この舞台でこそオメガパフューム/東京大賞典回顧(斎藤修)

2019年12月30日(月) 18:00

東京大賞典を連覇したオメガパフューム(撮影:高橋正和)

 人気を集めた実績のある中央3頭は明暗が別れた。大井の2000mが舞台となって存分に能力を発揮したオメガパフュームに対して、ゴールドドリームケイティブレイブは能力を発揮しきれなかった。

 これといった逃げ馬がいないメンバーで、行くのはロンドンタウンか、それとも久しぶりにケイティブレイブが逃げる手もあるかと思って見ていたが、ハナを主張したのは最内枠のアポロテネシーだった。

 ぴたりとケイティブレイブ、さらにゴールドドリームも差なく続いて、そのうしろのロンドンタウンだけがちょっと力んで走っているようにも見えた。1000m通過61秒6は、2000mのGIとしては平均的なペース。オメガパフュームはやや差があっての中団。この馬がその位置につけられたということは、やはりそれほど速いペースではなかったのだろう。同じ位置の内にノンコノユメモジアナフレイバーはそのうしろを追走した。オメガパフュームの勝ちタイムは2分4秒9で、後半1000mは63秒3。前後半のタイム差が2秒以内で、有力勢は位置取り的にも、どの馬にも能力を発揮できる展開だった。

 3コーナー過ぎで動いたのがオメガパフューム。抜群の手応えで前との差を詰め、4コーナーでは早くもゴールドドリームの直後。直線を向いて並びかけると、直線半ばからじわじわと差を広げ、内から迫るノンコノユメを振り切った。

 オメガパフュームはこれで大井2000mは4戦3勝。負けたのはジャパンダートダービーでのルヴァンスレーヴの2着だけ。その当時、ルヴァンスレーヴは圧倒的に強かったし、オメガパフュームもまだ完成していたとはいえない。予想の中で『大井2000mで能力を発揮するオメガパフューム』としたが、今回それを確信した。もっとレースが流れれば、帝王賞のときのように後方を追走して直線で長い脚を使うこともできるし、今回のように平均ペースで流れれば、好位のうしろを追走し、早めに動いて前をつかまえに行くこともできる。これが中京1800mや東京1600mになるとレースが忙しくなり、オメガパフュームには脚の使いどころが難しくなる。左回りが不得意とも言われるが、安田翔伍調教師は「左回りも苦手意識はない」という。たまたまダートGIの舞台の距離設定がそうなっているだけの不運なのだろう。仮にチャンピオンズCが初期のジャパンCダートの舞台だった東京2100mなら、オメガパフュームはもっと強いパフォーマンスを発揮するかもしれない。

 1馬身差で2着はノンコノユメ。復活というより、能力を出せる状態に戻ったと言ったほうがよさそうだ。その要因として、中央では禁止されているが、地方ではゲートで『尾持ち』ができることがよく言われる。スタートの際、ゲートの後ろで厩務員などが馬の尾を持って、スタートのタイミングで放すと、出遅れグセがある馬でもうまくスタートが切れるという。ただそれもいくつもある要因のひとつに過ぎない。中央に在籍していた最後のころはゲート裏からテンションが高くなって、ゲートに入るとさらに暴れたりでまともなスタートが切れなくなっていた。大井(厩舎は小林分厩だが)に来てそれもかなり落ち着いたのは、さまざまに環境が変わったからなのだろう。

 ノンコノユメは、それでレースぶりも変わった。スタートが互角に切れるようになったことで、中団から、ときには好位でもレースができるようになった。それを象徴するのが、7月のサンタアニタトロフィー。中団を追走して4コーナーでは内を突き、先頭から3、4馬身ほどの差の4番手から抜け出した。今回もオメガパフュームとほぼ併走の内を追走し、直線を向いたところでも狭いところを抜けてきた。オメガパフュームゴールドドリームを交わしていくところでは、その内を同じような脚どりで伸びていた。最後、1馬身差は惜しかったが、さすがに力負けだった。

 モジアナフレイバーはそこから2馬身差で3着。3、4コーナーでオメガパフュームが進出したとき、連れて進出したこの馬の手応えも抜群だった。直線を向いて、そのまま大外から突き抜けるのではないかとも思えた。オメガパフュームの直後で食い下がっていたが、最後の100mで息切れ。そこで差をつけられた。昨年の東京大賞典が9着、今年の帝王賞が5着、南部杯が4着、そして今回が3着。その着順のとおり、確実に力をつけている。ただ2000mはこの馬には微妙に長いか。これが1800mだったらもっと際どい勝負をするかもしれない。

 ただこのメンバーで1800mになれば、またレース展開も違うし、結果も違うものになるだろう。それが今回4着だったゴールドドリーム。直線を向いて、しばらくはオメガパフュームと並んで叩きあったが、残り200mを切って、まるでレースをあきらめたかのように失速した。昨年の帝王賞を勝っているが、大井の2000mは微妙に長い。中京1800mや東京1600mならゴールドドリーム、大井2000mならオメガパフューム、そういう適性の差なのだと思う。適性というよりも、それぞれの舞台で、自身の力が最大限に発揮できる流れや展開になりやすいと言ったほうが正確かもしれない。

 ドバイでの疝痛手術から、浦和記念で奇跡ともいえる復活を遂げたケイティブレイブだったが、残念ながら8着。アポロテネシーがハナを切って、その2番手は願ってもない展開だったと思われる。直線を向いたところですでに手応えが一杯だったのは、休み明けの前走で目一杯走ってしまった反動かもしれない。ベストの状態なら、展開的にもオメガパフュームとゴールまで追い比べになったと思われる。

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