netkeiba.com

一目惚れ、共闘、惨敗…だが、大器グレイルの本領発揮はこれからだ

2018年10月31日(水) 18:10

クラシックは惨敗も松浦が大器と信じて疑わないグレイル

 わずか3戦のキャリアで約3カ月半ぶりの実戦。しかも経験した距離は9Fまで-。関東馬フィエールマンの歴史的とも言える菊花賞制覇で、今年の牡馬クラシックが幕を閉じた。

 その翌週の栗東トレセン。真っ先に会いたい人がいた。今年の牡馬三冠で△◎◎を託した、グレイルを管理する野中賢二調教師だ。結果として、同馬の三冠は6、14、10着-。ダービー菊花賞は見せ場もなく敗れたが、往生際の悪さからか、自分のなかで、まだくすぶり続けるものを感じていた。それを確かめるのが目的だった。

 野中師の第一声は謝罪からだった。「応援してくれたのに、ごめんな」。はた目から見たその様は、君主に仕えた家来のようだったかも知れない。だが、立場こそ違えど、我々は戦いに敗れた。それゆえ、師のひと言はどこか“労い”のように感じられた。

 「おもろなかったなあ」。そう続けた師の言葉のなかにも、何とも言えないくすぶりを感じた。「出の遅さは覚悟していたけど、前半(5F)が1分2秒7ってなあ。行くはずの馬が行かず、みんなポケットに入ってガツンと引っ掛かって…。あんなに早く態勢が決まってしまったら、ウチの馬はどうしようもない」。これも競馬。言い訳無用と言われればそこまでだが、このモヤモヤ感はしばらく晴れそうもない。

 私が初めてグレイルを見たのは、デビュー前の栗東CW。武豊Jを乗せた追い切りの動きに度肝を抜かれた。2歳馬とは思えぬほどのダイナミックな走りに一目惚れ。その時点で「来年のクラシックはこの馬で」と決め込んでいた面もある。

 一方、野中師の初見は1歳セレクトセールの下見だったという。「とにかく馬体が素晴らしかった。あか抜けていたし、皮膚も薄いし…。ただ、ハーツクライ産駒特有の“脚の難しさ”はあった。膝下が悪かったんだけど“まあ、ハーツ産駒ならこんなものか”と。でも調教師の立場からすれば、選びづらい馬であることは確かだよ」。けが等のリスクを凌駕する魅力が、黒鹿毛の若駒にはあった。

 野中師の期待通り、グレイルは新馬→京都2歳Sを連勝。早い段階でクラシック制覇が現実味を帯びてきた。「新馬戦は不良馬場。独特の緩さがある馬だけに“こんな馬場でデビューさせていいのか?”という思いもあった。でも、それも杞憂に終わった。やっぱ、すごい。“持っている馬ってこんなものなのかな”と思ったよ」。

 そして翌年-。屈辱とも言えるクラシック戦線へとつながるわけだが、指揮官が白旗をあげることなど毛頭もなく、リベンジへの思いはこれまで以上にメラメラと燃えている。「能力はあんなもんじゃない。あの(緩い)状態で京都2歳Sを勝つぐらいの馬だし、凡走したレースにも全て理由がある。やはり、あの脚の使い方、そして底力は一流馬特有のものがある。心身ともに課題があり、本格化はまだ先だけど、今後も芝の中長距離をターゲットに大きいところを狙っていきたい」。

 菊花賞の大敗は誰が悪いわけでもない。だが察するに、野中師のはらわたは煮えくり返っていることだろう。最後のひと言が印象的だ。「こういう負け方をすると、人間の感情だけですぐ次のレースに使ってしまいがちやん(笑)。でも、それだけはやってはいけないと思っている。甘やかし過ぎず、それでいて焦り過ぎず。パンとしたら(大舞台で)絶対に勝負になる馬だから、成長に合わせたローテを組んで大事に育てていきたい」。そのグッとこらえる指揮官の姿に、今後のリベンジを確信した。

 私自身、グレイルには多くのことを学ばせてもらった。結果として、牡馬三冠では悔しい思いをしてきたが、陣営とともに最前線で戦うことができたのは大きな財産であり、競馬記者冥利に尽きる。ビッグタイトルを手にする日を信じて、この先もともに戦っていきたい。大器の本領発揮はこれからだ。(デイリースポーツ・松浦孝司)

関連情報

みんなのコメント

非表示の使い方
  • をタップすることで指定したユーザーの投稿を常に表示しないようにすることができます(ミュート機能)。
  • ※ミュート機能により非表示となった投稿は完全に見えなくなります。このため表示件数が少なく表示される場合がございますのでご了承ください。なお、非表示にしたユーザーはマイページからご確認いただけます。
  • 新着順
  • いいね順

新着ニュース

アクセス数ランキング

注目数ランキング

ニュースを探す

カテゴリから探す