競走馬に寿命全うの場を 土岐の乗馬クラブ

2018年02月04日(日) 07:36 6 35

中日新聞
「競走馬に寿命全うの場を 土岐の乗馬クラブ」


愛知県との県境にある土岐市鶴里町に、引退馬が余生を過ごす乗馬クラブがある。昨年、愛知県の乗馬クラブから独立した芦沢博之さんがオープンさせた。殺処分される馬を救うモデルケースを確立しようと奔走している。

●老馬を養う若い馬
土岐市中心部から車で三十分。芦沢さんの乗馬クラブ「エクイヴィラ」は国道363号沿いの山の中にある。名古屋からも車で一時間の距離だ。

若い馬が年老いた馬を養う。それがこの乗馬クラブの特徴だ。現在クラブには十一頭の馬がいる。いずれも「引退馬」と呼ばれる現役を退いた元競走馬だ。

馬の中には年を取り、足腰が弱くなって人を乗せることのできない馬もいる。そんな馬の代わりに、四頭いる若い馬が乗馬レッスンで餌代を稼ぐ。老いた馬は健康維持のための散歩などをしながら静かに暮らしている。

●引退馬の行方
転機となったのは馬の涙だ。乗馬クラブである日、家畜車に乗せられ処分場に連れてかれる馬が涙を流す姿を見た。処分されない仕組みをつくることが芦沢さんの目標になった。


「競走馬の引退後はパンドラの箱」と語る。競走馬は四、五歳で引退し後は各地の乗馬クラブに引き取られることが多い。

しかし、乗馬クラブに再就職した馬も、老いると「入れ替え」で処分場行きが決まる。馬の寿命は三十歳くらいだが、乗馬クラブでは十七、八歳になると、競馬引退直後の若い馬と交換される。「馬を年取ったから処分してるなんて話、乗馬クラブとしては隠しておきたいですよね」と話す。

●手作りの家
馬が寿命を全うできる場所をつくる。そう決めたが、お金がなかった。厩舎と馬場はすべて手作りで完成させた。厩舎に使う木材は、節が多く製品にならない材料を譲ってもらった。そして愛知県などから引退馬を受け入れた。

「経営的には厳しいですよね。仕事しない人雇うようなものだから」クラブは二人で運営しているが、もう一人のスタッフは兼業で生計を立てている。

最年長の「銀河」は今年で二十九歳。白内障を患い、自分の餌おけすらはっきり見えない。「感覚で餌おけの位置を覚えてるから、交換の時に五十センチでもずれるとわかんなくなっちゃうみたい」と芦沢さんはいとおしそうに見つめる。

「動物を絶対に殺すな、とは言わない。でもむやみに処分しなくてもいい仕組みはできるはずなんです」

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