【矢作調教師】ハーツクライの偉大さを実感

2021年06月23日(水) 07:15 0 1

 ハーツクライの種牡馬引退が発表された。

 2005年12月、臨場業務のため中山競馬場に向かっていると、新幹線を降りた所で偶然、橋口弘次郎師に出会った。中山への道すがら、話題は当然当日の有馬記念に。「1頭怪物がいるからなぁ」と大本命ディープインパクトには一目置きながらも、ハーツクライの状態にはとても自信を持っているようだった。

 そしてディープが国内で唯一土をつけられた伝説のあのレース、ハーツクライは勝った。レース直後橋口師に祝福の言葉を伝えると、師は心ここに在らずという感じ。あれだけのレジェンドが大興奮する姿を見て、開業初年度で何の実績もなかった自分もいつかはこのレースを勝ちたいと心に刻んだのだった。

 それから14年という月日が流れ、有馬記念制覇という自分の夢はハーツクライの仔リスグラシューで叶えられた。その夢のステップとなったのが宝塚記念である。

 その年は春の香港遠征で惜敗した後、目標を宝塚記念に定めて調整していた。海外帰りの牝馬であり、難しい仕上げになるかと思っていたが、リスグラシューはどんどん調子を上げていった。明らかに馬が成長して覚醒していた。今までにはなかった先行策で宝塚記念を勝利。そしてコックスプレート、有馬記念とさらなる進化を遂げていく。5歳の牝馬がラストランに向けてあれだけ成長する姿を見せたのは調教師として初めての感触であり経験だった。それがハーツクライの偉大さなのだと今改めて思う。

 宝塚記念ウイークがやってきた。今年もこのレースを契機に覚醒するような馬が現れるのだろうか。

 ■矢作 芳人(やはぎ・よしと)1961(昭和36)年3月20日、東京生まれの60歳。父は大井競馬の矢作和人元調教師。開成高を卒業後、豪州での修業を経て84年に栗東トレセンへ。厩務員、調教助手を経て2005年に厩舎開業。22日現在、JRA通算706勝、重賞50勝(うちGI13勝)。ほかに海外GI3勝、交流GI3勝。

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