2018年06月26日(火) 18:00 28
◆何コレ?的な見た目の「カレーラーメン」
地方競馬では、現在いくつかの競馬場でスタンドの大規模な耐震化工事がすすめられている。
日本では、1995年の阪神・淡路大震災、そして2011年の東日本大震災を経て、大規模な公共施設や集合住宅などで耐震基準が見直され、さまざまな施設で何年か前から建て替えや耐震化工事が進んでいる。それは競馬場も例外ではない。平成の時代になって建て替えられたスタンドは問題ないようだが、地方競馬には、高度経済成長期の終盤(1970年代前半)、ハイセイコーなどによる競馬ブームで馬券の売上を大きく伸ばした時期に建てられたスタンドも残っていて、それらが工事の対象となっている。
現在、耐震化工事真っ最中なのは、金沢、園田、佐賀など。園田競馬場などはスタンドの西側半分と東側半分の二期に分けて大胆に工事が進められている。また2012年8月を最後に開催が行われていない姫路競馬場も、今年から来年にかけての耐震化工事のあと、競馬が再開されるようだ。
それにしてもこの大規模な耐震化工事が、馬券の売り上げが上がってきた今でよかった。地方競馬が次々に廃止された2001年から2005年頃に、この耐震化工事を義務として突きつけられていれば、「そんなにカネがかかるなら廃止してしまえ」と、さらにいくつかの競馬場が廃止されていた可能性も否定できない。
と、ここまでは前置きで、今回の本題は、実は競馬場グルメ。耐震化工事と競馬場グルメに何の関係があるのかと思われるかもしれないが、それが大アリなのだ。
耐震化工事は競馬開催を続けながらなので、スタンドの一部を閉鎖して順次行われる。それゆえその“一部”にあたってしまうと、当然のことながら食堂や飲食店も一時的に閉鎖を余儀なくされる。それが年に1、2度しか訪れないような競馬場であれば、「今回はあそこのあれを食べよう」と心に決めて行っても、「げっ!やってないの!」ということにもなりかねない。
たとえば佐賀競馬場では、スタンド1階部分の工事はすでに終了し、現在は2階部分を閉鎖して工事が進められている。これにともない、今年4月17日付の本コラムで紹介した、ごぼう天そばの鳥栖料飲店協同組合食堂も現在は閉鎖されている。「もしかしてそのまま撤退してしまったりしないだろうか」と不安になったので、主催者に聞いてみたところ、「年度ごとの営業の契約更新はされているので、続けられると思います」とのことでちょっと安心した。
とはいえ当然のことながら、スタンド外の売店や食堂は耐震化工事とはほとんど関係なく営業している。で、6月のことではあるのだが、佐賀競馬場で久しぶりに食べてみたくなったのが、コレ。
昭和47年創業『のだ屋』のカレーラーメン(500円)と、右下はいなり寿司
一瞬、何コレ?的な見た目ではないですか。
カレーラーメン。しかも、豚骨の。
見た目には、カレーが少なくね?と思うかもしれないが、中心にどっぷりと沈んでいる。見えているカレーは、いわば氷山の一角だ。
いきなりカレーと豚骨スープは混ぜない。まずはまわりのほうから、純粋な豚骨スープとラーメンを味わう。徐々にカレーが混じっていく変化を味わうのだ。
カレーも豚骨も、どちらも旨味成分が凝縮したもの。それとそれとが一体となってどんな化学変化が起こるのかは想像してほしい。うまくないわけがない。これがワンコイン500円也。
昭和47年(1972年)、現在の佐賀競馬場がオープンしたのと同時にお店をはじめたらしい、この『のだ屋』さん。創業時から厨房の中で元気に鍋やフライパンを振るっているご主人は、もうけっこうなお年だと思うのだが、カメラにも凝っているらしく、最近店先にこんなメニュー看板も登場した。
麺類充実、のだ屋さんのメニュー
どうですか。もちろんこれはメニューのごく一部。順番にひとつずつ、全制覇したくなるでしょう。
もうすぐ夏本番だが、野菜を炒めるところから中華鍋状のフライパンでつくってくれるチャンポンを、汗をダラダラ流しながら食べるのもオススメです。
斎藤修
1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。