2018年10月24日(水) 12:00
オーストラリアの女帝ウィンクス(牝7、父ストリートクライ)が、空前にしておそらくは絶後であろう「4連覇」に挑むG1コックスプレート(芝2040m、ムーニーヴァレイ競馬場)の発走が、今週土曜日(27日)に迫っている。既に最終登録が終了しており、8頭がエントリーした中、いつものようにヒュー・ボウマンが手綱をとるウィンクスは馬番6番、枠番6番と確定している。
今季3戦目となった、10月6日にフレミントンで行われたG1ターンブルS(芝2000m)を快勝し、2015年5月から継続中の連勝記録を28に伸ばした後も、順調に調整されており、16日(火曜日)、及び、23日(火曜日)には、本番の舞台となるムーニーヴァレイの馬場で脚を伸ばし、関係者やメディアに好調ぶりをアピールしている。6番枠についてボウマン騎手は「4番か5番が理想だったが、6番ならば全く問題はない」とコメント。「馬がとにかく順調だから、これまでのコックスプレート以上に、私自身の気持ちにはゆとりがある」と、自信をのぞかせた。
ブックメーカーの前売りでは、ウィンクスの単勝オッズは1.25倍前後となっている。総賞金500万豪ドル(約4億840万円)という大一番だけに、当然のことながら相手は揃った。ウィンクスにとって、ここ最近では最強の敵と見られているのが、ヨーロッパから遠征してきたゴドルフィンのベンバトル(牡4、父ドゥバウィ、前売りオッズ7.5倍〜8.5倍)だ。
G1オペラ賞(芝2000m)、G1フラワーボウルS(芝10F)に勝った他、G1BCフィリー&メアターフ(芝11F)で2着となった活躍馬ナーレインの初仔という良血馬がベンバトルで、3歳時にもロイヤルアスコットのG3ハンプトンコートS(芝9F212y)に勝ち、G1英ダービー(芝12F6y)5着、G1キングジョージ6世&クイーンエリザベス2世S(芝11F211y)5着などの実績を残したが、本格化したのは4歳となった今季だった。春はドバイで重賞ばかり4戦し、2着ヴィヴロスに3.1/4馬身という決定的な差をつけたG1ドバイターフ(芝1800m)を含む3重賞を制覇。
その後は欧州で3戦し、7月にドイツのミュンヘンで行われたG1バイエルンヅフトレネン(芝2000m)を制して2度目のG1制覇。そして、豪州緒戦となったのが、10月13日にコーフィールドで行われたG1コーフィールドS(芝2000m)で、ここをきっちりと勝ち上がって3度目のG1制覇を果たしている。8月にヨークで行われたG1インターナショナルS(芝10F56y)では、勝ち馬ロアリングライオンに5.3/4馬身水をあけられる5着に敗れており、欧州の超一線級に入るとひと息足りない印象のある馬だが、その一方で、並べば負けない渋太さがあり、ゴール前で馬体を併せての競り合いになれば、ウィンクスにひと泡ふかす場面も、なきにしもあらずと見られている。
ウィンクスの近走で、2着馬に最も迫られたのが、実は昨年のコックスプレートで、ウィンクスに半馬身差まで詰め寄ったヒューミドー(セン6、父テオフィロ、前売りオッズ13〜15倍)が、今年も出走馬の一角を占めている。
今季2戦目となったコーフィールドのG1メムシーS(芝1400m)を制して通算3度目のG1制覇を果たしたヒューミドーは、続くG1マカイビーディーヴァS(芝1600m)こそ7着と大きく崩れたものの、その後はG1アンダーウッドS(芝1800m)3着、G1コーフィールドS(芝2000m)3着と安定した競馬を続けている。好調キープと見てよく、当然のことながらここは究極の仕上げで臨んでくるはずで、昨年のパフォーマンスを再現出来れば、ウィンクスにとってノーマークには出来ない馬となるはずだ。
オッズ15〜18倍の4番人気が、仏国からの移籍馬アヴィリアス(セン4、父ピヴォタル)だ。
アンドレ・ファーブルが管理した仏国時代は、重賞制覇こそなかったものの、クラックスマンの2着となったG2ニエル賞(芝2400m)を含めて、重賞入着が3回あった馬である。今季からフレミントンを拠点とするジェームズ・カミングス厩舎に移ったが、豪州の水が合ったのか、初戦となった8月4日のハンデ戦(芝1600m)から、10月6日にフレミントンで行われたG3バートカミングスS(芝2500m)まで、3重賞を含む4連勝中なのである。狙いはG1メルボルンCに置いていると見られているが、そこを含めて、レース振りに注目したい1頭である。
そして、欧州時における実績で言えば、アヴィリアスをしのぐのが、愛国のエイダン・オブライエンが登録してきたロストロポーヴィチ(牡3、父フランケル、前売り15〜34倍)だ。
今年のG1愛ダービー(芝12F)2着馬で、9月15日にレパーズタウンで行われたG3パディーズリワーズクラブS(=旧称キルターナンS、芝12F)で2度目の重賞制覇を果たしての参戦となる同馬も、アヴィリアス同様に狙いはG1メルボルンCにおいていると見られているが、2歳時に7FのG2フューチュリティSを勝っているように、スピードもある馬で、ここで争覇圏に割って入っても不思議ではない1頭である。
土曜日の現地時間17時(日本時間15時)に発走を迎えるコックスプレートに、世界の注目が集まっている。
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合田直弘
1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。
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