鞍上の読みと瞬時の判断でキタサンミカヅキ/東京盃回顧(斎藤修)

2018年10月11日(木) 19:00

8歳馬のキタサンミカヅキが連覇を果たした(撮影:高橋正和)

 ダートの短距離では日本で唯一のGI/JpnI、JBCスプリントへ向け最重要ステップとなる東京盃。注目となったのは、プロキオンSをコースレコードで圧勝し、単勝1.5倍という圧倒的な支持を集めたマテラスカイ。その勝ち方が強かったとはいえ、JBCでは地方枠もあるため、重賞1勝のみの賞金では出走できるかどうか微妙。勝って優先出走権(1着馬のみ)を得たいところだった。しかし勝ったのは、船橋のキタサンミカヅキで、昨年に続くこのレース連覇となった。

 キタサンミカヅキのレースぶりで驚かされたのは、内を突いて差し切ったこと。昨年夏に船橋に移籍してきたキタサンミカヅキは、中団〜後方から常に直線大外にもちだし一気の末脚を生かす走りで好走を続けてきた。それが今回、4番枠からのスタートで、どこで外に持ち出すのだろうと見ていたところ、ついに最後までラチ沿いを走り、直線半ば過ぎで勢いをなくしたマテラスカイと、そのすぐ外から先頭に立ったネロの間を突いて差し切った。

 レース後、森泰斗騎手にじっくり話を聞いたなかで、ポイントは2つあった。

 まずひとつは、キタサンミカヅキにとっては普段より前目の5番手につけたこと。「逃げるマテラスカイネロが同厩舎だし、外枠のクリストフ(グレイスフルリープ)も堅く乗るタイプで、ある程度予想していたとおり、落ち着いた流れになったと思います」というペースは、前半が34秒4、レースの上がりが37秒7で、勝ちタイムは1分12秒1。キタサンミカヅキはメンバー中、上がり最速の37秒4だった。

 この前半34秒4というのは、奇しくもグレイスフルリープが逃げ切った今年の東京スプリントとまったく同じ。そのときのグレイスフルリープは上がり37秒4で逃げ切っていた。そして外から追い込むも、1馬身半届かず2着に敗れていたのがキタサンミカヅキ。そのときの鞍上は繁田健一騎手で、さきたま杯でも2着に敗れたあと乗り替ったのが森泰斗騎手。今回、逃げる馬は違うものの、落ち着いた流れになれば同じように届かずという結果になるであろうことも考えての5番手という位置取りだったのだろう。

 ポイントのもうひとつは、外を回すことにこだわらず、腹をくくって内を突いたこと。どのあたりで内を突こうと決めたのか聞いたところ「4コーナー手前」と。前4頭、先に挙げた2頭に、サクセスエナジーグレイスフルリープが雁行状態で並んで、それぞれ手応えもよかったので、外に持ち出すのは無理だろうと判断したとのこと。

 大井の長い直線であれば、内々を進んでいた馬が直線を向いてから外に持ち出して差し切るという場面もめずらしくはない。しかし森騎手は外に持ち出すチャンスはないと、早めに判断した。もしいつまでも外へと考えていて、その判断に一瞬でも迷いがあれば、ゴール前で抜け出していたネロを差し切ることは、おそらくできなかった。その一瞬の判断こそが、普通の騎手と一流騎手の違いなのだろう。

 それにしても、脚色がにぶったマテラスカイと、伸びていたネロとの、わずか1頭分ほどの間をよく突いたものと思う。そこには、マテラスカイ武豊騎手ネロ戸崎圭太騎手が、際どい勝負でもちゃんとまっすぐ走らせたというフェアプレーもあった。8歳秋になってもなお衰えないキタサンミカヅキの能力はたいしたもの。中央ではオープンで頭打ちになっていたところを蘇らせた佐藤賢二厩舎の厩舎力でもあろう。

 ネロにしてもほとんど勝ったようなレースで惜しい2着。3歳時に一度ダートを使われたことはあるが、昨年以降ダートも使うようになって、1400mではさっぱりだが、1200mでは勝ち星こそないものの一線級を相手に崩れることがない。

 3着のグレイスフルリープは、希望していたコリアスプリントに出走することができず、4カ月ぶりの実戦で能力を発揮した。こちらも8歳でなお衰えを見せない。

 マテラスカイは、大井の1200m戦としては決して速くはない普通のペースで、他馬に競りかけられることもなく逃げたが、直線突き放すどころか最後に失速して4着。輸送してプラス18kgという馬体重もあっただろうし、むしろ前回湿った馬場で走りすぎたと考えるべきか。ここ2、3年、以前と比べると大井の馬場は時計がかかるようになり、時計の出やすい中央からの初戦で、さまざまな条件や環境の違いもあっただろう。ここを勝ってJBCスプリントへの優先出走権を獲りたかったマテラスカイだが、賞金順となると難しいかもしれない。

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