2016年11月30日(水) 12:00
そこで、このコラムでは今週と来週の2回に分けて、4レースの見どころをお伝えしたいと思う。
今年の4レースを大雑把に分けると、しっかりとした軸馬がいるのが2レース。一方、当日どの馬が1番人気になるかすら掴めない混戦模様なのが2レース、となる。
まずご紹介する、現地午後2時、日本時間午後3時に発走のG1香港ヴァーズ(芝2400m)は、前者の方だ。
中心となるのは、昨年に続くこのレース連覇を狙うハイランドリール(牡4)である。
4歳を迎えた今季の同馬は、7月にアスコットで行われたG1キングジョージ6世&クイーンエリザベスS(芝12F)、11月にサンタアニタで行われたG1BCターフ(芝12F)を、いずれも逃げ切りで制した他、G1凱旋門賞(芝2400m)2着、G1インターナショナルS(芝10F88y)2着などの戦績を残し、芝12F路線における看板馬の1頭となっている。脚質に幅があるのも長所で、行く馬がいなければ自らペースを作るし、前走G2ジョッキークラブCで逃げたヘレンハッピースター(セン5)あたりがハナを主張すれば、好位で折り合う競馬をするだろう。
ブリーダーズC後は本拠地の愛国に戻って調整されており、12月3日に香港入りする手筈だが、輸送や環境の変化に強いことは3歳時から既に実証済みだ。レイティング的にも2番手以下の馬とは5ポンド以上の開きがあり、欧州のブックメーカー各社も抜けた1番人気に支持している。
悩ましいのは相手選びだ。
格で言えば、G1サンクルー大賞(芝2400m)勝ち馬シルバーウェーヴ(牡4)が、2番手評価となる。仏国調教馬は、過去10年の香港ヴァーズ連対馬20頭のうち6頭を占め、このレースとの相性も悪くないだけに、素直に入るならこのあたりが相手となる。
過去10年で仏国を上回る7頭の連対馬(ゴドルフィンを含む)を出しているのが英国だけに、出走唯一の英国調教馬ビッグオレンジ(セン5)もノーマークには出来ない。ステイヤーのイメージがある馬だが、G2プリンセスオヴウェールズS(芝12F)を連覇しており、距離への対応に問題はない。豪州で2戦し、28日にメルボルンから香港に直行したが、11年の仏国調教馬のドゥナデンが豪州からの直行でここを制しており、大きなマイナス材料にはならないはずだ。
アウェイからアウェイへといえば、ヌーヴォレコルト(牝5)もまさにそのパターンに当てはまる。決して簡単な調整にはならないだろうが、かつてアグネスデジタルが、ドバイから香港に直行してG1クイーンエリザベス2世Cで2着になっており、このエンタープライジングな遠征を、なんとか良い形で締め括ってもらいたいものである。
続いて、現地午後2時40分、日本時間午後3時40分に発走するG1香港スプリント(芝1200m)をご紹介したい。
こちらは、2つに分ければ混戦模様に入る一戦。というのも、レイティング119から116の間に11頭がひしめいており、欧州のブックメーカーも、例えば大手のコーラルあたりは6頭に10倍以下のオッズをつけている。つまり、抜けた馬がいないというのが、俯瞰した時の様相である。
しかし筆者は、軸馬は地元香港のラッキーバブルズ(セン5)で間違いないのではないか、という見解だ。
豪州産馬で、本国で2戦1勝の成績を挙げた後、14/15年シーズンから香港に在籍。2シーズン目の終盤にHKG2スプリントC(芝1200m)で重賞初制覇を果たした後、G1チェアマンズスプリント(芝1200m)で豪州から遠征してきたシャトークアの首差2着となって昨シーズンを終えた。
今季初戦のG2プレミアボウル(芝1200m)で2度目の重賞制覇後、前走のG2ジョッキークラブスプリント(芝1200m)ではノットリスニントゥーミー(セン6)の2着に敗れたが、道中後方から直線大外に持ち出しての競馬は、いかにも本番を見据えた内容であった。成績は実に堅実で、大崩れがないから、馬券の軸としては持ってこいだと思っている。
相手は、昨年のこのレースの3着馬で、前哨戦のG2ジョッキークラブスプリントを制したノットリスニントゥーミー。14年のこのレースや、15年のG1高松宮記念の勝ち馬で、前哨戦3着のエアロヴェロシティ。今季初戦のG3ナショナルデイC(芝1000m)で重賞初制覇後、G2プレミアボウル2着、G2ジョッキークラブスプリント5着の成績で来ているアメージングキッズ(セン5)あたりは、連下に抑えておきたい馬たちだろう。
ここに、日本馬2頭がどう絡むか。輸送中に大きなアクシデントを起こした経歴のあるビッグアーサー(牡5)が、輸送と不慣れな環境への順応がうまく行けば、一発逆転の可能性を秘めているように思うし、ここへきて3連勝のレッドファルクス(牡5)も、休み明けだったG1スプリンターズS(芝1200m)から更なる上積みがあれば、ノーマークにはできないはずだ。
香港国際競走後半の2レースは、来週のこのコラムで御紹介したい。
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合田直弘
1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。
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