欧州に続き、北米でも来季の種付け料が発表

2018年11月21日(水) 12:00

衝撃だったトップサイヤー・タピットの値下げ

 北米でも欧州同様、10月の第2週あたりから続々と、ケンタッキーをはじめとした種牡馬繋養牧場から来季の種付け料が発表されているが、関係者や競馬ファンの間から少なからぬ反響があったのが、ゲインズウェイファームからもたらされた「タピット値下げ」の報だった。

 2014年に初めて全米リーディングを獲得。しかもその際、種牡馬別年間収得賞金の新記録を樹立するという大活躍を見せ、2015年から種付け料が北米供用種牡馬では最高額の30万に設定されていたのがタピット(父プルピット)だ。2015年も2016年にリーディングの座を守り、なおかつ、いずれの年も前年の数字を上回る収得賞金をマーク。

 北米を代表する大種牡馬となったタピットだったが、2017年はタップリットによるG1ベルモントS(d12F)制覇などがあったものの、全体的には産駒のパフォーマンスが下がってリーディング5位に後退。2018年も西海岸で2つのG1を制したユニークベラらの活躍があったものの、前年同様リーディング5位(11月15日現在)に甘んじている。

 こうした現状を受け、年が明けると18歳となるタピットの種付け料は、ここ4年の30万ドルから、2019年は22万5千ドル(約2585万円)に下がることになったのだ。

 これにともない、タピットは北米供用種牡馬・種付け料最高額の座から陥落。代わって首位に立ったのが、2019年も過去2年と同額の25万ドル(約2872万円)で供用されることが発表された、クレイボーンファームのウォーフロント(父ダンジグ)である。

 ケンタッキー供用でありながら、芝での活躍馬を続々と送り出しているのがウォーフロントで、今年も、ランカスターボマー(牡4)が愛国のG1タタソールズGC(芝10F110y)を、ユーエスネイヴィーフラッグ(牡3)が英国のG1ジュライC(芝6F)を、ホームズマン(セン4)が豪州のG1アンダーウッドS(芝1800m)、フォグオヴウォー(牡2)がカナダのG1サマーS(芝8F)を制するなど、特性を十二分に発揮して活躍馬を量産している。

 1歳馬マーケットでも、クールモアを中心とした欧州の購買者がウォーフロント産駒をおおいにサポートしており、2018年の北米1歳市場では22頭の産駒が平均価格74万3397ドル(約8540万円)という超高値で購買されている。

 昨年までの値段であれば、ウォーフロントと横並びの最高額だったのが、ダーレーアメリカで供用されているメダグリアドーロ(父エルプラド)である。

 2009年の全米年度代表馬レイチェルアレグザンドラ、15年・16年と2年連続牝馬チャンピオンの座に就いたソングバードという、歴史的名牝2頭を送り出していることに加え、17年のG1BCターフを制した仏国調教馬タリズマニーク、豪州の2歳牡馬チャンピオン・ヴァンクーヴァーなど、世界各国で一流馬を輩出しているのがメダグリアドーロだ。今季も、牝馬ながらカナダ3歳2冠を制したワンダーガド(牝3)らが出現したが、20歳を迎える来季の種付け料は、過去2年の25万ドルから20万ドル(約2298万円)に減額されることが発表されており、北米における序列はウォーフロント、タピットに続く第3位となった。

 これに次ぐのが、前年の15万ドルが2019年は17万5千ドル(約2010万円)に値上げされる、ヒルンデイル・ファーム供用のカーリン(父スマートストライク)だ。

 13年のG1ベルモントS(d12F)勝ち馬パレスマリス、15年のG1トラヴァーズS(d10F)勝ち馬キーンアイス、15年のG1エイコーンS(d8F)やG1CCAオークス(d9F)を制したカラライナ、16年に最優秀3歳牝馬ステラージェーン、16年のG1プリークネスS(d9.5F)勝ち馬イグザジェレイター、17年の最優秀2歳牡馬グッドマジックなど、毎年コンスタントに活躍馬を出してきたカーリン。

 18年も前出のグッドマジックがG1ハスケル招待(d9F)を制するなど、産駒は堅実な走りを見せており、11月15日現在で全米リーディング第6位と、4年連続のトップ10入りを確実にしている。距離の融通性が高いという、北米供用馬には稀な特質を保持しているのが強みで、19年は北米種付け料序列4位に浮上することになった。

 2018年の7万ドルが、2019年は15万ドル(約1723万円)にジャンプアップし、種付け料ランキングの上位に浮上してきたのが、レーンズエンド・ファームで供用されているクオリティロード(父イルーシヴクオリティ)だ。

 2018年は、6歳世代からG1マンハッタンS(芝10F)勝ち馬スプリングクオリティが。4歳世代から、G1BCダートマイル勝ち馬シティオヴライト(牡4)、G1パーソナルエンスンS(d9F)など2つのG1を制したエイブルタスマン(牝4)、G1ラトロワンヌS(d8.5F)を制したソルティ(牝4)らが。そして2歳世代から、G1シャンデリアS(d8.5F)勝ち馬ベラフィナ(牝2)が登場。前年に続くリーディングトップテン入りを確実にしている。

 さらに、2018年はG1フロリダダービー(d9F)勝ち馬オーデイブル(牡3)らが活躍した、スペンドスリフト供用のイントゥミスチフ(父ハーランズホリデー)も、前年は10万ドルだった種付け料が、2019年は15万ドルに値上げされることが発表されている。

 そして、同じく15万ドルでの供用が決まったのが、2019年からアシュフォード・スタッドで種牡馬入りするジャスティファイ(父スキャットダディ)である。

 デビューが今年の2月18日で、4連勝でG1ケンタッキーダービー(d10F)を制覇。3歳デビューの馬によるケンタッキーダービー制覇は、1882年のアポロ以来136年振りという快挙だった。

 ジャスティファイはその後、G1プリークネスS(d9.5F),G1ベルモントS(d12F)と連勝。1977年のシアトルスルー以来41年振り史上2頭目となる、無敗の3冠達成を成し遂げている。

 15年に3冠を達成したアメリカンフェイローの、初年度の種付け料が20万ドルだったのに比べると、いささか控えめな設定にも見えるが、3冠達成後に故障を発症して古馬との対戦がなかったこと、3歳デビューということは裏を返せば仕上がりが早くはなかったこと、などを勘案すると、妥当な価格とも言えそうだ。

 その他の新種牡馬では、ヒルンデイルで種牡馬入りする17年の2歳牡馬チャンピオン・グッドマジック(父カーリン)が3万5千ドル(約402万円)。17年のG1トラヴァーズS(d10F)を含むG1・2勝馬で、レーンズエンドで種牡馬入りするウェストコースト(父フラッター)が、同じく3万5千ドル。

 今季G1・5勝の大活躍を見せたアクセレレイト(父ルッキンアットラッキー)も、1月のG1ペガサスワールドC(d9F)を最後に引退してレーンズエンドで供用されることが決まっており、こちらは2万ドル(約230万円)の種付け料が設定されている。

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合田直弘

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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