「スクミ」って何だ?

2021年07月30日(金) 10:55 0 4

クイーンSに出走するウインマイティーの最大の課題は秋華賞の3〜4コーナーで内外からぶつけられたことを覚えていて似たようなところでやめてしまう“トラウマ(心的外傷)”の克服だ。ここは春を全休したことで一定のめどは立った。もうひとつの懸案として、帰厩に向けての調整中に「スクミ」を呈したという知らせがある。
 「足がすくむ」など、恐怖で体が動かなくなるという意味で「竦」の字で表記する「すくむ」とは、まったく意味が異なる。競馬ファンの多くが「分かったようで分からないまま放置している競馬用語」なのではと、記者は思っている。
 競走馬の疾患のほとんどは、獣医師が使う診断名よりも、厩舎用語で伝えた方がわかりやすい。「管骨骨膜炎」よりも「ソエ」、「蜂窩(ほうか)織炎」「フレグモーネ」より「キズ腫れ」の方が、おそらくわかりやすい。ただ「スクミ」は数少ない例外だろう。
 「筋色素(ミオグロビン)尿症」。これなら名前からある程度のイメージはつくかと思う。筋肉が何かダメージを負って筋由来の色素が血中に溶け出し、最終的に尿に混ざって出る。読んで字のごとしである。
 スクミで尿に出てくる色素はミオグロビン。赤血球で酸素を運ぶヘモグロビンの仲間で、ヘモグロビンより酸素との結合力が強い。筋線維では、酸素をため込むために使われている。筋組織は常に破壊と再生を繰り返しているが、破壊が亢(こう)進して血中に出てくるミオグロビンが多くなると尿が黒くなる。
 発症の局面では運動負荷が強すぎて筋線維の破壊が行きすぎた状態であることを示すが、筋が厚くなっていくためには一度、筋線維が破壊されることが必要だ。今年43歳の記者にとって、プロレスの故・橋本真也さんは、世代的にヒーローのひとりだった。彼の名言「破壊なくして創造なし」というのは、偶然なのか意図されたものなのか、アスリートが筋肉をつけていく様を的確に表している。
 筋肉の急激な破壊と、その後の創造を経たウインマイティーは、フィジカルな側面でも、かなりのパワーアップを遂げて復帰戦に臨む。侮ってはならない。

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