを考えると、過小評価され過ぎだったように思います。スプリングS1着のピコチャンブラック、中山記念1着のシックスペンス、京都記念1着のヨーホーレイクなど、今年の序盤はAiエスケープの推奨馬がコンスタントに好走を果たしている印象。テンハッピーローズの指名に成功した昨年のヴィクトリアマイル前もこのくらい好調でしたから、近いうちにまた大仕事を成し遂げてくれるかもしれませんね。
M 今週の日曜阪神メインレースは、古馬中距離戦線のトップホースが集結する注目の一戦、大阪杯。昨年は単勝オッズ5.5倍(2番人気)のベラジオオペラが優勝を果たしました。なお、その2024年は単勝オッズ6.0倍(3番人気)のローシャムパークが2着、単勝オッズ40.0倍(11番人気)のルージュエヴァイユが3着という結果で、3連単の配当は9万3050円。2022年には3連単53万7590円の高額配当が飛び出しています。
伊吹 GIとして施行された2017年以降の大阪杯における3連単の配当は、平均値が11万3853円、中央値が6万2145円。堅く収まった年も多いのですが、ある程度は伏兵の台頭を警戒しておくべきでしょう。
M ただ、過去8年の単勝人気順別成績を見ると、上位人気馬の好走率はそれぞれ及第点と言える水準。決して高くはないものの、他のレースと比べて極端に見劣りするわけではありません。
伊吹 より実態に即した区切り方をすると、単勝2番人気から4番人気の馬は2017年以降[4-4-3-13](3着内率45.8%)、単勝5番人気から11番人気の馬は2017年以降[2-3-3-48](3着内率14.3%)、単勝12番人気以下の馬は2017年以降[0-0-0-29](3着内率0.0%)となっていました。人気薄の馬を狙っても良いのですが、その場合も上位人気グループの馬を安易に軽視してしまわないよう心掛けるべきだと思います。
M そんな大阪杯でAiエスケープが指名した特別登録時点の注目馬は、ボルドグフーシュです。
伊吹 興味深いところを狙ってきましたね。実績上位と言える存在ではあるものの、今回はかなり人気を落としそう。
M ボルドグフーシュは3歳時の菊花賞で2着に食い込んでいる馬。4歳時の上半期シーズン終了後に故障が判明して長期休養へ入り、昨年末のチャレンジC(4着)で復帰を果たしています。前走のAJCCは勝ったダノンデサイルから0.5秒差の4着。完全復活にはもう少し時間がかかると見ている方も多いのではないでしょうか。
伊吹 これまでのところ2000m超のレースが[2-3-2-2](3着内率77.8%)なのに対し、2000m以下のレースは[1-0-1-3](3着内率40.0%)。距離適性を不安視する向きもあるでしょうから、積極的に狙おうと考えている方は少ないかもしれませんね。Aiエスケープが中心視していることを踏まえたうえで、私はレースの傾向からこの馬の好走確率を見積もっていきたいと思います。
M 最大のポイントはどのあたりでしょう?
伊吹 やはり内枠不利・外枠有利なレースである点は押さえておきたいところ。2020年以降の3着以内馬15頭中12頭は枠番が5枠から8枠でした。
M はっきりと明暗が分かれていますね。
伊吹 2024年は1枠2番のローシャムパークが2着に健闘したものの、単勝オッズ4.4倍(1番人気)の支持を集めていた2枠3番のタスティエーラは11着に敗退。内寄りの枠を引いてしまった馬は基本的に強調できません。
M 今の時点では何とも言えませんが、好枠を引き当てることができればより楽しみです。
伊吹 あとは前年のビッグレースにおける実績も重要なファクターのひとつ。同じく2020年以降の3着以内馬15頭中12頭は、“前年以降の、JRAの、3000m未満の、GIのレース”において6着以内となった経験がある馬でした。
M 天皇賞(春)や菊花賞を除くGIで善戦してきた馬が中心、と。
伊吹 なお、この経験がなかったにもかかわらず3着以内となった3頭は、いずれも出走数が11戦以内、かつ生産者がノーザンファームの馬。キャリアの浅いノーザンファーム生産馬でない限り、先程挙げた条件をクリアしていない馬は過信禁物と見るべきでしょう。
M 長期休養の影響があったとはいえ、ボルドグフーシュは昨年のGIに出走していない馬。キャリア14戦の社台ファーム生産馬ですし、残念ながらこの傾向からは高く評価できない一頭ということになります。
伊吹 さらに、同じく2020年以降は、前走で出走メンバー中上位の上がり3ハロンタイムをマークした馬が優秀な成績を収めていました。
M こちらも面白い傾向。末脚を活かしたいタイプに注目した方が良さそうですね。
伊吹 おっしゃる通り。先行策で好走を果たした馬もいますが、そういう競馬しかできないタイプは疑ってかかるべきでしょう。
M ボルドグフーシュは前走の上がり3ハロンタイム順位が3位。大阪杯向きの脚質と言えます。
伊吹 私はそれほど高く評価していなかったのですが、外枠を引き当てることができたら怖い一頭ですよね。思いのほか人気がなさそうなうえ、Aiエスケープが有力と見ているのであれば、押さえておくに越したことはなさそう。もちろん、Aiエスケープを全面的に信じてこの馬から買うのもひとつの手でしょう。
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伊吹雅也
競馬評論家。JRAの公式ホームページ内「今週の注目レース」にて“データ分析”のコーナーを、TCK(東京シティ競馬)の公式ホームページ内「分析レポート」にて重賞競走のデータ分析を担当しているほか、グリーンチャンネル、JRAのレーシングプログラム、『週刊アサヒ芸能』、『競馬王』などさまざまなメディアを舞台に活動している。主な著作に『WIN5攻略全書 回収率150%超!“ミスターWIN5”のマインドセット』、『コース別 本当に儲かる騎手大全』シリーズ、『コース別 本当に儲かる血統大全』シリーズ、『ウルトラ回収率』シリーズ(いずれもガイドワークス)など。