2014年10月08日(水) 18:00 28
オータムセール展示風景
ある程度売れるだろうとは思っていたが、初日、2日ともに、ひじょうに売却率が高い。
すでに各報道などで詳しく紹介されているように、初日は221頭(牡77頭、牝144頭)が上場され、132頭(牡52頭、牝80頭)が落札された。売却率は59.72%(牡67.53%、牝55.55%)で、売り上げ総額は3億8972万円(税抜き)。平均価格は295万2424円(牡399万6345円、牝227万3875円)である。
初日は、午前8時半からの比較展示の間はどんよりとした曇天ながらも何とか天候が崩れずに済んだが、12時のセリ開始とほぼ同時に雨が降り出し、せり終了まで止むことがなかった。気温も平年より低く、冷たい雨に打たれていると体が冷えてくるほどで、購買者も防寒具に身を包む人の姿が目についた。
もう少し天候に恵まれたらもっと売却率があがっていたのではないか、とも感じるが、そんな中でも初日から数だけは相当売れていた。とりわけ数の少ない牡馬の人気が高かった。
初日に注目を集めたのは、社台ファームと社台ブラッドメアからの上場馬だ。全部で28頭もの頭数に及び、欠場もおらず、全馬が上場された。
結果は24頭が落札され、計1億390万円(税抜き)を売りあげた。社台ファームの平均価格は約433万円。もちろんセレクトセールと比較すると低価格馬のオンパレードだが、それでもこの24頭の中から1000万円超が3頭出ており、ブランド力を見せつけた形だ。
なお、全体を通して、初日の最高価格馬は65番「ホクトペンダント25」(牡鹿毛、父ワークフォース、母ホクトペンダント、母の父パークリージェント)の1560万円。(有)酒井牧場の上場馬で、落札は吉富学氏。
「ホクトペンダント25」の落札場面
「ホクトペンダント25」の立ち姿
2日目は一転して朝から好天に恵まれた。風はやや肌寒かったものの、終日安定した空模様であった。
展示の時から熱心にチェックした1歳馬を見て歩く購買者が多く、セリが始まってからも、次々に上場馬が落札されて行った。2日目は228頭(牡86頭、牝142頭)が上場され、156頭(牡65頭、牝91頭)が落札された。売却率は実に68.42%(牡75.58%、牝64.08%)に達した。
売り上げは4億3810万円(税抜き)。落札平均価格は280万8333円(牡360万3077円、牝224万0659円)。数だけはひじょうに売れたことになるが、全体的に価格は安く、平均価格はやや下がった。また初日と比較すると1000万円超の落札馬も激減し、わずか1頭にとどまった。
2日目の最高価格馬は303番「ブリリアントクランの2013」(牝青鹿毛、父マンハッタンカフェ、母ブリリアントクラン、母の父ロックオブジブラルタル)の1000万円(税抜き)。(有)矢野牧場からの上場馬で、落札者は浅川皓司氏。
「ブリリアントクランの2013」の落札場面
2日目を終えた時点で振り返ると、購買者の財布の紐が固いという印象が強い。購買希望者が4人、5人と手を挙げるような上場馬も少なくなかったが、いずれも予算の上限を守っており、一定金額に達すると、まるで申し合わせたようにさーっと手を引く。それが馬によっては150万円ラインだったり、200万円ラインだったりとまちまちだが、概して価格はヒートアップすることなく、低めに抑えられている傾向である。意地を張って予算オーバーしてでも落札したい馬があまり残っていないということなのか。
一方の生産者にとっては、これが事実上の最後のチャンスとなることから、文字通りの「投げ売り」が目についた。たとえ100万円でも、取りあえず行き先を決めてしまいたいと考える生産者は、価格は二の次でも、まず売りさばくことを優先する。手元に残しておいても、この先、価格が上昇することはほとんど期待できないからだ。2歳トレーニングセールまで持ち続けるのはいかにもリスクが高い。上場者、購買者それぞれのさまざまな思惑が絡み、価格がこうして形成されて行く。
来週、もう一度オータムセールについて書く予定でいる。
田中哲実
岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。