2016年01月21日(木) 19:00
今週の栗東トレセンは水曜未明から大雪に見舞われました。なので、朝一番の追い切りはできたものの、降り積もる雪と横なぐりの風もあって徐々に追い切る馬は減っていきました。結局、追い切りは木曜に延期したり、2番乗り以降は運動だけに切り替えたり、雪を見越して早めの時間帯に詰めてやり終えてしまったり。厩舎によって対応はさまざまでした。そんな中、松田博資師は「うちはいつも長めからしっかりやるから。1日くらい少々軽くなったところで問題ないさ」と、このアクシデントを笑い飛ばしていました。さすが、松田先生!
大雪翌朝の松田博資厩舎
翌木曜は雪こそやんだものの、雪は積もったままだし、あちらこちらで地面が凍結。そんな中での放馬はめちゃめちゃ心配です。馬が滑って転んだらどうしよう、などとあらぬ心配をしてしまいます。ところが!そういう私を松田博師は「いや、大丈夫」と言って笑います。え?え??どうして??
「実は今朝、調教開始前の運動時間中によその厩舎で1頭放馬したんだ。その馬はうちの厩舎のすぐそばにきた。でもね、いつもなら放馬といえば勢いよく馬が走ってくるのを想像するだろう?違うんだ。地面が凍っているのを馬もわかっていて、ゆっくり脚元を確かめるようにしていたからね。馬は口で説明しなくても、今朝の状況をちゃんとわかっているんだ。馬は賢いさ」
なるほど。運動中の馬たちを見渡すと厩舎を問わずみんなおとなしい。そして、一歩ずつの歩幅はどれも小さくなっていて、きちんと地面を確かめるように歩いているのです。
「普段の日はチャカついている馬ですら、今朝はおとなしいもん。面白いもんだよ」
またひとつ、松田博師から“当たり前のこと”を学んだ一日でありました。
そうそう。先週、レーヴミストラルが日経新春杯を勝ちましたね。実に見事に松田先生の厩舎らしい、終いを生かす豪快な勝ち方でした。
「うちの厩舎の馬は全体的にああいう競馬が多いけど、この馬の場合は特にあれが合っている。前半、前にいったときは、下手に抑えるよりそのまま行ってしまったほうがいいさ。思い切りのいい競馬が合うんだ」
レーヴミストラル
松田先生はいつもこの馬については「古馬になったらよくなる」と話していました。その持論は今もなお変わらず。「先週勝ったけど、これからもっともっとよくなるさ」と笑顔で話します。もうあと一戦、できるかできないか。でも、そのあたりにはあまりこだわりはないようで、定年直前の今であっても、あくまでも馬の状態を優先して出走させる“当たり前”なスタイルは変わらずです。
先週の競馬で、区切りのいい800勝まであと4勝に迫りました。松田先生に800勝を贈りたい、と騎手の方々も厩舎スタッフも張り切っていますよ。レーヴミストラルも京都記念を視野に調整されていくようです。今年2月の定年まで、残すところあと6週ですね。無事にその願い、叶えられますように!
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花岡貴子
デジタルレシピ研究家。パソコン教師→競馬評論家に転身→IT業界にも復帰。競馬予想は卒業したが、現在も栗東トレセンでニュースやコラム中心の取材を続けている。“ねぇさん”と呼ばれる世話焼きが高じ、AFPを取得しお金の相談も受ける毎日。公式ブログ「ねぇブロ」(http://ameblo.jp/takako-hanaoka/)
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