2017年09月20日(水) 18:00 25
◆亡き友にささげる走りを陰ながら応援したい
夢枕獏さんの有名小説「陰陽師」で、安倍晴明が「名前はこの世で一番短い呪(しゅ)」というせりふを語っている。「眼に見えないものさえ、名前をつけることで縛ることができる」と晴明は作中で解説するのだが、これはいろいろな解釈ができて面白いと思ったものだ。
「名は体を表す」とも言うが、生まれたてで何も分からない赤子も、その名前に期待を込められることで方向づけをされて、その一方で他の可能性を閉じ込めてしまう。親というのは何とも身勝手な…そんな取り方をしてしまうのは、記者が相当にひねくれている証左と言えるか。
競馬場にいるサラブレッドは生まれてすぐではなく、競走馬登録を行う際に名前がつけられる(もちろん、生まれてすぐに牧場で幼名はつけられるのだが)。馬主はいろいろな思いをその名前に込めるものだが、ある一部の人間が嫌うことがある。それが“人名”だ。「走ってくれればいいが、走らなかったらその本人にも、名前をつけた馬主もいいことがないからね」とは某競馬関係者。
サラブレッドの半数以上が未勝利に終わる。その中でオープンまで出世し、なおかつコンスタントに賞金を稼ぐ馬はごくわずか。人間でいえば東大、京大に合格する以上に厳しい確率。それを考えれば、人名、それも前途のある人間の名前をつけ、いらぬプレッシャーを避ける人がいても不思議ではないといえる。・・・