母馬から感じる天賦の才 オジュウチョウサンのルーツ〜坂東牧場〜後編

デイリースポーツ

2018年12月18日(火) 06:00

 オジュウチョウサンの母シャドウシルエットと成田博行繁殖厩舎長=北海道日高町坂東牧場

 「有馬記念・G1」(23日、中山)

 異色の挑戦者か、それとも究極の二刀流ホースか!?前代未聞のチャレンジに挑む障害G1・5勝を誇るハードル界の絶対王者。注目を集めるオジュウチョウサンのルーツを探る連載を前後編でお届けする。今回は後編。

  ◇  ◇

 生産牧場と繁殖牝馬の関係にはさまざまな形態があるが、オジュウチョウサン母シャドウシルエットは長山オーナーが所有。牧場に委託管理するという形だ。

 交配相手もオーナーが選ぶ。1番子のケイアイチョウサンも、2番子のオジュウチョウサンステイゴールド産駒で全兄弟だが、初産の兄が体格において小さく収まったのは、母馬の安産能力の一端なのだろう。両者は、デビュー時の体重にして兄444キロに対し、弟490キロ。ひと回り以上違う。

 未経産馬は子宮や産道を広げられたことがなく、出産時のリスクを下げるために初子は小さめが望ましい。例えば牛でも、大型酪農種のホルスタインが初子を取るとき、子が雌でも乳牛として使えないことを受け入れて、あえて小型の黒毛和種をつけたりする。

 ステイゴールドは、種馬としては小柄な部類。もとより繁殖学的な好条件も満たしていたが、1頭目を小さく2頭目を大きく生んだのは、理にかなった母馬の天賦の才を感じさせる。

 平地未勝利での勝ち上がりが間に合わず、障害のチャンピオンホースになってからの平地・最高峰挑戦。回り道はしたが、その血が花開く可能性は十分にあった。「普段の気の荒さはあったが、ブレーキングの段階から操作性が高くて乗りやすかった馬です。僕らが基礎を作ったのが生きたのかな。やる時は、やる子ですよ」とは、坂東牧場の坂東正積社長(43)。その“やる時”は、いよいよ5日後に迫っている。

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