2014年07月30日(水) 17:59 29
ついに勝ち星がゼロになってしまったときは、自分でもビックリでしたよ。周りからも「調教師の勉強を始めたらどう?」とか、「助手に転向したらどう?」とか、「今のままでは、この先どうなるかわかるだろ?」とか、いろいろ言われました。そんなことは自分でもわかっていたんです。でも、どうしても辞めたくなかった。僕がこの世界に入ったのは、調教助手になるためでも調教師になるためでもない。今、辞めたら絶対に後悔すると思いました。そんな状況になっても、ジョッキーという仕事をあきらめきれなかったんですね。
▲大知「ジョッキーという仕事をあきらめきれなかった」
子供もふたりいましたから、家計は大変だったと思います。それこそ、助手に転向すれば収入は安定しますから、考えなかったわけではありません。でも、嫁さんは何も言いませんでした。むしろ「自分が納得するまでやったほうがいいよ」と言ってくれて。トレセンにいる時間はすごくつらかったんですけど、家に帰ればいつも変わらず明るく迎えてくれたんです。調教手当をもらうために、毎日ギリギリの頭数までスケジュールを組んでいましたから、家に帰るころにはそれこそヘトヘトだったんですけど、明るく迎えてくれる家族のおかげで、日々リセットすることができたんだと思います。
そんな嫁さんも2008年だったかな、「(家計的に)もう本当にきつい」と…。それまでずっと我慢して、必死にやりくりしてくれていたと思うんですけど、0勝が何年か続いて本当にきつかったんだと思うし、嫁さんも覚悟をして言ったんだと思います。その言葉を聞いて、自分も「ああ、もう無理かな」って。「そろそろ考えなくちゃいけないな」って思いましたね。・・・
netkeibaライター
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