引退馬の6割が行方不明…「安心な余生を」

2020年06月26日(金) 21:01 1 23

 競馬の世界から引退する競走馬の約6割、約3700頭が行方不明――。「この現状は健全か」。こんな疑問を抱く牧場経営者の青年が、引退後の余生を安心して過ごせる場を築こうと立ち上がった。施設整備のためクラウドファンディングで資金を募り、月末の期限を前に目標額1500万円まであと約160万円(25日夜現在)に迫る。

 「引退馬が安心して余生を過ごせるモデルケースをつくりたい」。こう語るのは、北海道日高町の牧場「ヴェルサイユリゾートファーム」代表を務める岩崎崇文さん(28)。

 「施設整備は、業界関係者を含め本当に考えなければならない『命』と向き合う事業」と語り、競馬ファンと共に業界の仕組みを動かす日は近いと呼び掛ける。

 引退馬を巡っては、JRAが2017年12月、「引退競走馬に関する検討委員会」を設置し、環境改善を議論する。委員の推計によると、引退馬のうち約6割に当たる約3700頭の行方が把握できない。業界関係者は「繁殖馬として活躍する馬もいるが、繁殖を終えると扱いが難しく利益も生まないため、殺処分したり馬肉業者に引き渡したりするケースが多い」と話す。

 約5年前、東京の大学に通っていた岩崎さんは、卒業を前に就職先も内定していたが、競走馬の牧場を経営していた父親が病死。牧場経営を引き継いだ。競走馬の生産者として過ごすうち、引退馬の実情を知った。「しっかりと余生を送らせてあげたい」。18年6月、引退馬を専門に扱う牧場として「ヴェルサイユリゾートファーム」を設立した。

 だが、運営資金の問題に直面した。1頭当たり費用は最低月7万円。24頭を抱える牧場にとって、JRAからのわずかな助成金や支援者からの寄付では限界があると感じた。

 そこでたどり着いたのが、牧場の施設拡充だ。宿泊施設やレストランを併設し、かつてG1を制したローズキングダムをはじめ、アドマイヤジャパンなどの引退馬を主役に観光客を呼び込み、安定的な収益確保を図る計画。この整備費用をCFで募っている。

 JRAで通算1918勝を挙げた元騎手の藤田伸二さんは17日、この牧場を訪問。11年の天皇賞(G1)を制した「戦友」、ヒルノダムールに騎乗し、こう言った。「馬たちが穏やかに過ごせる場所があってよかった」

 このCFは目標額に達成した場合のみ支援金を受け取れる「達成時実行型」。残り5日、あと一歩だ。

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